殺された人形

岡倉弘毅

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猟奇

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 「そんなことまでご存知ですか。

 えぇ、体中傷だらけでした。なにを考えていたのやら」

「先生がそうさせたのではないのですか?

 教えて下さい。どうして厭がる洋史に、手術を見るよう強制したのです? どうして、直通さんと一緒に?」

「三人の息子の中で、洋史だけ解剖図を嫌ったのですよ」

 理解できず、有紀は永吾の次の言葉を待つ。

 永吾は、分からない? とばかりに挑むような視線を向ける。

「嫌う意味はわかりますか? 他の二人は無関心だった。

 嫌いとは、無関心よりも関心があるのです。興味があるという意味なのです。本人は気付いていないようでしたが」

「それが理由だと?」

「私は外科医ですが、精神医学にも興味がありましてね。洋史は興味深い存在でした。直通同様。

 好みも性格も似た二人が手術を見続ける内に、違う反応を見せ始めたのです。

 洋史は相変わらず厭がっていましたが、直通は興味を必死に隠す様子が見られた。血や内臓を見て、喜びを示し始めたのですよ。

 隠していたから、洋史は気付かなかったでしょう。

 私は直通を連れ、浅草へ行きました。見世物小屋へね。二度目からは、直通から頼んで来るようになりました。

 美女解体が、一番気に入った様子でした。最も、猟奇的な見世物ですね」

「待って下さい。それはまるで、猟奇者を創り出したように聞こえるんですけど」

「直通の心を、解放してやったのですよ。

 直通は苦しんでいました。自分が間違っているのだと。だから私は、苦しむ必要はないと、教えてやったのですよ」

「噓です。先生が教えさえしなければ、直通さんは知らずにいられたはず」

「本当の自分を知らずにいるのは、辛い。そう思いませんか?

 貴女にも、知りたい自分があるのでしょう? 私は相談に乗れると思いますが、どうでしょう?」

「帰ります。お代は……」

「必要ありません。貴女は洋史の、大切なお友達ですからね。

 あ、小柴さん、私に見覚えはありませんか?」

 奇妙な言葉に、有紀はもう一度永吾を見る。

「初めて会ったのではありませんか?」

「そうですか。

 暫くは無理をしないようにして下さい。お大事に」
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