紅月

life

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紅月 2日目

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コンコンコン…
「…?誰かしら」

?「あの…あけてくれませんか」

「朝に寝起きの女性と会うなんて、デリカシーあるの?」

「ごめんなさい。でも今しか話せなくて」

「はぁ…どうぞ」

たくま「ありがとう!人狼さん」

「なっ…なんで」

たくま「まったくだめだぞ?僕がカマかけてるかもしれないのにそんな反応」

「っ…」

「冗談だよ笑。僕は狂信者。君と早見さんが人狼だって知ってる。」

人狼が誰なのか2人とも正確に当ててる…
このタイミングなのだとすれば信用出来る、か。

「これからよろしくね?人狼さん!僕、人狼陣営だし一緒に頑張ろうね!」



「ところで今日の話し合いはどうするの?」
そう彼はにやにやと言う。どこか恐ろしさのある表情だ。まるで同い年とは思えない

「占い師を名乗るわ。、れんくんを白にする。」

「お兄ちゃんを?ありがたいなぁ、じゃまたねー」



「なんというか、恐ろしいというか…」

どうやら、せなさんも同じ事をされたらしい。
まったくセクハラで訴えてもいいのでは無いだろうか


町田「なに、これ」

「どうしたの?」

「わわっ、青柳さん…。」

「あら驚かせたならごめんなさい。」

「え、えとね、冷蔵庫の中身を見てたんだ」

「美味しくなさそうね…」

「う、うん…」

そういいつつ彼は食パンに手をのばす。
お腹がすいたのだろう。

私も牛乳と焼きそばパンを手に取る。

相模「あっ、2人ともおはよう!それ冷蔵庫のやつ?」

「そうよ。」

「あんま美味しくなさそうだね…」

「そ、そうね」

隣で食パンを口に入れ固まっている町田くんを見る。とても美味しくなさそうだ。

私の食べている焼きそばパンもカチカチでとても美味しいとはいえない。牛乳も少し腐ったような匂いがする。

相模「ぼ、ぼくはやめとくよ」

それから少しづつ人が集まり、各々何か食べたり飲んだり、また食欲を我慢して水だけ飲んだりし始めた。



そして、誰が襲撃されたかに気づく。

相模「あれ、けいかさんは?」

早見「あれ…」

れん「襲撃されたの、藤原さんなんだね…。早見さん友達なんだよね…大丈夫?」

早見「そ、そんな…!けいかちゃん……!」

そういい彼女は階段をかけ上って藤原さんの部屋に走る。
昨日藤原さんを殺したのは、ほんとうにあの早見さんなのだろうか……

あれが演技なのだとしたら、…
背筋が凍ったような気がした。


みんなが早見さんについて行って藤原さんの部屋についた。

その中は、何も無かった。ベッドも、机も、着替えも。


『襲撃された部屋は綺麗に掃除され、片付けられます。もちろん殺された方の遺体も処分されますよ。』

「きゃっ」
思わず叫んでしまった。廊下の奥からあの男が歩いてきている。

早見「そんな…」
相模「遺体もない…のか」


たくま「でも良かったじゃん!遺体を見たらもっと悲しくなるよ?」

「…」










町田こうたは所謂陰キャである。人と話すのは苦手で、話しかけるのも気が引ける。それはこのゲームの参加中もおなじだ。

「はぁ…」
やっぱり部屋の中って落ち着くなぁ。自分だけの空間っていうか。

コンコンコン
「わっ…」
せっかく眠りにつけそうだったのに、僕なんかに誰が?

