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先制ですわっ
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「お嬢様……ご無理はなさらずに」
顔をこわばらせた私に、シェリが微笑を浮かべて首を横に振る。
「申し訳ございません、お嬢様の入信の件は一旦考えさせていただきます」
私に代わってシスター・オハラに向かって丁寧に頭を下げたシェリは、すっかり気が萎んでしまった私を引き連れて、家路に着く馬車へと乗り込んだ。
「ど、努力すればなんとか」
「お嬢様、努力の方向はそちらで宜しいのでしょうか?」
「だって…」
「昔は色々あったかもしれませんが、今はもうお互い成人でございましょう?見目も地位も財産も申し分ない次期辺境伯様。嫁ぐに問題ございますか?私は勿論ついていきますよ?」
「そうよね。あちらも栄えているし、色々とやり甲斐は有りそうだしね」
問題は私の気持ち一つと分かっている。邪険にされた記憶がいつまでもこびり付いていて、自然と伏せてしまう目のせいで、目の前に立つオーウェンを視界から外してしまう。
シェリは今のオーウェンをちゃんと見なさいと言っているのは分かる。
分かってはいるけれどーー!!って奴なのよっ!
私はそんなどうしようもない心境を抱えたまま、家に帰り着いてしまったのだった。
家に着くと、ここ最近見慣れた他所の家の馬車が停まっているのが見える。ディモアール辺境伯家の家紋の入った高級そうな黒塗りで、臙脂色の縁飾りが渋かっこいい馬車。
オーウェンが来ている。
逃げ出したい気持ちを抑えて家に入ると、丁度お話が終わったところだったのか、オーウェンがお父様と2人で柔かに会話を交わしながら、私が佇む玄関ホールへと歩み寄ってくる。
「アデレイズ嬢」
「ん、帰ったかアデレイズ。ちょうど良い、折角だから少しはオーウェンと話でもしなさい」
「お父様っ」
余計な一言をっとお父様に物申す前に、スッと視線を遮るように立ち塞がり、目の前に出されたオーウェンの手に、渋々手を重ねた。
ゆっくりと歩き、私の自室へと向かう。その間にシェリと使用人達が、色々と準備をしてくれるだろう。
「今日は何方へ?」
エスコートをしながら声をかけるオーウェンに、私は今日の修道院を思い起こす。
世俗を一切捨てた清貧の生活。できるかしら……いや待って、入信しても見極め期間に出れば?でもどれくらい入ればいいのかしら。兎に角、諦めるまで入るってことも有りよね??
瞬時にそう考えた私は、オーウェンににっこりと微笑みを向ける。
「神様の花嫁になる為に、修道院へ」
ふふん、聞いて驚き、泣いて悔しがりなさいっ!
顔をこわばらせた私に、シェリが微笑を浮かべて首を横に振る。
「申し訳ございません、お嬢様の入信の件は一旦考えさせていただきます」
私に代わってシスター・オハラに向かって丁寧に頭を下げたシェリは、すっかり気が萎んでしまった私を引き連れて、家路に着く馬車へと乗り込んだ。
「ど、努力すればなんとか」
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「だって…」
「昔は色々あったかもしれませんが、今はもうお互い成人でございましょう?見目も地位も財産も申し分ない次期辺境伯様。嫁ぐに問題ございますか?私は勿論ついていきますよ?」
「そうよね。あちらも栄えているし、色々とやり甲斐は有りそうだしね」
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分かってはいるけれどーー!!って奴なのよっ!
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家に着くと、ここ最近見慣れた他所の家の馬車が停まっているのが見える。ディモアール辺境伯家の家紋の入った高級そうな黒塗りで、臙脂色の縁飾りが渋かっこいい馬車。
オーウェンが来ている。
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「アデレイズ嬢」
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「お父様っ」
余計な一言をっとお父様に物申す前に、スッと視線を遮るように立ち塞がり、目の前に出されたオーウェンの手に、渋々手を重ねた。
ゆっくりと歩き、私の自室へと向かう。その間にシェリと使用人達が、色々と準備をしてくれるだろう。
「今日は何方へ?」
エスコートをしながら声をかけるオーウェンに、私は今日の修道院を思い起こす。
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ふふん、聞いて驚き、泣いて悔しがりなさいっ!
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