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17 時はきた
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「ここは……」
目が覚めると、知らない天井が見えた。
人間見知らぬ景色を見ると不安になるものだと我ながら思う。
「!? いたぁッ!」
見知らぬ天井を見て若干不安になった俺は手足を曲げ身を守るために丸くなろうとしたものの、背中に痛みが走ったせいでできなかった。
「いぃってぇ…なんだこの痛み?」
痛みが和らげばと痛む辺りをさする。すると手には服の他に何やら包帯のようなものの触感があった。
俺は自分の着ている服をめくってみた。すると……なんと言えばいいのだろうか、そこにはせいぜい漫画でしか見たことのない量の包帯が腹の辺りでグルグル巻きにしてあった。
「これは…」
(確か…そうだ、スライムにやられた傷だ…。ここまで手当てしなきゃいけないレベルの傷だったのか…)
傷を負った時のことを思い出す。それに合わせて傷を負った部分に脈動したかのような痛みがくる。
それは数回程度でなくなったものの、本来ある傷が少しずつ痛み出した。
「おや、起きたかい?」
「……村長さん?」
声のする方に視線を向ける。するとそこには小鉢を抱えた村長の姿があった。
(村長がいるってことは、ここは村長の家か…?)
部屋一面をグルリと見渡して見る。村長の家だと認識してからもう一度見れば、確かに一度訪れた時に見かけたような気がしてきた。
そんなことを考えている間に村長が部屋の中へと入ってくる。
因みにだが、この部屋にはドアがない。付いていたような形跡はあるものの、乱暴にこじ開けたような跡があった。いや、こじ開けたではなく、破壊した、と言うのがおそらく正しいのだろう。
だから部屋の中は通り掛かればいつでも覗ける仕様になっている。
(ってこんなこと考えてどうすんだよ俺)
部屋に入ってきた村長が持っていたのは薬草で作った軟膏らしい。
うつ伏せになるように言われたので、痛む身体を慎重に動かして体勢をとる。
「さて、始めるぞい」
そういって俺の背中と腹にグルグル巻かれている包帯を外し始めた村長。どうやら痛まないように丁寧に外してくれているらしく、全くと言っていいほどにその間痛むことはなかった。
包帯を完全に外し終えると今まで隠れていた傷が露わになる。それを見て俺は自分の体のことなのに、思わず息を飲んだ。
赤黒い肌に少しの焼け爛れたような跡がある。そしてその大きさは、バスケットボールと同じくらい巨大だった。
その傷に村長は軟膏を丁寧に塗り込んで行く。塗り込んで行くたびに薬が沁みたような痛みがする。しかしその後は段々痛みが引いていってるような気がした。
「驚いているようじゃがな、この傷は元々はもっと酷い傷じゃった。 だがのう、アーリィの治癒のお陰で何とかここまで治っておったのじゃ。 」
「…え、アーリィが?」
「うむ、一晩中お前さんに治癒魔法を掛け続けていたんじゃ。 お陰様での、アーリィは魔力を使い切り倒れてしまった…。」
「倒れた? アーリィが!?」
慌ててベッドから飛び降りようとするも、村長の止められてしまった。
「気持ちは分かるが、まだダメじゃ。 せめてこれを塗り終わってから行くんじゃ。」
「は、はい……」
(俺のために…アーリィが倒れた……。くそッ情けねぇ…!)
