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姉
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『四方君が、若い娘を殺し、蝋人形を拵えていると知ったのは、直通の死から一月程経った頃だった。
私は本当の猟奇を知り、戦慄した。
私の下らぬ好奇心がお前を苦しめ、弟一家を不幸にし、直通を追い詰めた。
自らの罪を自覚し、これ以上お前を苦しめぬよう、私の影響が及ばぬ場所に。と考え、縁談を受けようと思ったのだが……』
永吾は有紀に視線を向けると、微かに笑った。
『洋史をお願いします』
そうして、頭を下げ慣れていない様子で、不恰好にお辞儀をすると、私は家を離れるよ。と泣き出しそうな声で伝えた。
『これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
申し訳ないが、お母さんを宜しく頼むよ』
今は、無医村でひっそりと医者を続け、時々馨を診ている。
「父は、元気ですか?」
蕗子は笑って頷いた。
「えぇ。
患者さんが居ない時は農作業を手伝っているのだと仰ってました。日に焼けて、腕が痛いのだとか」
「あの父が……信じられない……」
医者こそが一番の職業だと信じて疑わない、力仕事を見下すような発言をよく耳にしていただけに、にわかには信じられなかった。
「人は変わります」
「貴女は?」
洋史の問いに、蕗子は不思議そうな目を向けた。
「直通を忘れて下さい。もう、直通はいません」
墓参りに行く度、新しい花が供えられているのを、洋史は気付いていた。
「他の誰かに、また恋をして下さい」
蕗子の笑顔は、慈愛に満ちた聖母のようであった。
「そうですね。
でも今は、馨さんのお母さんだから、恋は暫くお休みします。
ありがとう……心配なさらないで下さい。また誰かに恋することができたなら、素直になりますから。
きっとそれを、直通さんも望んでくれていると思いますもの」
直通との未来の為に、組織を抜けようとし、先代伯爵が倒れた事で、連絡を取らぬまま別荘に匿われ、直通は蕗子の愛を疑った。
(心変わりか?)
本音であり、それを塗り潰したのも本音であったのだろう。
「だから今は、直通さんを思わせて下さい」
疑い、疑いを否定しつつ、また疑い……。それでも、蕗子を愛し続けていたに違いない。
幸せになって欲しいと、願っていたに違いない。洋史はそう信じていた。
「三月とは……」
三月は、『ミモザ』を辞めていた。どこに行ったかは、誰も知らないと言った。
「私も知りませんの。ご家族と一緒に引っ越されたらしくて……」
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「人は変わります」
「貴女は?」
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「直通を忘れて下さい。もう、直通はいません」
墓参りに行く度、新しい花が供えられているのを、洋史は気付いていた。
「他の誰かに、また恋をして下さい」
蕗子の笑顔は、慈愛に満ちた聖母のようであった。
「そうですね。
でも今は、馨さんのお母さんだから、恋は暫くお休みします。
ありがとう……心配なさらないで下さい。また誰かに恋することができたなら、素直になりますから。
きっとそれを、直通さんも望んでくれていると思いますもの」
直通との未来の為に、組織を抜けようとし、先代伯爵が倒れた事で、連絡を取らぬまま別荘に匿われ、直通は蕗子の愛を疑った。
(心変わりか?)
本音であり、それを塗り潰したのも本音であったのだろう。
「だから今は、直通さんを思わせて下さい」
疑い、疑いを否定しつつ、また疑い……。それでも、蕗子を愛し続けていたに違いない。
幸せになって欲しいと、願っていたに違いない。洋史はそう信じていた。
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