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Ⅴ③ 償いは誰のため?<SIDE:鼠(鼠屋)>
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「おつかれ」
満足そうに微笑むレオから声がかかる。
「わ~~やっと終わった!」
「牛田、また明後日夕方ホールな」
「うげえ! レオの鬼! もう勘弁してぇ」
可愛く泣きまねをして猫に抱き着く牛。レオがヨシヨシ、と背中をさすり笑う。
「何とでも言え。でも、面白かっただろ?」
「まぁ、そうだな。鼠が地道に何かするところなんて初めて見られたからな」
虎が少し離れている鼠に声をかける。鼠は自分に声がかかると思っていなかった。困って下を向く。すぐにレオの通る声がする。
「お前らは十二支なんだ。これからレオである俺が死んでもずっと先まで一緒に過ごす仲間だろう? 良い機会だからお互いを見てみろって。猫のことにこだわりすぎて互いの価値に気が付かないのも勿体ないだろ?」
牛と虎が鼠を睨む。
「だって、鼠はズルいんだ」
「そっか。鼠、お前自分のしたことにまだ向き合ってないのかよ。今日働いて分かっただろ? 牛も虎も真面目な良い奴なんだ。お前の罪を謝罪して伝わらない相手じゃない。ギスギスしたままじゃ働きにくいだろう。心をこめて謝れよ」
レオの言葉に鼠の心臓が跳ね上がる。
謝ることもできず過ごした千年以上。これからも変わらないと思っていた鼠の状況。諦めていたのに。謝るタイミングを逃していた日々。今そのチャンスをくれる猫。ドキドキしすぎて唇が震える。牛と虎が少し距離を置いて睨んでいるのが分かる。怖いけれど、今しか無い!
「ご、ごめん。牛、ごめんなさい。本当は気が付いていたんだ。牛が、後ろからくる虎も必死で息を切らして駆け抜けていたこと。最後にもしかしたら一番取れるかもって軽い気持ちで飛び出した。それが皆の努力をぶち壊すことになるって気が付いていなかった。俺、どうしようもなくバカだった。神様にも、猫にも皆に嫌われて孤独な時間で分かったんだ。俺、浅はかなクソ鼠だった。嫌われるのは仕方がないと思っている。だけど謝らせて欲しい。本当に、ごめん。牛、悪かった」
牛に向かって深々と頭を下げる鼠。これ以上ないくらいに心からの謝罪を示す。
「はじめっからそう言え! 逃げ回ってばかりで自分のしたことに向き合わない姿勢が気に入らなかったんだよ! 謝られても鼠とは絶対気が合わないし嫌いだし、簡単に許されると思うな! ただ、一応、謝ってきたからな。大嫌いのクソ鼠からただの鼠にしてやるよ」
フン、とそっぽを向く牛。それでも牛が鼠の言葉に耳を傾けてくれる現実に感動で言葉が出ない。
「仲良しこよしにはなれないが、鼠が十二支である事はもう事実だしな。やはり猫はすごいな。千年以上もいがみ合った状況を簡単にひっくり返す。なぁ、レオ。神獣に戻れよ。俺たちには猫が必要だ」
虎がレオに語りかけるが、レオは三人に背中を向ける。
「……俺は、人間のレオだよ。猫じゃ、ない」
「レオ、猫にも、謝っていいだろうか?」
鼠がレオの背にか細く語りかける。
「それは、無理だ。猫は、もう死んだ。もう存在しないんだよ!」
下を向いたレオがハッキリと口にする言葉。拒絶を示す震える背中に、それ以上誰も何も言えなかった。
「なぁ、鼠。お前、死って想像したことあるか?」
バイトの帰り道に牛から問われる。レオを家まで送り、牛と虎と鼠だけになっていた。
牛に突然声をかけられて鼠は首をかしげる。死んで消え入りたいと思うことはあったが、実際の死はどういうものだろう?
