分身鳥の恋番

小池 月

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Ⅲ章「飛べない鳥と猛禽鳥の愛番」

side:羽田 咲人⑪※

<愛すること>

 「あれ? 咲人?」

知った声にビクリとする。

金曜日の仕事終わり。脩と一緒に帰宅途中。俺の反応を見て、ハっと振り返る脩。

「久しぶりじゃん。元気していたか? そっち、恋人? それともセフレ?」

茶髪の愛らしい顔の男。肩の茶色いスズメが羽をせわしなく動かしている。サバサバした性格が後腐れなくていいと思い大学時代に半年ほどセフレだった男。今さら声をかけるなよ。焦りと苛立ちが顔に出てしまう。

脩を後ろに隠して向き合う。

「急いでいるから。それと、脩は恋人だ」

「ふうん。残念。セフレなら俺も混ぜてもらおうと思ったのに」

チラリと脩を覗いて立ち去っていく。

無言の脩に、なんて言っていいか分からない。金曜独特の人の流れの中で立ちすくむ。汗が止まらない。緊張で口が渇く。

しばらくして、やっと一言が出る。

「ご、ごめん……」

他に言葉が見つからない。俺を見ない脩。

「可愛い、男の人、だね……」

少し震える脩の声。脩の手をさっと握りそのまま家に急ぐ。

下を向く脩と、シマフクロウを凝視しているヤンバルクイナ。居たたまれない気持ちがシマフクロウから流れ込んできていた。申し訳なさに早足になる。

 一緒に暮らして一年。お腹の手術痕も薄くなっている。体調も整っている。だけど、俺たちはキスと抱擁だけのセックスレスな恋人関係を続けていた。

 帰宅してからも気まずい空気を拭い去れずに沈黙が続く。こちらを見ない脩と、対照的に距離をとりながらシマフクロウをじっと見つめるヤンバルクイナ。

「脩」

沈黙に困り果てて呼びかけると脩が顔を上げて俺を見る。何かを決意したような瞳に気圧される。

「咲人、お風呂に入ろう」

「ご飯前に?」

脩がコクリと頷く。

「セックス、しよう」

「は?」

「僕、具合はいいみたいだよ? ほら、両性って受け入れるのは大丈夫に出来ているみたいだし」

悲しそうな顔。脩にこんなことを言わせたいわけじゃない。申し訳なくて心が苦しい。

「毎日一緒にお風呂に入っているし、今更恥ずかしいなんて思わない」

「脩、いいから」

「良くない! 嫌なんだよ! 咲人が他の誰かとするかもって思ったら、嫌なんだ!」

脩がボロボロと涙を流す。

「しないよ。誰ともしない。さっきのは大学の頃の相手だ。昔の話だから。本当にごめん」

そっと脩を抱き締める。腕の中で小さくうなずく脩をそっと撫でる。

「でも、しよう。少しずつ覚悟はしていたんだ。咲人となら怖くないかもって思っていた」

「本当に? いいのか?」

「咲人が嫌じゃなければ、だけど」

「嫌なわけない。正直こんな日が来ればいいって心の底では願っていた。嬉しい」

脩を抱き締めてそっと涙を舐めとる。そのまま唇を舐めてキス。薄く開ける口の中に舌をねじ込んで脩の粘膜を味わう。

粘膜の熱さと独特のいやらしさに興奮する! 脩の息があがり小さく上がる「んっ」という声に腰が反応する。抱き締めている脩に固くなった俺のペニスを押し付ける。そのままユサユサ腰を使うとビクビク反応する身体が可愛い! 

真っ赤な脩を嘗め回したくて全身が熱くなる。

リビングを見るとヤンバルクイナとシマフクロウが愛の給餌をしている。分身鳥から幸福が流れ込む。心臓が高鳴り我慢できない!

『ちょっと脩と二人にして』とシマフクロウに伝えると『こっちのセリフだ! 邪魔するな!』と返してくるから笑えた。分身鳥との感覚共有ってこんな時も一緒なのか。


 二人でシャワーを浴びて濃厚にキス。素肌の触れ合いとキスだけで完全に反応してしまう。脩のも起ちあがって固くなっている。嬉しくて俺のと何度もこすり合わせる。少し恥ずかしそうに逃げ腰になる姿にさらに興奮してしまう。一度一緒に出してしまいたいと思った時、申し訳なさそうに脩が声を出す。

「あの、一応言っておくけど。僕の経験値って低い、と思う。強制的なことされていたと思うし記憶が曖昧なんだ。えっと、期待に沿えなかったらゴメン」


「脩、良く聞いて。愛があってこその性交じゃないかな。愛のない経験は無かったことにしていい」

「え? 僕の出産も?」

「それは貴重な命を作った行為だ。脩のおかげで絶滅回避している種族もある。生まれた子は、大切にされているよ。俺たちが親の顔を知らないように、脩の子供たちは大切に保護されている。知りたいなら情報は手に入れられる。成長を見守る?」

「いい。知らなくて、いい。そうやって絶滅危惧種最高位が守られているかもしれないって分かった。僕の親も苦しい思いをしたのかな。できれば愛のある行為で産んであげたかった」

泣きだす脩に、そっと囁く。

「シマフクロウを、産んで欲しい」

「……うん」

そっと抱きしめて、深いキス。愛おしい大好きな脩。

ベッドに移動して脩の全身を愛撫した。愛おしくてたまらなかった。「愛している」と何度も囁いた。脩が照れながら「僕も愛している」と返してくれるのが嬉しかった。後ろを指で拡げながら脩のペニスを嘗め回して吸いつくすと「やぁ、もう、やらぁ」と上がる声にさらに興奮した。

「脩、もっと、してもいい?」

一度達して胸を喘がせて呼吸する脩に聞くと、真っ赤な顔でコクリと頷く。「ありがとう」と髪にキスを落とす。

 脩の中にゆっくり挿入った。繋がる感動に、満たされる心に、脩の全てに感謝をした。脩の後腔が俺のペニスを食むようにグニグニと動くのが最高に気持ち良かった。脩の気持が良いように愛していたはずが、途中から激しく貪るように抱きつくしてしまった。我慢ができず理性が吹き飛んでしまっていた。

脩が「もっとぉ」「気持ちいぃ」「あぁ~」と漏らしてくれる声と結合部からグポグポと鳴る卑猥な音に興奮した。脩を何度も呼んで何度も繋がった。ドロドロになるまで溶け合った。脩の痴態に脳みそが沸騰した。脩が世界の中で一番美しく輝く存在だと俺の中に刻み込まれる瞬間だった。脩に生涯を捧げる。そう自分に誓って、幸福に溢れる涙が止まらなかった。

神様、脩に出会わせてくれてありがとう。この愛を、ありがとう。心からそう思えた。俺の涙をそっと手で拭い優しく微笑む脩が女神に見えた。

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