悪役冒険者は傷つかない~【不死】が作る最強クランは容赦を知らない~

幸せ果実

文字の大きさ
4 / 17

第4話 ワンチャン

しおりを挟む
 不意に訪れる回想。

 ―――笑うクラスメイト。追い出される自分。騎士リューイに裏切られ拉致された。薬を打たれ曖昧な意識のなか、何日間も体を弄られた。
 日にちも時間も忘れた頃、床に投げられ地面が光り浮遊感のあとここにいた。


「ああ、どうしよう。能面の機械を殺す算段が無い。……そもそも今、対峙していて生きているのが異常なんだ。能面の機械がふざけて俺に回復魔法やらをかけるから、こんな無駄な延命されている」

 薬などで混濁していた意識もそれにより回復した。

「―――キリキリキリキリッ」

「うるさいなあ。どこからそんな音がでてくるんだろう。ははっ……ああー」

 今を表す言葉を知っていた。

「絶望だ」

 現実を表す言葉を紡ぐ。それを嘲笑うかのように能面の機械が加速し腹部に槍を刺す。

 信じられないような痛みが滲む……かと思われたが痛まない。

 ただ。赤い血は滲むし、腹部の異物感は存在を示している。

 今度こそはと一縷の願望を胸に瞼を閉じた。




「……まだ。遊ぶのかよ」

「キリャャャ! ざ、ざ、ザーーーーー残念」

 なぜか痛まない腹部から、血染めの槍を力いっぱい抜いた。痛くないのに抜いた所からは血と腸がだくだくと流れ出る。
 腹部に白い魔法の光が定期的に発生し、回復される。
 どうやら能面の機械は恐ろしい力を持つ魔法使いでもあるらしい。

「敵は倒さないといけねーんだけどな」

 無駄だと分かっていながらも槍を相手に向ける。

 しかし、たかが高校生。

 漫画のかっこいい主人公みたいにまっすぐ槍先を向けることは重すぎて出来ない。


 生きたいと足掻くのにまったく希望が見えない。
 心がへたった。弱くなってしまう。もう嫌だ。嫌だ。嫌だ。

「ぐ……ふう、いいさ。俺はかっこいい主人公じゃなくていい。サブでも、雑魚でも、屑でも、何でも良いんだよ。俺をこんな目に合わせたやつら、愚かで汚い自己保身の塊たちも勝手に勇者でもやっていればいい」


 涙が溢れてくる。道理にかなっていない悪意がたまらなく嫌いだ。

 おかしいじゃないか。
 俺はただ起きて、学校に行って、ご飯を食べて、談笑するだけで良かったんだ。それが生きている事だった。

 弱音が漏れる。
「だからさあ…………死にたくない……」

「……キチッ?」

 死にたくない。生きていたいんだ。ただそれだけで良い。

 でも。依然と死は目の前で佇んでいる。

 抗わなければ何も得られない。
 覚悟は決まり、槍を引き摺りながら迫る。

「世界も……異世界も……てめえの都合で回してんじゃねえよ!!クソが!」

「セツナ回路、は、は、ハシレ──『雷明』」

 一歩踏み込んだ瞬間視界が真っ暗になる。目に違和感を感じながらも前方から訪れた衝撃波に揺られ背中から倒れる。

 色羽本人は確実に見ることは出来ないが、両目に短い鉄パイプが一本ずつ刺さっていた。残酷なことに能面はそれで即死しないようにあえて浅く眼球だけを攻撃していた。

 しかし調整が甘かったのか、命は尽きる。

「はっ、ッヅ! があ、い、ってえ。し、ってたぜ……くっ……そが」

 ズリッと両目から何かを引き抜く音を聞きながら、色羽の人生の幕は実に呆気なく閉じた。

 輝きを持っていた目は無くなり。空虚の暗闇が両目に存在していた。




































《なあ、お前さ、ぶっちゃけ死んでもワンチャンあるとか思った?》

「……」

《あー、無理無理。お前の存在は今限りなくゼロに近いから。喋れるなんて、生者の特権だ。幽霊以下の今のお前に意思表示なんて、出来ないから》

「……」

《まあ、感じとけや。でさ、お前の人生どうだった? 楽しかった? 面白かった? 充実してた?》

「……」

《そうだよな。ざまあないゴミみたいに何の生産性も無い、しょうも無い人生だったよな》

「……」

《生きるのが恥だと思わなかったのか? 普通はな、無駄な努力なんて止めるもんなんだよ。そもそもの無意味だって。皆、それに気づいて来世に期待して死んでいくんだよ。それをお前は最期の時まで抗って努力し続けた。見ていて可哀想だったぜ、本当》

「……」

《他の転生者達はこっちの世界に来るとき、新たな才能を貰い生きている。美貌と大いなる力だ。だがお前はそこそこの顔しか、ただ新しい体しか貰えなかった。有能はさらに力を貰えたが、無能は、結局無能だった》

「……」

《言わせて貰うが。お前はそんな有能の集団の足を引っ張るだけの只の無能だ。価値なんてこれっぽっちもないんだよ。害虫だ》

「……!」

《この世界に蘇生魔法なんていう便利な物は無い。死は絶対的な死のみだ。一度死んだらもう後戻りはない。で、お前は死んだ》

「……!」

《お前の周りは輝いているなあ。誰もが成功者だ》

「……!」

《…………………………うるせぇな》

「……!」

《さっきから「生きたい」「見返したい」「復讐したい」だとかさ。本当にうるさい。お前は終わったんだ。あの理不尽な世界に二度と行かなくていいんだ。もう痛まなくても、泣かなくても、虚しんだりしなくても良くなるんだぞ? それでも、生きたいのか?》

「……」

《……堅い。堅くて、強い意志だ》

《ぁぁ……まったくもって……いいね》

《僕の名前は『酷散華固リベンジャー』。この世界唯一の。酷い人生を終え、なお生きたいと強く願う者に幸福を願う者。君の努力を知り。君の優しさを知り。君を知っている者》

《僕は、案外と君の間抜けで優しい顔好きだし、実に単純な君の事が大好きだよ》

《君に与えられた。……世界から割り当てられたギフトが僕だったこと。謝るよ。きっと君は王道たる人生は送れない。けど。僕が発現したんだ。君は君のなすがままに生きろ。繰り返す、生きるんだ。それが願いだ。僕は君を愛する者! 君に……色羽に幸福が訪れるように!》










 ガチャリ……ガチャリ……ガチャリ……ガチ……………………………ガチャリ。

 能面の機械が黒い靄の中を無機質に徘徊している。

 たまに床に落ちているものを拾ってはそれに光線を当てたり、刃で刺したりする。

 気が済めばそれを放り投げ蜘蛛のような足で徘徊を再開する。



「う」

 無造作に動く能面の機械が電源を落としたように動きを止める。

 聴覚センサーで捕らえた音声を生命体であることを分析し、範囲を絞る。赤い瞳でその範囲を見渡すとゴミ溜めからぼろぼろの男がよろめきながら立ち上がった。

「……生命反応アリ。ピーピピ。エラー処理開始」

 嬉しそうにライトをちらつかせ、背中の収納庫からチェーンソーを三つ取り出し対象にゆっくり迫る。

 男、イロハは顔を上げ、迫る脅威に目もくれず胸を膨らませた。


「うっ、あ! あぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 それは産声。
 彼が生まれ変わった咆哮だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...