己の不甲斐なさに涙が出る。いつもいつも結局誰かに助けられる。助けられてしまう。結局はそうだ。向こうの世界にいた頃だって——。
いつの間にか涙を流していた俺を見た村長は、声をかけることもなくひたすら俺の背中に軟膏を塗ってくれていた。
軟膏を塗り終わり、包帯も巻き終わると俺は村長にアーリィが休んでいる場所を聞き、お礼を告げると走って彼女のもとに向かった。
村長に教えてもらった部屋を見つけ、ドアを開く。
ベッドの上にはスヤスヤと寝息を立てるアーリィの姿があった。
そして傍に人がいるのを確認した。
「アーガス…だっけ?」
「ああ、何の用だ」
「あ~いや、何してたのかなってね」
「……看病だ。 お前は?」
「俺は…確認、かな。 命の恩人のさ」
「そうか。 ならもう行け、まだ治ってないんだろう。アーリィが目覚めたら知らせてやる。」
「あ、ああ、分かったよ。ありがとう」
名残惜しくはあったがアーガスの言葉は正論だ。一先ず俺はその言葉に従うことにして自分が寝ていた部屋へと向かった。
明日はいよいよ俺にとっての運命の日になる。ジェイドの口ぶりからするとほぼ間違いなく俺は何かに襲われることになる。
そして生き残るためにはその何かを倒さなければならない。
正直体のコンディションは決して万全とは言えない。傷は未だに残っているもののもうそこまでは痛くないのは都合が良かった。
部屋に戻るとそこには村長の姿があった。村長は俺とすれ違うように部屋を出て行くとき、
「今日はアーリィ共々泊まって行くといい。 グリアス達にはもう伝えてあるからのう」
と言われたので、その言葉に従うことにした。
ベッドに寝転がり、明日起こるであろう襲撃に備えるために瞼を閉じた。
だがーー
ズドォォンッ
突如として目の前が崩落し、何かが落ちてきた。
あまりの出来事にフリーズする。
(は、は? 今何が起きた?)
今起きた出来事に頭が追いつかない。何故、という疑問符に頭が埋め尽くされる。
数秒後、舞い上がった土煙が多少収まる頃、さらに不可解な出来事に頭を悩ませることになる。
土煙が晴れ、漸く見えてきたもの正体は……
青黒い肌、引き締まった鋼の肉体、俺の身の丈以上の木製の棍棒、そしてーーー巨大な一つ目。
「サイク、ロプス……」
ゴァァアアアアァァァァァアァアァァ!!!
眼前に現れた破壊の化身は俺に、いや俺たちに絶望の咆哮を轟かせた。
目が覚めると、知らない天井が見えた。
人間見知らぬ景色を見ると不安になるものだと我ながら思う。
「!? いたぁッ!」
見知らぬ天井を見て若干不安になった俺は手足を曲げ身を守るために丸くなろうとしたものの、背中に痛みが走ったせいでできなかった。
「いぃってぇ…なんだこの痛み?」
痛みが和らげばと痛む辺りをさする。すると手には服の他に何やら包帯のようなものの触感があった。
俺は自分の着ている服をめくってみた。すると……なんと言えばいいのだろうか、そこにはせいぜい漫画でしか見たことのない量の包帯が腹の辺りでグルグル巻きにしてあった。
「これは…」
(確か…そうだ、スライムにやられた傷だ…。ここまで手当てしなきゃいけないレベルの傷だったのか…)
傷を負った時のことを思い出す。それに合わせて傷を負った部分に脈動したかのような痛みがくる。
それは数回程度でなくなったものの、本来ある傷が少しずつ痛み出した。
「おや、起きたかい?」
「……村長さん?」
声のする方に視線を向ける。するとそこには小鉢を抱えた村長の姿があった。
(村長がいるってことは、ここは村長の家か…?)
