レイナ

みつ光男

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第1章:レイナ

【ロンリー】

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 世間ではもう夏休みも終わりかけたある8月の夜のこと

ってあるよね、やっぱりさ」

そう言い残すと玲奈れいなは俺の前から去っていった。

そんなに下手だったか俺?
それとも前の男よりも早かった?


ー ダメだよ、清也せいやくん・・・

そんなこと言ってるうちは
新しい彼女が出来てもまた同じこと繰り返しちゃうよ…

“わかり合える”って、ことがどんなことだか
わからなきゃ…ダメなんだって

身体は身体、だけじゃないんだから。

何なんだよ?
相性…身体の相性ってさ…

身体は身体だけじゃない?

何言ってんだ?

結局は別れたいための口実なんだろ?

玲奈、お前はこれまで
どんだけの男と寝てきたってんだ?

わかったようなこと言ってるけど
ただ単に俺じゃ満足できなかったってことだろ?

それとも俺に何か足りないものでも?
いや、そんなはずはない

その証拠に玲奈はベッドの上では
あんなにも激しかったじゃないか…


 もう、どうでもいいや
しばらく1人で気ままに過ごすことにしよう

プレゼント何にしようか、なんて悩まなくてすむし
週末も祝祭日もスケジュールを気にすることなく

そう、自由きままに…


そう強がってはみたものの

玲奈と別れて数ヶ月が過ぎると
さすがに少し身も心も寂しくなってきた。

かと言ってすぐに彼女が出来るほど
俺に甲斐性があるはずもなく
退屈に過ごす毎日の中、ある日の仕事終わりのこと

藤谷ふじたにさん、ちょっといいです?」

後輩の内藤が声をかけてきた。

「どうした?内藤、何か話でもあるのか?相談に乗るぞ」

「いや、そうじゃなくてですね、思ったんすけど、藤谷さん最近負のオーラ、ヤバくないっすか?」

「え?わかるのか?」

「あっち関係でしょ…?」

「ま、そう言われるとそうだな、何でわかったんだ?」

「そりゃボクも寂しい1人モンなんで、へへへ」

「それじゃ飯でも…行くか?」

「あ、飯の前にちょっと別んとこ行きませんか?」


ー ボク、こないだ営業で走ってた時に
いいお店見つけたんすよ

「お店?」

「あっち系です、ひひひ」

― さすがの俺もそこまでしなくていいよ
んなら自分だけで行ってこいよ

「まあ、そう言わずに…ボクも一人じゃ心細いし行き辛いんで」

「うーん…気が乗らないけど、今回だけだぞ」

「おっ、そうと決まれば早速今から行きましょ!」

「おい、内藤!その前に日報書いて帰れよ!」

「はいはいー、すぐに終わらせますねー!」

 後輩の内藤が見つけてきたお店とは
先日市内にオープンしたばかりの
とあるファッションヘルス、とのこと

俺はこれまでキャバクラですら行ったことはない、

今まで縁のなかった系統のお店、
おそらく内藤に誘われなければ
一人で行く機会などこの先もなかっただろう。 
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