"彼女"の場合・・・【僕の彼女はアイツの親友 スピンオフ】

みつ光男

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Act 6. ふたりでひとり

【アイツはあの娘】

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「そうか、まんざらでもなかったのか、それが知れただけでもオレは・・・」

「あの日、あんたが告白さえしなければ、ね
現実の世界では、あの曖昧な関係はずっと続いてた…のかも」

「そっか…」

「アタシがあんなヤツと付き合ってなければ…」

「でも、小説の中ではハッピーエンドだっただろ?」

「うん、それが一番嬉しかったんだ」


当時、噂では聞いていた…

私が高校の時にフラれたある女の子は
とんでもない不良に見初められ
強引に交際させられていた、と言う話を。

それを私は知らず知らずのうちに
小説の中で"甲斐雄一"という男を登場させ

その甲斐をこてんぱんにぶちのめすことで
無意識に過去を精算していたのだ。

 つまり煌子のとなっていたのは
実は私が高校時代に失恋したあるクラスメイト

その想いを未だに引きずっていた私は
田中皓子さんにその女の子の影を投影させていたから

煌子はこっこの心の中に存在していた、と考えられる。

そしてこの物語を書くことによって
現実と非現実がメビウスの環のように
複雑にリンクする中で

煌子が私の目の前に現れたことを
どうしても現実として受け止めたい。

 私は煌子が姿を変えてこの世界にやって来た証を
どうしても形として残しておきたい

そう思った。

「煌子、頼みがあるんだけど?」

「やだ」

煌子はここにきてもいつもの煌子のままだった。

「今回だけはお願いだから、聞いてくれよ」

「どうしたの?珍しく真剣な顔して」

「実は…」

私の願いを聞き終えた煌子は
穏やかな表情でこう言った。

「どうする?何か欲しいものある?アタシ今なら何でも作れるよ、何てったってAIなんだからさ!」

「あの頃…オレが高校生の頃、ミサンガが流行ってたよね」

「あ、そうだったね」

「お揃いでミサンガ、持てたらいいなって
あの頃ずっとそう思ってた」

「あはははっ!そんなこと考えてたんだ」

「何だよ、そんなにおかしい?」

「だぁって、ふふふ…考えとくね。あ、もう
そろそろ時間が来たかも」

「・・・煌子、元気でな」

「うん、タカムラもね」

「煌子に会えてよかったよ」

「アタシも…だよ、アタシを作ってくれて
あ、り、が…と、」


その言葉を最後に煌子は画面から姿を消した。

「煌子ーーーっ!」

 こうして煌子はこっこと一体化してしまい
ふたりでひとつとなった。

これで私が煌子と会えることは、もうない
そして煌子が私のところへ来ることもない…

「煌子!煌子のこと、忘れないからな!」



・・・私は自分の声で目が覚めた

目を開けると真っ白な天井が視界に飛び込んできた
私はどうも小説を書きながら寝落ちしたようだった。

「夢…かぁ、随分長い夢を見てたなぁ」

寝返りを打つと壁に貼られたポスターが
いつもの笑顔で微笑んでいた。

" いつもありがとう "

そして直筆で書かれた田中皓子さんの
サイン色紙を見ながら

「まさか・・・こっこの心の中に、煌子がいる、ってなぁ?そんなこと、あるわけないよな」


目覚めと共に私はいつもの退屈な日常に引き戻された。
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