殺された人形

岡倉弘毅

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救い 二

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 「なんだ。私はそんなもの、聞きたくなど……」

「済まなかった。

 伯爵家を頼む。と」

「自分勝手な……」

「息を引き取る間際に呼んだ名は、貴方の名前でした」

 蕗子と呼ばれた女は、優しい女らしい声で、少し寂しそうに言うと、視線を落とした。

「どういう事?」

 漸く声を出せるようになって洋史が、事情に一番詳しいであろう永吾に、説明を求めた。

 永吾は平助に近寄ると、脈を取ったり首の辺りを触ったりした後、大丈夫だろう。と、独り言ちて洋史に向き直った。

「小柴さん、十四年前の出来事を思い出しましたか?」

 有紀は頷いた。伯爵と叫んだ眼鏡を掛けた男が、津川永吾だと有紀は気付いていた。

「堀川伯爵夫人には、子供がいなかった。だから、他の女に生ませた子供である馨さんを、跡取りとして引き取り……いや、奪い取った。

 母親である女は、馨さんの将来を考え泣く泣く諦めたものの、やはり返して欲しいと、訴えるようになったが、その後、三月君が生まれ、落ち着いたように見えた」
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