長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

文字の大きさ
44 / 184

根付

しおりを挟む
 「失礼な男だね。八田家の婿?」

「そうだよ。学生時代から厭な奴でね」

 運転しながらも、怒りは治まらない。

「ところで、俺をなんだと思ったんだい? 妙な言い方だったが」

「俺は学生時代から、どんなに誘われても遊びに行かなかったから、男色だと思っているのだよ」

「なるほど。短絡的な考えの男なのだね。

 まぁ、落ち着きたまえよ。あぁいうくだらない人間の為に、時間を割くのは勿体ないというものだ。忘れてしまうのが一番だよ」

 山上の言葉は尤もだった。

 分かっていながらも、怒りを忘れられないのだ。どうしても許せぬ男。怒りを隠せぬ隼人に、山上はそれ以上なにも言わなかった。




 家に戻ると、客が来ていた。刑事の大森である。食卓を挟んで圭と勇一郎、大森が真剣な顔を突き合わせていた。

「どうしたの? やけに緊張感漂ってるけど」

「お帰りなさい。お邪魔してます。

 実は、今朝、遊郭で遊女が殺されましてね。その女、夕べ、中里さんが買った女でして」

「勇一が容疑者なの?」

 大森は大きく頭を横に振った。

「いいえ。中里さんを女が送り出す姿は、複数の人間が目撃しています。

 中里さんが帰ってすぐ、その女を買った男がおりましてね。店の者は断ったらしいですが、男がしつこかったらしくって。

 それを知った女が、承諾したので、部屋に通したそうです」

「じゃあ、なぜ」

「いえ実はその男、学生服姿で、女にしてもいいほど、綺麗な顔をしていたそうで、こんな物を落としてましてね」

 大森が取り出したのは、根付けだった。紅葉が三つ重なった意匠で、裏にはK・Aと彫られている。

「有名な根付け彫りの作品だと、うちの若いのが気付いて、聞きに行きましたらね、麻上さんに贈った物だと」

 今朝、圭はこの家から一歩も出ていない。それは三人が証言できるから、あまり心配する必要はあるまい。

「本当なの?」

「はい、これは私の物です。少し前になくしてしまっていて」

「いつ頃?」

「なくなったと気付いたのは、七月だったと思います。小銭入れに付けていたのですが……」

 見れば紐が切れている。

「念の為に聞くけど、今まで一度でも遊郭に行ったことは」

「ありません」

「じゃあ、その根付けを拾った人物が、うっかり忘れていったか、あるいは、麻上君に恨みがあって、わざと置いていった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...