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19世紀末のポルトガルのある村で起きた話である。
人口二百人ほどの自然豊かなその村では年に一回ギリシャ神話の神パーンを祀るために、ある祭りが行われていた。
パーンとは山羊のような獣面をした神で、ゼウスの子の一人だが、人に混乱と恐怖をもたらすと言われており、村の人たちはその怒りに触れるのを恐れていた。
その祭りでは毎年9月の第二週に自分で作ったパン一つを一週間かけて食べ、その年の豊作を祝い、パーンに感謝の気持ちを伝えると言うものだった。
その祭りはとても歴史が古く、当時の村長曰く六百年ほど続いていると言われている。
ある年、祭りの期間中に悲劇は始まった。村の周辺で死体が見つかったのである。
最初は川で溺死した青年の死体だった。
奇妙なのは青年の体には山羊の蹄のような痣がいくつもみられたことである。
おそらく家で飼っていた山羊が何らかの理由で興奮して、不慮の事故で青年は死んでしまったのだと皆が悲しんでいた。
しかし事態はさらなる動きを見せる。
翌日の朝に山で頭が砕かれた若い女性の無残な姿が発見されたのである。
またしても村人は皆悲しんだ。
だが、今度はある目撃情報があった。
なんと山羊のような頭をした男が夜の村を徘徊していたと言うのだ。
目撃したというのは村の五才くらいの男の子だった。村人は子供の戯言だと言っていたが、徐々に恐怖心が芽生え始めた。その後も村人が次々と不可解な死を遂げていった。
その都度山羊男の目撃情報があがり、誰かがパーンの逆鱗に触れたのだと噂が立った。
もちろん警察も呼んで捜査が始まっていたが、山羊男の影を捉えきれずにいた。
祭りの六日目になり、村で祭りの禁忌を犯した人物がいることが発覚した。
村長の息子と二回目の殺人で殺された女性は互いに愛し合っており、互いにパンを分け合って食べていたと言うのだ。
村長の子はそのことは事件に関係ないと思っていたが、なかなか言い出せず、六日目になってようやく父に告げたと言う。
それを知った信心深い村の人々は、やはり神の怒りに触れたのだと騒ぎ、村の教会の神父に神の怒りを収める方法について尋ねた。
神父は再び祭りを行い、パーンを祀る神殿を建て、そこに生贄の肉を焼いてパンに挟んだものを捧げることを、毎年行わなければならないと言った。
村の人々は生贄に禁忌を破った村長の息子を捧げることに決め、抵抗する息子を惨殺し、神父に言われたとうりにパンに焼いた肉を挟み、七日間に分けて食べられるように切れ目を入れて神殿に捧げた。
すると不可解な村人の死が収まり、村に平穏が戻り、一頭の山羊が村の牧場で死んでいるのが見つかった。
こうして神の怒りは収まったと言われている。
20世紀の半ばからは、生贄の代わりチョコレートを混ぜ、焼いた肉のような色にして挟むようになった。
このパンは二人の男女が互いに契りを交わし、パンをちぎって分け合ったことから、「契りパン」と呼ばれ多くの人に親しまれているという。
人口二百人ほどの自然豊かなその村では年に一回ギリシャ神話の神パーンを祀るために、ある祭りが行われていた。
パーンとは山羊のような獣面をした神で、ゼウスの子の一人だが、人に混乱と恐怖をもたらすと言われており、村の人たちはその怒りに触れるのを恐れていた。
その祭りでは毎年9月の第二週に自分で作ったパン一つを一週間かけて食べ、その年の豊作を祝い、パーンに感謝の気持ちを伝えると言うものだった。
その祭りはとても歴史が古く、当時の村長曰く六百年ほど続いていると言われている。
ある年、祭りの期間中に悲劇は始まった。村の周辺で死体が見つかったのである。
最初は川で溺死した青年の死体だった。
奇妙なのは青年の体には山羊の蹄のような痣がいくつもみられたことである。
おそらく家で飼っていた山羊が何らかの理由で興奮して、不慮の事故で青年は死んでしまったのだと皆が悲しんでいた。
しかし事態はさらなる動きを見せる。
翌日の朝に山で頭が砕かれた若い女性の無残な姿が発見されたのである。
またしても村人は皆悲しんだ。
だが、今度はある目撃情報があった。
なんと山羊のような頭をした男が夜の村を徘徊していたと言うのだ。
目撃したというのは村の五才くらいの男の子だった。村人は子供の戯言だと言っていたが、徐々に恐怖心が芽生え始めた。その後も村人が次々と不可解な死を遂げていった。
その都度山羊男の目撃情報があがり、誰かがパーンの逆鱗に触れたのだと噂が立った。
もちろん警察も呼んで捜査が始まっていたが、山羊男の影を捉えきれずにいた。
祭りの六日目になり、村で祭りの禁忌を犯した人物がいることが発覚した。
村長の息子と二回目の殺人で殺された女性は互いに愛し合っており、互いにパンを分け合って食べていたと言うのだ。
村長の子はそのことは事件に関係ないと思っていたが、なかなか言い出せず、六日目になってようやく父に告げたと言う。
それを知った信心深い村の人々は、やはり神の怒りに触れたのだと騒ぎ、村の教会の神父に神の怒りを収める方法について尋ねた。
神父は再び祭りを行い、パーンを祀る神殿を建て、そこに生贄の肉を焼いてパンに挟んだものを捧げることを、毎年行わなければならないと言った。
村の人々は生贄に禁忌を破った村長の息子を捧げることに決め、抵抗する息子を惨殺し、神父に言われたとうりにパンに焼いた肉を挟み、七日間に分けて食べられるように切れ目を入れて神殿に捧げた。
すると不可解な村人の死が収まり、村に平穏が戻り、一頭の山羊が村の牧場で死んでいるのが見つかった。
こうして神の怒りは収まったと言われている。
20世紀の半ばからは、生贄の代わりチョコレートを混ぜ、焼いた肉のような色にして挟むようになった。
このパンは二人の男女が互いに契りを交わし、パンをちぎって分け合ったことから、「契りパン」と呼ばれ多くの人に親しまれているという。
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