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追撃がやみませんわ
「アデレイズ、それだけで満足してしまうのか?」
「えっ」
オーウェンは、フォークをケーキの乗ったお皿に置くと、テーブルの上に置いたチーズケーキが入っていた箱に目を向けた。
「実は特別に、その幻の三種のチーズケーキに合うマヌカハニーのカラメルソースを用意してくれてね」
「な、なんですっっっって」
クスリと笑みを零したオーウェンは、その箱の中から小瓶を取り出して、手の中で転がすように弄ぶ。
「チーズと蜂蜜って合うと思わないか?」
「最っっ高に合うと思いますわっ!」
チーズと蜂蜜なんて鉄板な組み合わせにカラメルを入れるとは何事なのかしら?!
「あぁ……じゃぁもう修道院の件は、いいね?」
「ぁっ……………ぃゃ、その………」
「黒スグリのソースも追加しようか?」
「っあぁそんな……」
甘いソースも、酸味の効いたソースも捨てがたく、でも神様の花嫁が私の意識を微かに引き止める。
清貧の生活っっ清く正しく俗世と離れた、何にも煩わせられない、生か……つ……
まさに頭の中では、天使と悪魔の大戦争が起こっていた。
「そんなに好きなら、両方かけて味わったらどうだ?ほら……」
「そっっっそんな背徳的なっっ」
コレは最高?至高?!最早天界の食べ物なのではないかしら?!ぁえ?どっちが勝ったらいいんだっけ?あぁ、考える間も無く、マヌカハニーのカラメルソースがトロ~リと細い筋を描きながら瓶の口から垂らされて……一層輝きを増して、香ばしくも甘やかな香りを放つ。
「遠慮する事はない……で、どうするんだアデレイズ?」
「はぇっ、なにが……」
にっこり微笑むオーウェンの手には、黒スグリのソースが入った小瓶がいつに間にか握られていて、目の前で蓋をキュポンっと抜いて、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。
「神の花嫁……もう諦めるんだよな?」
「ぅぐぅっっ!」
「じゃなきゃコレは……残念だけれど、俺が味わって……」
そう言って少しだけ黒スグリのソースを垂らしたオーウェンは、またフォークでチーズケーキを切り、ソースをたっぷりと絡めて持ち上げる。
ゆっくりゆっくりとそのフォークはオーウェンの口に近づいて行き……
「あー~~!あっっ!!!!諦めますわっっ!!」
誘惑に撃沈した私は、涙目になりながらもながら、頬を緩ませて至高のチーズケーキをまぐまぐと食んでいた。
お、おいひーーーーーぃぃぃぃ
大好物のそれは、何故か後味に敗北の香りがしましたわ。
────────
★一方廊下で待機中のシェリ視点
いつでも飛び込める様に、扉近くで待機しているのですが。漏れ聞こえる声が……ちょっと不穏です。
「あっあぁ!」
「……待ってっ」
「あっそんなっっっ」
オーウェン様のお声はハッキリとは聞こえないのですが、お嬢様のその様なお声は漏れ聞こえます。
これ、は……飛び込んで制止させるべきなのでしょうかっ。
でも、不埒な事でも何でもなかったら?主人の邪魔をした、部を弁えない使用人となってしまいます。
いやでも、いっそ既成事実があれば、お嬢様もお諦めに……
余計な考えが頭をよぎり、小さく頭を振って考えを振り払います。
目の端で少し離れた位置にいる侍女仲間が、どうしたのかと伺っているのが見えました。
それを「何でもありません」と小声で言い、1つお願いをしました。
お嬢様、ご安心くださいませ。
シェリはいつでも蒸しタオルの準備をして、待機しております。
「えっ」
オーウェンは、フォークをケーキの乗ったお皿に置くと、テーブルの上に置いたチーズケーキが入っていた箱に目を向けた。
「実は特別に、その幻の三種のチーズケーキに合うマヌカハニーのカラメルソースを用意してくれてね」
「な、なんですっっっって」
クスリと笑みを零したオーウェンは、その箱の中から小瓶を取り出して、手の中で転がすように弄ぶ。
「チーズと蜂蜜って合うと思わないか?」
「最っっ高に合うと思いますわっ!」
チーズと蜂蜜なんて鉄板な組み合わせにカラメルを入れるとは何事なのかしら?!
「あぁ……じゃぁもう修道院の件は、いいね?」
「ぁっ……………ぃゃ、その………」
「黒スグリのソースも追加しようか?」
「っあぁそんな……」
甘いソースも、酸味の効いたソースも捨てがたく、でも神様の花嫁が私の意識を微かに引き止める。
清貧の生活っっ清く正しく俗世と離れた、何にも煩わせられない、生か……つ……
まさに頭の中では、天使と悪魔の大戦争が起こっていた。
「そんなに好きなら、両方かけて味わったらどうだ?ほら……」
「そっっっそんな背徳的なっっ」
コレは最高?至高?!最早天界の食べ物なのではないかしら?!ぁえ?どっちが勝ったらいいんだっけ?あぁ、考える間も無く、マヌカハニーのカラメルソースがトロ~リと細い筋を描きながら瓶の口から垂らされて……一層輝きを増して、香ばしくも甘やかな香りを放つ。
「遠慮する事はない……で、どうするんだアデレイズ?」
「はぇっ、なにが……」
にっこり微笑むオーウェンの手には、黒スグリのソースが入った小瓶がいつに間にか握られていて、目の前で蓋をキュポンっと抜いて、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。
「神の花嫁……もう諦めるんだよな?」
「ぅぐぅっっ!」
「じゃなきゃコレは……残念だけれど、俺が味わって……」
そう言って少しだけ黒スグリのソースを垂らしたオーウェンは、またフォークでチーズケーキを切り、ソースをたっぷりと絡めて持ち上げる。
ゆっくりゆっくりとそのフォークはオーウェンの口に近づいて行き……
「あー~~!あっっ!!!!諦めますわっっ!!」
誘惑に撃沈した私は、涙目になりながらもながら、頬を緩ませて至高のチーズケーキをまぐまぐと食んでいた。
お、おいひーーーーーぃぃぃぃ
大好物のそれは、何故か後味に敗北の香りがしましたわ。
────────
★一方廊下で待機中のシェリ視点
いつでも飛び込める様に、扉近くで待機しているのですが。漏れ聞こえる声が……ちょっと不穏です。
「あっあぁ!」
「……待ってっ」
「あっそんなっっっ」
オーウェン様のお声はハッキリとは聞こえないのですが、お嬢様のその様なお声は漏れ聞こえます。
これ、は……飛び込んで制止させるべきなのでしょうかっ。
でも、不埒な事でも何でもなかったら?主人の邪魔をした、部を弁えない使用人となってしまいます。
いやでも、いっそ既成事実があれば、お嬢様もお諦めに……
余計な考えが頭をよぎり、小さく頭を振って考えを振り払います。
目の端で少し離れた位置にいる侍女仲間が、どうしたのかと伺っているのが見えました。
それを「何でもありません」と小声で言い、1つお願いをしました。
お嬢様、ご安心くださいませ。
シェリはいつでも蒸しタオルの準備をして、待機しております。
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