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Vol. ⅩⅠ リンネ
【君の窓から】
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あれから4年の歳月が流れた、そうあれから…
突然の嵐のようにミヤさんが旅立った
あの悲劇的な事故からもう4年が過ぎようとしていた。
恋愛の神様はこんなにも悲しい結末を
最初から用意していたのだろうか?
こんなシナリオの主人公になるために
俺はミヤさんと出会ったのか?
数奇な運命を呪いたくなる気持ちを抑えつつ
そして新たな誰かと恋に落ちることもなく
俺の4年間のキャンパスライフは呆気なく終わりを告げ
今日から社会人としての一歩を踏み出すことになった。
教育学部に合格した俺は教員免許を取得し
人と関わるのが苦手だったのに教壇に立つこととなり
しかも最初の赴任先がミヤさんの母校である小学校…
これもまた何かしらの巡り合わせなのだろうか?
全くもって人生と言うのはどう転がるかわからない。
初めての出勤を前に俺はいつものように
あの場所へと足を運ぶ…目の前には“長野”の表札。
「おはようございますー!」
「あら、おはよう翔さん、今日からお仕事じゃないの?時間は大丈夫なの?」
「はい、早めに家を出たので」
「ほんとに申し訳ないわねぇ、あれから毎日京に会いに来てくれて」
「あ、ミヤさんに報告しないと…今日から社会人だよ、って」
「でもね翔さん、私が言うのも何だけど…もうそろそろ新しい恋愛とかしてもいい頃じゃない?十分に弔ってもらってるし、きっと京もそれを…」
「はい…でもなかなかそれは…なので俺の気持ちの整理がつくまでは…」
少し湿っぽい雰囲気になりかけた時
それを振り払うような快活な声が背後から聞こえた
「ショーちゃん、おっはよー!!」
「いてて…あ、アカネちゃんおはよう」
亡きミヤさんの愛娘でこの春から中学生になった
茜音に思い切り背中を叩かれた。
「こら!茜音ったら」
「あ、いいんですよいいんですよ、前からそう呼ばれてるし」
「だってショーちゃんはショーちゃんだもん」
そう言って茜音はリビングの方へすたすた歩いて行った。
「ごめんなさいね、いつまでも子供で」
「いえいえ、アカネちゃん元気そうでよかった」
「子供じゃないもん!アタシもう中学生だからね、恋愛だってするんだから」
「茜音ったら、まだ早いわよあんたには」
「なんならショーちゃんと結婚してあげてもいいよ」
「あははは、覚えとくよその言葉」
彼女のおかげで重くなりかけた空気も少し和み
俺はいつものようにミヤさんが眠る部屋へと向かう
未だ納骨はされず今なお彼女にとって馴染み深い
この部屋で眠っている。
階段を昇ろうとした時
「翔さん、後で少し時間もらえるかしら?」
「あ、はい、まだ出勤時間まで大分ありますので」
「それじゃまた声かけてね」
「はい」
これまで何度となく物言わぬミヤさんの前で
ひとり語らってきた俺は
今日も仏前に向かって語りかけた。
― ミヤさん…そっちの世界はどんなかな?
あれからもう4年が経って
少しだけ気持ちの整理もついてきたよ。
最後に会った日に一緒にひとつずつ買ったローズマリー
そう、ミヤさんが好きって言ってた
てっちりの曲のタイトルと同じローズマリーの鉢植え
今は同じひとつの鉢の中で元気に育ってるよ。
見せてあげたいけど、“その中”にいたら見れないかな?
大野ヶ原町は今日もいい天気です
ふたりで出掛けた時の澄み渡るような青空や
麺っ娘に行った日、にわか雨に降られた曇天の空
俺の部屋の窓からいつも見る度に思い出してるよ
ミヤさんもこの窓から同じ空…見てたんだよね
今、この窓から何が見えているかな?
俺と同じ空は見えてますか?
…あ、丁寧語は禁止だったね
“また言ってる!”ってよく怒られたもんな
ミヤさんも俺と同じ空、見えてるかな?
こんな薄暗い箱…いや、部屋の中にいたら見えないよね
だから今日はスマホからてっちりの曲、久しぶりに流すね
そこにいてもこの歌が届くように…
俺は4年ぶりにてっちりの曲を流した
ミヤさんと過ごした時間がスローモーションのように
頭の中で再生されてゆく。
「何でだよ…何でもう、ここにいないんだよ」
わかっていた、そうなるとわかっていたはずなのに…
涙が止まらなかった。
突然の嵐のようにミヤさんが旅立った
あの悲劇的な事故からもう4年が過ぎようとしていた。
恋愛の神様はこんなにも悲しい結末を
最初から用意していたのだろうか?
