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真奈美編
研修助手のお姉さんとの思い出話 第二話
しばらく入り口で待っていると、
水野さんがやってきました。
「お待たせ。ごめんね、待たせちゃって。」
「いえいえ。どのみち今日はバイトもないんで、家に帰るだけですから。」
「バイトしてるんだ!」
「はい。一人暮らしなんで、バイトしないといけないんですよ。」
「えっ? 高校生だよね?」
「いろいろありまして……。まぁ、なので帰りは買い物して帰る感じです。」
「そうなんだ。ちなみに家はどこなの?」
「ここから4駅ぐらい行った〇〇駅の近くです。」
「あれ? 私の家もそのあたりだよ。」
「偶然ですね! じゃあ帰る方向も一緒ですね。駅までの道があやしかったのでありがたいです。」
「初めて来るところだもんね。じゃあ、行こうか。」
そんな話をしながら、駅に向かって歩き出した。
女性と並んで歩くことなど普段全くないので、
ただ駅に向かっているだけなのに、
心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
近くでよくよく見ると、
水野さんはとても顔が小さく、
眼鏡がよく似合う知的な美人。
こんな美人とちょっとの時間でも
一緒に過ごせるはなんとも幸運なことだ。
歩き始めるときに一人暮らしの話をしたこともあり、
「どういうこと?」事情を聞かれたので、簡単に事情を説明した。
通いたかった高校が実家からかなり遠かったこと。
両親といろいろあって同居し続けるのが難しくなっていたこと。
それを見かねた資産家の親戚が支援してくれたおかげで、
一人暮らしをしながら高校に通えていることなどなど。
普段、こんな身の上話は極力しないようにしているのだが、
なぜか今日は話したくなったのが不思議だった。
そんな身の上話を水野さんはうんうんと聞いてくれた。
本当にいい人だなぁと、なんだか温かい気持ちになった。
そうしてしばらく歩いていくと駅に到着した。
駅で電車に乗って数駅進む。
目的地は同じなので当然というべきか同じ駅で降りた。
そして駅の出口で別れの挨拶をしようとしたところ、
水野さんが「で、家はどっちなの?」と聞いてきた。
住んでいるアパートが駅から本当にすぐだったので、
数本先を右に曲がったところにある
3階建てのアパートだと告げると、
なんと水野さんも同じアパートに
住んでいることが判明した。
こんな偶然があるものなのかと、
少し怖くなるほど。
「なんかすごい偶然だね。ちなみに今日は帰りにお買い物って言ってたけど、自炊するの?」
「いえいえ、全然不得意なので、いつもお惣菜とかです。お米ぐらいは炊きますが。」
「それだとお金かからない?」
「幸い、支援してもらえているのでなんとかなるんですが……
頼りっぱなしも申し訳ないので、バイトしていつか返そうかなって感じで。」
「えらい!! すごいじゃない。それなら、今日はお姉さんがご飯作ってあげるよ。」
「いえいえ、そんな……今日会ったばかりの方に申し訳ないです。」
「いいじゃない。私がそうしてあげたいんだもん。迷惑?」
そう言って、じっと目を見つめられる
こんな綺麗な女性にそんな風に見つめられては、
高校生の男子が断れるはずがない。
「いえ。そういうことじゃないですけど……これでも男ですし……」
「かわいいなぁ。大丈夫だよ。何があっても私が誘ったってことで。」
「いえいえ、そういうことじゃ……」
「さて、じゃあそこのスーパーで買い物していこうか?」
「……はい」
そう言って水野さんはどんどん歩き出す
水野さんの後ろを必死について行った。
スーパーに入ると「何が食べたいの?」と聞かれたが、
実際特になかったため「得意なものをお願いします」と言ってみる。
そうすると水野さんがあれやこれやと食材を選んでいく。
あっという間に買い物が進んでいき、
気が付けばカゴはいっぱいになっていた。
そして、そのままレジへ向かう。
「あっ、それ払います。」
「いいのよ。幸い、私、お金には全く困らない環境だから。」
そう言ってそそくさと会計を済ませる水野さん。
なぜか少し寂しそうに見えたのは気のせいだったのだろうか?
しかし、してもらいっぱなしというわけにもいかない。
せめて荷物持ちくらいはと、
袋詰めされた重い袋を両手に持った。
「そういうのいいよ。やるから。」
「いえいえ。荷物運びくらいはさせてください。」
「ふぅ。ほんとこんなしっかりした高校生いるもんだねぇ。感心するよ。」
「そうなんですか? とにかく一人でなんでもやらないと生きてこれなかったので。
誰かに何かしてもらうって、なんかダメなんですよ。」
「なんかさらにすごい事情がありそうだけど……それじゃ荷物運びはお願いしちゃおうかな」
そんな会話をしながらスーパーから数分歩いていくと、
あっという間にアパートに到着する。
そして、水野さんの部屋に向かうことになったのだが、
なんと自分の部屋の隣だった。
「もう、怖いぐらいの偶然だね。」
「いや、こっちも同じ感想です。」
「もしかして何回か会ってるのかなぁ?」
「かもしれないですね。でも、基本学校へ行くのは早いですし、バイト終わりも遅いので。」
「なるほどねぇ……。まぁ、とりあえず入ってよ。」
こうして人生初の「女性の部屋に入る」という経験を、
図らずもすることになったのだった。
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