「不老不死の俺たちには分からない絶望や苦痛なのかもな」
虎の寂しそうな声。
「猫は、まだ苦しいのかな」
牛の声に心臓が張り裂けそうに痛みを発する。
「お、俺が悪いんだ……。でも、もうどうしていいのか、分からなくて……」
鼠は下を向いて心の内を言葉にする。
「今、レオが猫の記憶を取り戻したのは奇跡だ。何か絶対に意味がある。絶対に」
牛が真剣な顔で鼠を見る。憎しみではない神気を込めた目線に気おされて一歩後ずさる。
「僕と虎は猫が大事なんだ。十二支に入れなくても神の使いとして天界の神獣に戻したい。猫は神様や僕たちと一緒に居るべきだ。鼠だって今日を経験したらそう思うだろう?」
これには即答できる。
「もちろん」
「じゃ、ひとまず力を合わせよう。レオが人間の人生を唐突に終わらせることがないように守るんだ。万が一レオの人生が終われば魂は輪廻の輪に吸い込まれる。そうなると神様でも止めることが出来ない。それに猫の記憶が次の転生で戻ることはまず無いだろう。だからこそレオの命を守る必要がある」
牛の言葉にドキリとする。そうだ。猫の生まれ変わりを見つける大変さは良く知っている。
「分かった」
頷きながら返事をする。
「猫のために、レオのために俺たちは協力しよう」
虎に声をかけられて、二人に向かってしっかりと頷く。レオを守る仲間だ。鼠はくすぐったいような温かいものを心に感じていた。全て猫のおかげだと思いながら、猫にしてしまった己の罪を思い出し胸が痛んだ。
満足そうに微笑むレオから声がかかる。
「わ~~やっと終わった!」
「牛田、また明後日夕方ホールな」
「うげえ! レオの鬼! もう勘弁してぇ」
可愛く泣きまねをして猫に抱き着く牛。レオがヨシヨシ、と背中をさすり笑う。
「何とでも言え。でも、面白かっただろ?」
「まぁ、そうだな。鼠が地道に何かするところなんて初めて見られたからな」
虎が少し離れている鼠に声をかける。鼠は自分に声がかかると思っていなかった。困って下を向く。すぐにレオの通る声がする。
「お前らは十二支なんだ。これからレオである俺が死んでもずっと先まで一緒に過ごす仲間だろう? 良い機会だからお互いを見てみろって。猫のことにこだわりすぎて互いの価値に気が付かないのも勿体ないだろ?」
牛と虎が鼠を睨む。
「だって、鼠はズルいんだ」
「そっか。鼠、お前自分のしたことにまだ向き合ってないのかよ。今日働いて分かっただろ? 牛も虎も真面目な良い奴なんだ。お前の罪を謝罪して伝わらない相手じゃない。ギスギスしたままじゃ働きにくいだろう。心をこめて謝れよ」
レオの言葉に鼠の心臓が跳ね上がる。
謝ることもできず過ごした千年以上。これからも変わらないと思っていた鼠の状況。諦めていたのに。謝るタイミングを逃していた日々。今そのチャンスをくれる猫。ドキドキしすぎて唇が震える。牛と虎が少し距離を置いて睨んでいるのが分かる。怖いけれど、今しか無い!
「ご、ごめん。牛、ごめんなさい。本当は気が付いていたんだ。牛が、後ろからくる虎も必死で息を切らして駆け抜けていたこと。最後にもしかしたら一番取れるかもって軽い気持ちで飛び出した。それが皆の努力をぶち壊すことになるって気が付いていなかった。俺、どうしようもなくバカだった。神様にも、猫にも皆に嫌われて孤独な時間で分かったんだ。俺、浅はかなクソ鼠だった。嫌われるのは仕方がないと思っている。だけど謝らせて欲しい。本当に、ごめん。牛、悪かった」
牛に向かって深々と頭を下げる鼠。これ以上ないくらいに心からの謝罪を示す。
「はじめっからそう言え! 逃げ回ってばかりで自分のしたことに向き合わない姿勢が気に入らなかったんだよ! 謝られても鼠とは絶対気が合わないし嫌いだし、簡単に許されると思うな! ただ、一応、謝ってきたからな。大嫌いのクソ鼠からただの鼠にしてやるよ」
フン、とそっぽを向く牛。それでも牛が鼠の言葉に耳を傾けてくれる現実に感動で言葉が出ない。
「仲良しこよしにはなれないが、鼠が十二支である事はもう事実だしな。やはり猫はすごいな。千年以上もいがみ合った状況を簡単にひっくり返す。なぁ、レオ。神獣に戻れよ。俺たちには猫が必要だ」
虎がレオに語りかけるが、レオは三人に背中を向ける。
「……俺は、人間のレオだよ。猫じゃ、ない」
「レオ、猫にも、謝っていいだろうか?」
鼠がレオの背にか細く語りかける。
「それは、無理だ。猫は、もう死んだ。もう存在しないんだよ!」
下を向いたレオがハッキリと口にする言葉。拒絶を示す震える背中に、それ以上誰も何も言えなかった。
「なぁ、鼠。お前、死って想像したことあるか?」
バイトの帰り道に牛から問われる。レオを家まで送り、牛と虎と鼠だけになっていた。
牛に突然声をかけられて鼠は首をかしげる。死んで消え入りたいと思うことはあったが、実際の死はどういうものだろう?
「不老不死の俺たちには分からない絶望や苦痛なのかもな」
虎の寂しそうな声。
「猫は、まだ苦しいのかな」
牛の声に心臓が張り裂けそうに痛みを発する。
「お、俺が悪いんだ……。でも、もうどうしていいのか、分からなくて……」
鼠は下を向いて心の内を言葉にする。
「今、レオが猫の記憶を取り戻したのは奇跡だ。何か絶対に意味がある。絶対に」
牛が真剣な顔で鼠を見る。憎しみではない神気を込めた目線に気おされて一歩後ずさる。
「僕と虎は猫が大事なんだ。十二支に入れなくても神の使いとして天界の神獣に戻したい。猫は神様や僕たちと一緒に居るべきだ。鼠だって今日を経験したらそう思うだろう?」
これには即答できる。
「もちろん」
「じゃ、ひとまず力を合わせよう。レオが人間の人生を唐突に終わらせることがないように守るんだ。万が一レオの人生が終われば魂は輪廻の輪に吸い込まれる。そうなると神様でも止めることが出来ない。それに猫の記憶が次の転生で戻ることはまず無いだろう。だからこそレオの命を守る必要がある」
牛の言葉にドキリとする。そうだ。猫の生まれ変わりを見つける大変さは良く知っている。
「分かった」
頷きながら返事をする。
「猫のために、レオのために俺たちは協力しよう」
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