美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M

文字の大きさ
1 / 76
第一章 出会う四月

1.出会い

しおりを挟む
 四限目の授業が終了すると、教室が一気に活気づいた。

 それも当然、待ちに待った昼休み。抑圧された学生生活において、数少ないリフレッシュタイム。
 みんな、顔をほころばせ、席を立って友人の元へ向かう。もちろん、手には弁当、もしくはコンビニの袋を持って。
 教室を飛び出していくのは、購買のパン目当ての奴ら。数分後には、めいめいが獲物を手にホクホク顔で帰ってくるのだ。

 俺はと言えば、そのどちらにも当てはまらない。
 楽しそうなクラスメイトたちを尻目にスッと席を立ち、弁当箱の入った巾着を引っ提げて、極力気配を消しながら、教室を出るのみだ。

 向かう先はあるけれど、迎えてくれる者はいない──。

 花の男子高校生になって、二週間と少し。
 俺は早くも『ぼっち』になってしまった。選択ぼっちならともかく、意に添わないぼっちには、衆目の中でのぼっち飯は辛かった。

 こんなはずじゃなかったんだ、こんなはずじゃ。
 俺には、人並み程度のコミュニケーション能力はあると思っていた。だから、こんな寂しい高校生活を送る羽目になるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
 ついこの間までは、中学卒業祝いに買ってもらったスマホを眺めながら、『コミュニティツールとしてガンガン働いてもらうぞー』なんて思っていたもんだ。

 でも、もういいんだ、仕方がなかったんだ。
 俺は、よりにもよって入学式の前日に熱を出し、それから四日間ベッドの中で過ごした。
 数日くらい問題ない、俺の明るい高校生活はここからだと一念発起して登校した日、もはや手遅れだということに気付いて愕然とした。
 もう、『輪』ができていて、俺はどこにどうやって割り入っていいのかさっぱりわからなかったのだ。

 いちおう、俺のいない間に決まっていた学級委員のワタナベだかワタベだかがいろいろ世話を焼いてくれたんだけれど……。
 なんか『嫌々やっている』感がにじみ出ていたし、他にも少なからず気に入らないところがあったから、高校生活に必要な情報を入手したあと、さっさと奴から離れた。

 まぁ、教室でぼっち飯する度胸さえない俺には、気に入らない学級委員に媚びへつらうのがお似合いだったのかもしれない。

 でも、もういいんだ、ハブられてるわけじゃないし、他のクラスには中学からの友達がいるし。
 来年のクラス替えに乞うご期待!

 で、そんな俺が向かうのは、本校舎の裏手にある第二校舎。こっちには文化部の部室や、音楽室なんかの特別教室がある。
 この春山北高校には、学食なんてものはない。だから、一年から三年まで、ほとんどの生徒が自教室で昼食を食べるようで、昼休みの第二校舎は実に閑散としている。
 だからこそ、独り者には実に都合がいい。ぼっち飯に後ろ指さしてプークスクスする連中もそうそういないだろう。

 俺がランチの場所に決めているのは、第二校舎一階の家庭科室。ぼっち初日、どこで飯を食おうかさまよっていた俺がたどり着いた安息の地オアシス
 でっかい作業机が六台と丸椅子が据えてあり、棚にはミシンやアイロンが並んでいる。ちょっと埃っぽいけれど、居心地は悪くなかった。

 実を言えば、ここで飲食していいのか定かでない。
 けれど、教師に見つかって注意されたところで、無垢な新入生の顔をして、『ここでゴハン食べちゃダメって知りませんでしたぁ』と肩を震わせながら謝罪すれば、大目玉を喰らうまでもないと思う。

 でもやっぱり後ろめたいから、俺は一番奥の一番端っこの丸椅子に腰掛ける。それから、作業机の上にそっと巾着袋を置いた。
 弁当箱を取り出す前に、スマホの電源を入れる。授業中は電源を切っておく決まりなのだ。
 みんな律義に守っているのかは知らないけれど、高校生活ルーキーでソロプレイヤーの俺は、大人しくそのルールに従っている。中学のとき、授業中にスマホを鳴らした奴がどんな目に遭ったか、嫌というほど目にしてきたし。

 コミュニティツールどころか、ただの暇潰しの道具と化したスマホが起動するまでの間、空腹を満たせる喜びに包まれながら弁当箱を取り出した。育ち盛りの身体には、一日三食は少なすぎる。

 弁当箱の中身に思いを馳せながら蓋に手をかけたとき……。

 ガラリと扉の開く音が聞こえ、俺はピシリと硬直する。

 生徒か? 教師か? 怒られる? 謝る? グッバイ、オアシス……!
 目まぐるしく考えたあと、かねてからのシミュレーション通り、俺は無垢で無知な新入生の顔を作って、恐る恐る扉の方へ顔を向けた。

 出入口のところに立っていたのは、教師じゃなく、生徒だった。
 ショートヘアで、すらりとした体型の、女子生徒。

 教師でなかったことに胸を撫で下ろす間もなく、俺の心臓は未だかつて経験したことがないくらいに高鳴り始めた。

 その女子生徒が……なんというか、すごく、きれい……だったから。

 ぱっちりした瞳に小さな鼻と口。それらが完璧なバランスで顔中に配置されている。
 ボーイッシュな印象を受ける短い黒髪は少しの癖もなくサラサラつやめいていて、細身の体型に濃紺の制服ブレザーがよく似合っていた。
 『美少女』というには雰囲気が大人び過ぎていて、どちらかといえば『美人』と表現した方が相応ふさわしい気がする。

 こ、こんなきれいなひとが、この学校に居たなんて……。
 目をまん丸にして固まる俺を、そのひともまた真っ直ぐに見つめてくる。だから、余計にドキドキしてしまう。

 やがてそのひとは、整った顔に満面の笑みを浮かべてから、実に朗らかな声で俺にこう言った。

「驚かせてごめんね~!」

 これが、俺と彼女──春山北高校最後の生徒会長・・・・・・・ともえあきら先輩との出会いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

処理中です...