部屋一面をグルリと見渡して見る。村長の家だと認識してからもう一度見れば、確かに一度訪れた時に見かけたような気がしてきた。
そんなことを考えている間に村長が部屋の中へと入ってくる。
因みにだが、この部屋にはドアがない。付いていたような形跡はあるものの、乱暴にこじ開けたような跡があった。いや、こじ開けたではなく、破壊した、と言うのがおそらく正しいのだろう。
だから部屋の中は通り掛かればいつでも覗ける仕様になっている。
(ってこんなこと考えてどうすんだよ俺)
部屋に入ってきた村長が持っていたのは薬草で作った軟膏らしい。
うつ伏せになるように言われたので、痛む身体を慎重に動かして体勢をとる。
「さて、始めるぞい」
そういって俺の背中と腹にグルグル巻かれている包帯を外し始めた村長。どうやら痛まないように丁寧に外してくれているらしく、全くと言っていいほどにその間痛むことはなかった。
包帯を完全に外し終えると今まで隠れていた傷が露わになる。それを見て俺は自分の体のことなのに、思わず息を飲んだ。
赤黒い肌に少しの焼け爛れたような跡がある。そしてその大きさは、バスケットボールと同じくらい巨大だった。
その傷に村長は軟膏を丁寧に塗り込んで行く。塗り込んで行くたびに薬が沁みたような痛みがする。しかしその後は段々痛みが引いていってるような気がした。
「驚いているようじゃがな、この傷は元々はもっと酷い傷じゃった。 だがのう、アーリィの治癒のお陰で何とかここまで治っておったのじゃ。 」
「…え、アーリィが?」
「うむ、一晩中お前さんに治癒魔法を掛け続けていたんじゃ。 お陰様での、アーリィは魔力を使い切り倒れてしまった…。」
「倒れた? アーリィが!?」
慌ててベッドから飛び降りようとするも、村長の止められてしまった。
「気持ちは分かるが、まだダメじゃ。 せめてこれを塗り終わってから行くんじゃ。」
「は、はい……」
(俺のために…アーリィが倒れた……。くそッ情けねぇ…!)
己の不甲斐なさに涙が出る。いつもいつも結局誰かに助けられる。助けられてしまう。結局はそうだ。向こうの世界にいた頃だって——。
いつの間にか涙を流していた俺を見た村長は、声をかけることもなくひたすら俺の背中に軟膏を塗ってくれていた。
軟膏を塗り終わり、包帯も巻き終わると俺は村長にアーリィが休んでいる場所を聞き、お礼を告げると走って彼女のもとに向かった。
村長に教えてもらった部屋を見つけ、ドアを開く。
ベッドの上にはスヤスヤと寝息を立てるアーリィの姿があった。
そして傍に人がいるのを確認した。
「アーガス…だっけ?」
「ああ、何の用だ」
「あ~いや、何してたのかなってね」
「……看病だ。 お前は?」
「俺は…確認、かな。 命の恩人のさ」
「そうか。 ならもう行け、まだ治ってないんだろう。アーリィが目覚めたら知らせてやる。」
「あ、ああ、分かったよ。ありがとう」
名残惜しくはあったがアーガスの言葉は正論だ。一先ず俺はその言葉に従うことにして自分が寝ていた部屋へと向かった。
明日はいよいよ俺にとっての運命の日になる。ジェイドの口ぶりからするとほぼ間違いなく俺は何かに襲われることになる。
そして生き残るためにはその何かを倒さなければならない。
正直体のコンディションは決して万全とは言えない。傷は未だに残っているもののもうそこまでは痛くないのは都合が良かった。
部屋に戻るとそこには村長の姿があった。村長は俺とすれ違うように部屋を出て行くとき、
「今日はアーリィ共々泊まって行くといい。 グリアス達にはもう伝えてあるからのう」
と言われたので、その言葉に従うことにした。
ベッドに寝転がり、明日起こるであろう襲撃に備えるために瞼を閉じた。
だがーー
ズドォォンッ
突如として目の前が崩落し、何かが落ちてきた。
あまりの出来事にフリーズする。
(は、は? 今何が起きた?)
今起きた出来事に頭が追いつかない。何故、という疑問符に頭が埋め尽くされる。
数秒後、舞い上がった土煙が多少収まる頃、さらに不可解な出来事に頭を悩ませることになる。
土煙が晴れ、漸く見えてきたもの正体は……
青黒い肌、引き締まった鋼の肉体、俺の身の丈以上の木製の棍棒、そしてーーー巨大な一つ目。
「サイク、ロプス……」
ゴァァアアアアァァァァァアァアァァ!!!
眼前に現れた破壊の化身は俺に、いや俺たちに絶望の咆哮を轟かせた。
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