殺された人形

岡倉弘毅

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女神

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 つまりは、交際範囲は狭くなりがちなのだろう。しかし洋史の品の良さは、美木多のような年長の紳士や、八木や行彦のような職人をも惹き付ける。

 もしかしたら、婦人も……。

「申し訳ないんだがね」

 洋史は操っていた鉛筆を止めると、顔を有紀に向けた。

「父さんが勘違いしていてね、洋史を婿に貰えると思い込んでいるんだよ」

 何気ない風を装って口にすると、洋史はそれ以上に、何でも無い様子で応えた。

「あんな素敵な両親ができるなら、こちらからお願いしたいくらいですよ」

「何を言っているのか、分かってるのかい?」

「こんな流れでいうことではないのでしょうが……」

 洋史は立ち上がると、有紀の傍に椅子を持って寄って来た。

「僕はずっと、有紀が好きだったのです」

「え?」

 頭の中が真っ白になるとはこのことか。洋史の言っている内容はなんとか理解できたが、幾つか腑に落ちない事があった。

「しかし、三月がその……」

「彼の気持ちも実は、気付いていましたよ。同じ人間を見つめていたのですからね。三月君は、僕の気持ちを理解していない様子でしたが」

 暗い道を有紀一人で歩くのは心配だからと、洋史に一緒に帰って欲しいと頼んでいたくらいだ。考えようによっては、洋史を男だと思っていないのかもしれない。

 いや、男で無ければ護衛にはならないだろうか。

 洋史は禁欲的な雰囲気だから、婦人に興味なしと見られているのかも知れない。

「三月君の告白には、正直、内心心臓が止まりそうになりましたよ。だから、邪魔をしに行ったのではありませんか」

「そういう意味だったのかい?」

「そういう意味です」

 頬の辺りがほんのりと、赤くなっているのが確認できた。

「ただ、僕はその頃、直通という悩みがありましたし、三月君が告白したからって、慌てて僕が同じ事を言えば、有紀を戸惑わせるだけでしょう?

 とにかく、今は言うべきではないと我慢しました」

 何と返せば良いのか分からず、有紀は視線をやや伏せたまま、黙って聞いていた。

「有紀、順番が逆になってしまいましたが、僕の気持ちを受け入れてくれませんか?」
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