こんなシナリオの主人公になるために
俺はミヤさんと出会ったのか?
数奇な運命を呪いたくなる気持ちを抑えつつ
そして新たな誰かと恋に落ちることもなく
俺の4年間のキャンパスライフは呆気なく終わりを告げ
今日から社会人としての一歩を踏み出すことになった。
教育学部に合格した俺は教員免許を取得し
人と関わるのが苦手だったのに教壇に立つこととなり
しかも最初の赴任先がミヤさんの母校である小学校…
これもまた何かしらの巡り合わせなのだろうか?
全くもって人生と言うのはどう転がるかわからない。
初めての出勤を前に俺はいつものように
あの場所へと足を運ぶ…目の前には“長野”の表札。
「おはようございますー!」
「あら、おはよう翔さん、今日からお仕事じゃないの?時間は大丈夫なの?」
「はい、早めに家を出たので」
「ほんとに申し訳ないわねぇ、あれから毎日京に会いに来てくれて」
「あ、ミヤさんに報告しないと…今日から社会人だよ、って」
「でもね翔さん、私が言うのも何だけど…もうそろそろ新しい恋愛とかしてもいい頃じゃない?十分に弔ってもらってるし、きっと京もそれを…」
「はい…でもなかなかそれは…なので俺の気持ちの整理がつくまでは…」
少し湿っぽい雰囲気になりかけた時
それを振り払うような快活な声が背後から聞こえた
「ショーちゃん、おっはよー!!」
「いてて…あ、アカネちゃんおはよう」
亡きミヤさんの愛娘でこの春から中学生になった
茜音に思い切り背中を叩かれた。
「こら!茜音ったら」
「あ、いいんですよいいんですよ、前からそう呼ばれてるし」
「だってショーちゃんはショーちゃんだもん」
そう言って茜音はリビングの方へすたすた歩いて行った。
「ごめんなさいね、いつまでも子供で」
「いえいえ、アカネちゃん元気そうでよかった」
「子供じゃないもん!アタシもう中学生だからね、恋愛だってするんだから」
「茜音ったら、まだ早いわよあんたには」
「なんならショーちゃんと結婚してあげてもいいよ」
「あははは、覚えとくよその言葉」
彼女のおかげで重くなりかけた空気も少し和み
俺はいつものようにミヤさんが眠る部屋へと向かう
未だ納骨はされず今なお彼女にとって馴染み深い
この部屋で眠っている。
階段を昇ろうとした時
「翔さん、後で少し時間もらえるかしら?」
「あ、はい、まだ出勤時間まで大分ありますので」
「それじゃまた声かけてね」
「はい」
これまで何度となく物言わぬミヤさんの前で
ひとり語らってきた俺は
今日も仏前に向かって語りかけた。
― ミヤさん…そっちの世界はどんなかな?
あれからもう4年が経って
少しだけ気持ちの整理もついてきたよ。
最後に会った日に一緒にひとつずつ買ったローズマリー
そう、ミヤさんが好きって言ってた
てっちりの曲のタイトルと同じローズマリーの鉢植え
今は同じひとつの鉢の中で元気に育ってるよ。
見せてあげたいけど、“その中”にいたら見れないかな?
大野ヶ原町は今日もいい天気です
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俺の部屋の窓からいつも見る度に思い出してるよ
ミヤさんもこの窓から同じ空…見てたんだよね
今、この窓から何が見えているかな?
俺と同じ空は見えてますか?
…あ、丁寧語は禁止だったね
“また言ってる!”ってよく怒られたもんな
ミヤさんも俺と同じ空、見えてるかな?
こんな薄暗い箱…いや、部屋の中にいたら見えないよね
だから今日はスマホからてっちりの曲、久しぶりに流すね
そこにいてもこの歌が届くように…
俺は4年ぶりにてっちりの曲を流した
ミヤさんと過ごした時間がスローモーションのように
頭の中で再生されてゆく。
「何でだよ…何でもう、ここにいないんだよ」
わかっていた、そうなるとわかっていたはずなのに…
涙が止まらなかった。
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