婚約破棄されてイラッときたから、目についた男に婚約申し込んだら、幼馴染だった件

ユウキ

文字の大きさ
27 / 59

先制ですわっ

しおりを挟む
「お嬢様……ご無理はなさらずに」


顔をこわばらせた私に、シェリが微笑を浮かべて首を横に振る。


「申し訳ございません、お嬢様の入信の件は一旦考えさせていただきます」


私に代わってシスター・オハラに向かって丁寧に頭を下げたシェリは、すっかり気が萎んでしまった私を引き連れて、家路に着く馬車へと乗り込んだ。


「ど、努力すればなんとか」

「お嬢様、努力の方向はそちらで宜しいのでしょうか?」

「だって…」

「昔は色々あったかもしれませんが、今はもうお互い成人でございましょう?見目も地位も財産も申し分ない次期辺境伯様。嫁ぐに問題ございますか?私は勿論ついていきますよ?」

「そうよね。あちらも栄えているし、色々とやり甲斐は有りそうだしね」


問題は私の気持ち一つと分かっている。邪険にされた記憶がいつまでもこびり付いていて、自然と伏せてしまう目のせいで、目の前に立つオーウェンを視界から外してしまう。

シェリは今のオーウェンをちゃんと見なさいと言っているのは分かる。

分かってはいるけれどーー!!って奴なのよっ!


私はそんなどうしようもない心境を抱えたまま、家に帰り着いてしまったのだった。



家に着くと、ここ最近見慣れた他所の家の馬車が停まっているのが見える。ディモアール辺境伯家の家紋の入った高級そうな黒塗りで、臙脂色の縁飾りが渋かっこいい馬車。


オーウェンが来ている。

逃げ出したい気持ちを抑えて家に入ると、丁度お話が終わったところだったのか、オーウェンがお父様と2人で柔かに会話を交わしながら、私が佇む玄関ホールへと歩み寄ってくる。


「アデレイズ嬢」

「ん、帰ったかアデレイズ。ちょうど良い、折角だから少しはオーウェンと話でもしなさい」

「お父様っ」


余計な一言をっとお父様に物申す前に、スッと視線を遮るように立ち塞がり、目の前に出されたオーウェンの手に、渋々手を重ねた。




ゆっくりと歩き、私の自室へと向かう。その間にシェリと使用人達が、色々と準備をしてくれるだろう。


「今日は何方へ?」


エスコートをしながら声をかけるオーウェンに、私は今日の修道院を思い起こす。

世俗を一切捨てた清貧の生活。できるかしら……いや待って、入信しても見極め期間に出れば?でもどれくらい入ればいいのかしら。兎に角、諦めるまで入るってことも有りよね??

瞬時にそう考えた私は、オーウェンににっこりと微笑みを向ける。


「神様の花嫁になる為に、修道院へ」



ふふん、聞いて驚き、泣いて悔しがりなさいっ!
しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

【完結】チャンス到来! 返品不可だから義妹予定の方は最後までお世話宜しく

との
恋愛
予約半年待ちなど当たり前の人気が続いている高級レストランのラ・ぺルーズにどうしても行きたいと駄々を捏ねたのは、伯爵家令嬢アーシェ・ローゼンタールの十年来の婚約者で伯爵家二男デイビッド・キャンストル。 誕生日プレゼントだけ屋敷に届けろってど〜ゆ〜ことかなあ⋯⋯と思いつつレストランの予約を父親に譲ってその日はのんびりしていると、見たことのない美少女を連れてデイビッドが乗り込んできた。 「人が苦労して予約した店に義妹予定の子と行ったってどういうこと? しかも、おじさんが再婚するとか知らないし」 それがはじまりで⋯⋯豪放磊落と言えば聞こえはいいけれど、やんちゃ小僧がそのまま大人になったような祖父達のせいであちこちにできていた歪みからとんでもない事態に発展していく。 「マジかぁ! これもワシのせいじゃとは思わなんだ」 「⋯⋯わしが噂を補強しとった?」 「はい、間違いないですね」 最強の両親に守られて何の不安もなく婚約破棄してきます。 追伸⋯⋯最弱王が誰かは諸説あるかもですね。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 約7万字で完結確約、筆者的には短編の括りかなあと。 R15は念の為・・

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

処理中です...