たくま「やぁ」

「黒田…たくまくん」

「部屋に入れてよ!」

「わ、わかった」
僕はおどおどしながら言う。初めて話す人とはいつもこうだ。

「僕達、共有者、だよね?」

「う、うん」
そう、彼と僕はお互いが村人陣営であることが分かる共有者だ。

「これで僕達はお互い白って証明できるね」

「じ、じゃあ僕達は人狼じゃないって他の人に言う?」

「んーん、その必要は無いよ。まだ疑われるから、ね」

「そ、っかわかった…」

「じゃぁねぇー」

「へっ、も、もういくの?もっと話し合うこととか、」

「きみ、他の人と話すの苦手でしょ?」

「っ」
痛いところをつかれてしまう。

「僕も君と話してて楽しくないし…今日はばいばいしようか!」

「う、うん」

そう言い残しかれはそそくさと部屋を出ていった。
やっぱり僕には魅力がないし、一緒にいて楽しくないんだ。彼にとって僕は一緒に戦う仲間であり、友達になることもないんだろうな…

僕には一生友達があの二人以外出来ない、のかな
でもその友達も…

僕はまた、闇に呑まれる。結局1人が1番だ。僕はいつも寝ている、孤独を忘れるために。









館じゅうに鐘の音が響く。午後8時を知らせる音だ。あと10分で処刑する人を投票して実際に処刑をしなくてはいけない。

青柳「みんな集まったわね。話し合いを初めていいかしら」

相模「そうだね、始めよう。時間が無いから急ごうか、まずはぼ」

「わたし、昨日占いをしたわ、れんくんが白。それだけよ。」

「ぼ、僕を?ていうか占い師そんなすぐに名乗っていいの?危ないよ…」

「大丈夫よ。ボディガードに守って貰えるわ。誰かわからないけど、私をまもってちょうだい。」

「なるほどね。ボディガードは誰かわからないし、青柳さんを守ればい」

「ち、ちょっとまってよ」
相模くんが慌てて口を開いた。
おそらく彼が本当の占い師だ。どうにかしないと、

「ぼ、ぼくが本当の占い師だよ!青柳さんは嘘をついてる。昨日青柳さんの占いをしたら人狼だったんだ」

「えぇ?何を言っているの私が占い師よ?というか私が黒って言うあたり怪しさ満点よ」

「だって、だって君を占ってそう出たんだ…」

早見「相模くん、朝けいかちゃんが殺されて真っ先に私の事心配してくれたのに…
そっか、そうなんだ

…貴方がやったんだね……?私の友達を」

背筋がぞっとする。藤原さんを殺したのは彼女だ。なのに、彼女からは相模さんを憎んでいる心が浮き出ている…

なんて演技力だ…そして恐ろしい。

「ち、ちがうよ。本当に僕が占い師なんだ!」

たくま「へぇ?なんでそんなに慌ててるの」

「それは…っ」

良かった。たくまくんも約束通り私たちの仲間でいてくれている。
これで相模くんを処刑できれば、あと残りの村人はれんくんと町田くんだ。片方を襲撃すれば人狼陣営の勝利になる。
なんだ、簡単なゲームじゃない。

時間が迫り、投票が行われる。
もちろん処刑は相模くんだ。

嫌がる彼を抑えてもらい、箱の中のピストルを取る。

私は、引き金をひいた。躊躇なく。
自分でも躊躇の無さに驚いた。
このゲームで自分がだんだんと壊れていくのがわかった。


パンッ……カラン









私は自分の部屋で、2日目のたくまくんの去り際の言葉を思い出す。

「もし…お兄ちゃんを、僕の大切な…お兄ちゃんを殺すようなことがあったら……わかるよね?人狼さん」

「っ…。善処します…」

「……………善処…?」

彼の雰囲気が変わる。間違った答えを言ったら殺される…そのような雰囲気だった

全身の毛穴から汗が吹き出る感覚だった

「れんくんは襲撃しません…」

ニコッと彼は笑った。不気味な笑みで笑った。

「うん!」






町田くんを殺せば人狼陣営と、村人陣営の数が同数になって私たちの勝利だ。

そう、町田さんを殺せばいい…
















この時、私は気づかなかった。
気づけなかった。どうして…なぜ…









その夜、私とせなさんはたくまくんに言われた通り、れんくんではなく町田くんを襲った。




襲うはずだった








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