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エピソード3 新たなる取り組み
第三話 都合よく元に戻す
一度、渡辺渉という男性の部下に作り変えた元同僚の高坂美雪を、
一次的にとはいえ元の身体に戻しながら、俺に都合がよい人間に再度造りかえる。
俺の復讐のための欲望を全て叶えてくれるC2Sと共にサテライト研究室に向かっている。
普段の研究室から電車で駅を2つほど離れた場所にサテライト研究室はある。
あまり近くにすると、なにかこまった事態が起こった場合や、
全く別の実験をする際に集中できないなとあえて離れた場所を選んだというわけだ。
なお、駅から研究室に向かう道すがら
街の喧騒が俺へのファンファーレのように聞こえてくる。
全ては俺のために存在している。
ちょっと勘違いが入ってきていることは自覚しているが、
そのぐらいの気持ちでいないとC2Sを使いこなすことはできない。
あまりに巨大な力を秘めるC2Sに振り回されないよう、
自分の目的をしっかりと自分に言い聞かせる。
俺をバカにした人間すべてに復讐を完了させる。
これが今の俺の全てだ。
そんなことを考えながら歩いているとサテライト研究室に到着した。
研究室のインターフォンを押すと、渡辺くんの声が聞こえた。
しばらく待っているとドアが開いた。
「すみません。ちょうど作業が行き詰ってしまって。」
「いやいや、問題ないよ。それよりそういうときは一息つくのが一番だよ。久しぶりにきたことだし、出張の件も話したいから、私がコーヒーを入れてあげるよ。」
「先生、ありがとうございます。本当にいつもお気遣い感謝するばかりです。」
しかし、高木くんもそうだが渡辺くんも俺の想定どおりに仕上がっている。
これもC2Sの力あってこそだが、だからといって油断は禁物だ。
初めての取り組みには常にリスクが伴うものだ。
今回も慎重に事を進めていく。
サテライト研究室のキッチンでコーヒーを用意する。
渡辺くんにこの場所を任せるにあたっていろいろと意見を聞いて用意したのだが、
どうにも高坂美雪の思考が残っているかも?と感じるような、
なかなか値段が高いものを多く要望されたことをふと思い出した。
そんなことを思い出しながらコーヒーを用意して、
もちろん渡辺くんが飲むものには用意してきたAと書いてある
ピルケースに入っているC2Sを1つ溶かしていく。
そして、渡辺くんが待つ部屋までコーヒーを運び、
どうぞと言いながらテーブルに置く。
疑いもなく渡辺くんはコーヒーを口にする。
この状況で大げさにセンサーを配置することは不可能なのだが、
実は先日ここに来た際に部屋にあちこちに隠しセンサーを配置しておいたのだ。
そして、モニタリングについてはスマートフォンで確認できるようアプリも作っておいた。
最近の話をあれこれしたり、明日からの出張の内容などを話ながら
渡辺くんがコーヒーを飲み干したあたりで
スマートフォンの画面をちらりとみると、C2Sの浸透度が10%減っていた。
そう、今回は浸透しているC2Sを減らしていくプログラムなのでいつもと違う表示になるのだ。
なお、今回は状況的に急ぐ必要がないこと、
更に渡辺くんをキーワードで人形状態にする必要があるので、
その時間を稼ぐために浸透速度はかなりゆっくりに設定しておいたのだ。
C2Sの浸透度の現象が20%を超えたのを確認したところで、
そろそろいいかと渡辺くんとの会話の中で
さりげなくキーワードを織り交ぜてみる。」
「そうそう、渡辺くん、、、、昨夜はゆっくり眠れたかい?・・・いい夢は見れたかい?」
これは複合キーワードとして事前に設定しておいたものだ。
この言葉を聞いた渡辺くんは高木くんと同じように徐々に人形のように、
ただ椅子に座っているだけという状態になっていく。
目線が一点を見つめているような状態で意識がないような無表情になっていく。
よしよし、ここまでは計画通りだ。
