16 / 20
その壱.幼少期編
【記憶は繰り返す】
しおりを挟む
どうしても譲れない気持ちになる時と言うのは
人生の中で何度かあると思うが
例えばそれが今後の自分を大きく左右する、
などと言う大層な話ではなく
何でそんなことに執着したんだろう?みたいな、
後で思い出すと笑ってしまうような
そんな些細なこだわりのようなことが多い。
それは私がまだ小学生の頃、
家族で買い物に行った時のこと。
新しい靴を買ってくれるとのことで
選んでいた時、ふと視界に飛び込んできたのが
展示されているイラスト入りの大きなバスタオル。
そこにはサメかイルカかの背に
可愛いネズミか何かの小動物が乗って
大きくジャンプしている、と言う
微笑ましいイラストだった。
私は何故かそのタオルに釘付けになり
買い物どころではなくなっていた。
両親もそんな私を不思議そうに見ていたが
痺れを切らしたのか
「バスタオルじゃなくて靴を…」と言うが
私は頑としてその場を離れない。
何故そこまで…?
今になってもその理由はわからないのだが
まるで吸い寄せられるようにバスタオルの前に行き
その場を離れること、タオルを諦めることが出来ない。
バスタオルを手に入れなければ
そのイラストをもう二度と見ることが出来ない
そんな切迫感にかられたのを覚えている。
別の物を買ってあげると言われても
美味しいものを食べに行こうと言われても
涙目になりながらそこから動かない私を見て
「これは本当によほどの理由があるのだろう」
ようやく両親も納得してくれ
念願叶ってそのバスタオルを手に入れた。
大喜びの私を見た家族は
「これだけ喜ぶのなら…」と納得した様子だった。
たかだか1,500円ほどの買い物ではあったが
私はまるで財宝を手に入れたように
これ以上無い喜びを噛み締めていた。
そのバスタオルは入浴の時はもちろん
海水浴に行くような時も頻繁に利用して
最終的にボロボロになってからは
枕カバーとして活躍し、
最後は雑巾となってその役割を終えた。
やはりそれだけ欲しかったものだったのだろう
天寿を全うするまで使い切ったのだった。
そしてそれから数10年の月日が流れ
私は父親になり家族で食事に出かけた…
今日はみんなで回転寿司に、と話しながら
車を走らせていると
「僕はハンバーグが食べたい!」
突然、当時幼稚園だった息子がそんなことを言い始めた。
我が家はどちらかと言えば娘の方がマイペースで
息子は従順なタイプ
家族の決定に息子が反対したり
拒絶することはこれまでなかった。
それが今日はどうしてもハンバーグが食べたい!
と号泣する。
その時、私はあの日のバスタオルのことを
ふと思い出した。
"どうしても譲れない時"が息子にも訪れたのだ、と。
「今日は予定を変えてハンバーグにしようか?」と
お寿司の気分だった娘を説得した。
妻もまた
「◯◯(息子)がこんなに言うのは珍しいから、今日はハンバーグでもいい?」と
すると娘も子供ながらに状況を把握したらしく
外食は急遽ハンバーグとなった。
この日、幼稚園の息子は私が食べるのと同じ
500グラムのハンバーグを完食した
やはり相当食べたかった上に
譲れない気持ちが大きかったのだろう。
今もそのお店には家族で頻繁に行くが
メニューを見るとあの日の息子と
バスタオルをねだった幼い私をつい重ねてしまう
やっぱりこう言うところが親子で似てるのだろうな、と。
人生の中で何度かあると思うが
例えばそれが今後の自分を大きく左右する、
などと言う大層な話ではなく
何でそんなことに執着したんだろう?みたいな、
後で思い出すと笑ってしまうような
そんな些細なこだわりのようなことが多い。
それは私がまだ小学生の頃、
家族で買い物に行った時のこと。
新しい靴を買ってくれるとのことで
選んでいた時、ふと視界に飛び込んできたのが
展示されているイラスト入りの大きなバスタオル。
そこにはサメかイルカかの背に
可愛いネズミか何かの小動物が乗って
大きくジャンプしている、と言う
微笑ましいイラストだった。
私は何故かそのタオルに釘付けになり
買い物どころではなくなっていた。
両親もそんな私を不思議そうに見ていたが
痺れを切らしたのか
「バスタオルじゃなくて靴を…」と言うが
私は頑としてその場を離れない。
何故そこまで…?
今になってもその理由はわからないのだが
まるで吸い寄せられるようにバスタオルの前に行き
その場を離れること、タオルを諦めることが出来ない。
バスタオルを手に入れなければ
そのイラストをもう二度と見ることが出来ない
そんな切迫感にかられたのを覚えている。
別の物を買ってあげると言われても
美味しいものを食べに行こうと言われても
涙目になりながらそこから動かない私を見て
「これは本当によほどの理由があるのだろう」
ようやく両親も納得してくれ
念願叶ってそのバスタオルを手に入れた。
大喜びの私を見た家族は
「これだけ喜ぶのなら…」と納得した様子だった。
たかだか1,500円ほどの買い物ではあったが
私はまるで財宝を手に入れたように
これ以上無い喜びを噛み締めていた。
そのバスタオルは入浴の時はもちろん
海水浴に行くような時も頻繁に利用して
最終的にボロボロになってからは
枕カバーとして活躍し、
最後は雑巾となってその役割を終えた。
やはりそれだけ欲しかったものだったのだろう
天寿を全うするまで使い切ったのだった。
そしてそれから数10年の月日が流れ
私は父親になり家族で食事に出かけた…
今日はみんなで回転寿司に、と話しながら
車を走らせていると
「僕はハンバーグが食べたい!」
突然、当時幼稚園だった息子がそんなことを言い始めた。
我が家はどちらかと言えば娘の方がマイペースで
息子は従順なタイプ
家族の決定に息子が反対したり
拒絶することはこれまでなかった。
それが今日はどうしてもハンバーグが食べたい!
と号泣する。
その時、私はあの日のバスタオルのことを
ふと思い出した。
"どうしても譲れない時"が息子にも訪れたのだ、と。
「今日は予定を変えてハンバーグにしようか?」と
お寿司の気分だった娘を説得した。
妻もまた
「◯◯(息子)がこんなに言うのは珍しいから、今日はハンバーグでもいい?」と
すると娘も子供ながらに状況を把握したらしく
外食は急遽ハンバーグとなった。
この日、幼稚園の息子は私が食べるのと同じ
500グラムのハンバーグを完食した
やはり相当食べたかった上に
譲れない気持ちが大きかったのだろう。
今もそのお店には家族で頻繁に行くが
メニューを見るとあの日の息子と
バスタオルをねだった幼い私をつい重ねてしまう
やっぱりこう言うところが親子で似てるのだろうな、と。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる