美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M

文字の大きさ
76 / 76
最終章 告げる九月、そして

最終話 食べるのは、同じ料理

しおりを挟む
「ねぇゴウくん、似合う~?」

 カーテンの奥から出てきたあきらさん・・・・・は、純白のドレスをまとっていた。
 お尻のあたりまでは身体の線を際立たせるようなタイトなデザインだけど、膝下から裾に向かってふんわりと布が広がっている。

「新婦様は大変スレンダーでいらっしゃいますから、マーメイドラインのドレスがよ~くお似合いになりますねぇ」

 式場スタッフのおねーさんも、心なしかうっとりとしているようだった。
 おっしゃる通り、モデル体型のあきらさんは、なにを着てもさまになるのだ! まったく鼻高々だぜ!

「どうかな、これ」

 えへへと笑うあきらさんがあまりに魅力的で、俺はなんとなしに頬のあたりを搔いていた。

「ええと……すごく似合ってるよ」
「この前着たやつとどっちがいいかなぁ?」

 かわいらしく小首をかしげるあきらさん。
 正直、『美しいあなたにはなんでも似合うから、どっちでもいいよ』と言いたい気分だけれど、俺は骨身にしみてわかっている。女性に対して、『なんでもいい』は禁句だと。

 かつて二人で弁当箱を選んだときはそれを回避できたけれど、デートの最中は何度もそれをやらかして、そのたびに機嫌を損ねたっけ。

「ええと……あきらさん……俺の率直な意見、言ってもいいのかな?」
「うん、もちろん!」
「そのドレスもあきらさんのスタイルのよさが際立っていいんだけど。俺としては、この前試着したふわ~っとしたドレスの方が好きだな。なんか、映画とかに出てくる『お姫様』って感じがして、すげーかわいかった」
「プリンセスラインのやつだね」
「あと、肩は出してもいいけど、背中はあんまり見せちゃダメ。セクシーすぎるから……」

 あきらさんのスベスベの背中を知る男は、古今東西ここんとうざい俺だけで十分だ!
 しかし、口出ししすぎて怒られるかなぁと戦々恐々としたけれど、あきらさんはキラキラと瞳を輝かせ、至極満足そうな笑みを浮かべた。

「うん、ゴウくんの言う通りにする!」

 と、スタッフのおねーさんと試着室の中へ引っ込んでいった。今着ているドレスを脱いで、俺がリクエストした通りのものを選び直すためだろう。 
 
***

 ドレスの試着が終わったあとは、式場近くのカフェに移動して午後のティータイム。
 互いにブラックコーヒーを飲みながら、一つのショートケーキをシェアする。

「ごめんねゴウくん……。パパが、『お金は出すから料理のグレードを一番いいやつにしなさい』って……」

 イチゴを頬張りながら、あきらさんが申し訳なさそうに言った。

「そ、そっかー……。まぁ、言われたとおりにしておこうか……」

 俺は苦笑しながら答える。
 当初の見積もりを見たときは、『結婚式ってこんな安くできるんだぁ、いけるいける~♪』と浮かれ気分だったが、今や金額はその三倍くらいに膨れ上がっている。
 この分だと、最終的にはン百万コースですな……。

 本当なら、あきらさんと俺の稼ぎに見合った規模の式を挙げるつもりだったんだけど。
 どうやら結婚っていうのは、本人たちだけの問題じゃなく、家と家の問題でもあるらしい。
 そして結婚式とは、自分たちのためにやるものではなく、ゲストのことを第一に考えてやるものらしい。

 ゆえに、両家両親の意見をふんだんに取り入れていたら、金額がどんどん膨らんでしまっていた。

 親戚連中にひそひそとダメ出しされるのもしゃくに障るし、金を出してくれる、っていうなら甘えさせてもらえばいいんだろうけれど。
 でも、あれこれ口出しされると、なんだか嫌になる。

 でも、俺は強く決心している。お世話になった人たちのため、俺たちを結びつけてくれた人たちのために、この式を素晴らしいものにしようって。

 俺を信じてくれた母ちゃん、先輩のお母さん。
 そして、俺に料理を教えてくれたばあちゃんのため。

「そういえばあきらさん、結婚指輪は来週できるんだっけ?」
「うん、そうだよ。引き取りのついでに家具も見に行こ」

 結婚式……指輪に、家具……。ああ、俺たちの結婚準備は、恐ろしいくらいに順調に進んでいるんだなぁ。
 恐怖を感じつつも、俺の口元には幸福感からくる笑みが浮かんでいた。

「あきらさんと結婚できるなんて、高一のときの俺が知ったら、どんなつらするだろうなー。泡吹いてひっくり返るかも」

 無意味な妄想をしながらますます笑みを深くすると、カップをソーサーに置いたあきらさんがけろりとした様子で言った。

「そうかなぁ? 高三のわたしはべつに驚かないかも」
「えっ、そうなの?」
「ゴウくんと一緒にいるとなんかしっくり来てたし。年下と思えないほどしっかりしてるなぁってずっと尊敬してたし。『あ、やっぱりそうなんだ』って言いそう」

 と、最後の一口になってしまったショートケーキを名残惜なごりおしそうに眺めつつ、俺へと差し出してきた。俺が首を横に振ると、喜々としてフォークですくい、口へと運ぶ。

 本音を言えば、その一口は俺が食べたかった。でも、ニヤニヤと緩みそうになる口元を引き締めるのに必死で、それどころじゃなかった。

 ああ、あきらさんはそんな昔から、俺との未来を想像してくれていたんだ。料理を作るしか能のない、二歳も年下の俺とのことを。
 九年越しに判明した新事実に、胸のときめきが止まらない……。

「と、ところで、入籍日って俺の希望通りで本当にいいの? 式よりも前になっちゃうけど……」

 おずおずと尋ねると、あきらさんは一切迷うことなくうなずいた。

「もちろん。四月十九日でいいんだよね?」
「うん、そう」
「二人が初めて出会った日……かぁ。ゴウくん、よく覚えてたね」

 くすりと笑われたけれど、俺は大真面目だ。
 だって、あの日に俺の運命が変わったんだから。

「あきらさんが、俺の卵焼きを食べてくれた日だよ。ツナ入りの卵焼きを『いいね』って言ってくれた日」

 照れながら告げると、あきらさんはまたくすりと笑う。

「……『サラダ記念日』ならぬ、『入籍記念日』かぁ」
「え?」
「知らない? 俵万智たわらまち。国語でやったでしょ?」
「聞いたことはあるような……ちょっと検索してみる」

 ポケットからスマホを取り出したとき、あきらさんが上目づかいで俺を見ていることに気付いた。

「あーあ、当時のことを思い出したら食べたくなっちゃったぁ~。ツナ入りの卵焼き」

 九年前には到底聞けなかった、甘ったれた声。最愛の女性からのおねだりに、俺はいそいそとスマホをしまい込む。

「じゃ、今から俺んち来る?」
「うん、行く!」

 席を立ち、店を出て指を絡める。
 歩幅を合わせて、同じ方向へと歩く。

 見つめるのは、同じ未来。
 食べるのは、同じ料理。


〈了〉
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

処理中です...