そこからスマートフォンのモニタリング画面をみてみると、
C2Sの浸透度の減少は30%を超えていた。
そろそろ変化があってもいいころだなと渡辺くんを観察してると、
顔つきや体つきがだんだんと女性らしくなっていることが
離れて見ていてもわかるようになってくる。
そのまま浸透度の減少が50%を超えると、変化は大きくなってくる。
体つきはすっかり女性らしくなり、顔つきも高坂の顔に近づいてきた。
胸も徐々に大きくなりはじめているのが遠目でもわかる。
腰が細くなっていき、お尻のボリュームも増しているように見える。
浸透度が80%を超える頃には、
見た目的にはほぼ高坂美雪その人というところまできた。
男性の服をきている高坂美雪というのは
自分がそうなった時のことを少し思い出す。
そのまま待っていると浸透度が90%に達してそれ以上減らなくなった。
これもプログラムのとおりだ。
今回残るC2Sの10%が今回俺にとって都合のよい女にするために
必要なC2Sとして効果を発揮する設定だからだ。
俺が高坂美雪になる時とは違い、本来の高坂美雪に戻し切らず、
記憶と認識の一部だけ俺の都合がよい形に上書きをしたいという意図なので、
俺が高坂美雪になるときとは違い一粒のC2Sで実行できたというわけだ。
こうして渡辺くんをすっかり高坂美雪へと見た目としては戻すことに成功した。
あとは残してあるウェイクアップワードで
想定どおりに覚醒してくれれば今回の治験も大成功というわけだ。
こういう初めての取り組みの答え合わせは何度やっても冷や冷やするものだ。
しかし、服装が男性もののままでは高坂として覚醒したときに
違和感を覚える可能性もあるので、
持ってきた高坂の下着や服を人形に着せるように着せていく。
改めて触れる高坂の身体は自分がなってみたときも感じたがやはり素晴らしい。
胸の感触や肌の感触、くびれた腰回りなど男がほおっておかない要素が詰まっている。
しかし、いまはそれを楽しんでいる時間ではない。
高坂の身体を男として楽しませてもらうのは後ほどだなと
自分を納得させて必死に着替えを終わらせた。
そして、今は高坂美雪にもどっている渡辺くんの耳元でウェイクアップワードをささやく。
「人形の時間は終わりだよ。」
その言葉を聞いた高坂はうーんと背伸びをするように両手を挙げる。
そして、こちらを見て、俺を認識するとこう言った。
「あら?こっちにきてたの? 言ってくれたら迎えに行ったのに♪」
そう言いながら俺に抱き着いてきた。
よし、今回の治験も大成功だ。
「ごめんごめん。今回は急にこっちにくることになってね。」
「いいのよ。会いにきてくれただけで嬉しいから。それで今日はどんな用事なの?」
「ああ、ほら、そろそろ結婚の挨拶をって話してたじゃないか? ご実家への挨拶、今週末でしょ?その確認だよ。」
「うん♪ そうだったね。 ほんとすぐでも結婚したいからね!」
今日に至るまでに高坂の実家には、
俺が高坂に成りすましているときに結婚したい人がいる
という話をすでにしてあるのだ。
その話を聞いた高坂の母親はそれはそれは喜んでいた。
そして、今週末に挨拶にいくことになっている。
こちらの両親はすでに他界していることもこうなると都合がよいものだ。
なお、俺が高坂として行ったことは全て今回のプログラムに組み込んである。
今後に同じような形で高坂美雪を再現する場合には、
C2Sを使って記憶を補足する必要もあるなとふと考えてみた。
目の前にいる高坂美雪は俺が知っている高坂美雪ではないが、
見た目的には完璧に再現することができた。
我ながら隙のない仕事をしたなと何とも言えない満足感を感じていた。
こうして、今回もC2Sは想定どおりに高坂美雪を都合の良い女として再現してくれた。
しかし、ここからが本番だなと気を引き締めるのだった。
こうして計画は順調に進んでいくのだった。
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