上 下
24 / 63

24.

しおりを挟む
夜会はとても盛大で。

会場内はひしめき合う貴族達の熱気で、外は雪が降っているにもかかわらず壇上にいると逆上せそうなくらいだった。

挨拶の後、壇上に備えられた席へと座り高位貴族から順に挨拶を受ける。面白いのは皆一様に2度見する事だろうか。
遠くで見るよりも断然美しい容貌に惚けて挨拶の言葉が抜ける者までいた程だった。

そりゃ国一番の美貌が物語上の設定だから仕方ないのよねぇと、頬に手を当てて困った様に微笑んでみせた。


そうこうしているうちに侯爵家の番になり、ユイマール家当主夫妻である両親と兄、そして兄が礼をする。いつもならもう少し後なのだが、今回はクリスティーナの事もあって先へと譲られたのだろう。


「変な噂が流れてましたから心配でしたが、大丈夫そうで安心しましたよ」


そう言ったのは、クリスティーナの父。敬語を使われる事に少しの寂しさを感じたが、要するに「何かやらかしたと思ったんだけど問題なさそうで安心した」と言いたいのだろうと察する。


「ユイマール侯爵の皆様、ご安心くださいませ。腰を据えて取り組もうと鋭意努力中ですの。少しのやっかみを頂いてしまいましたが、可愛いものですわ」


声を押さえてそう答えれば、「程々になさいませ」とだけ返事が返り、丁寧な礼をしてから早々に次の家へと場所を明け渡した。



次に挨拶に現れたのはローズアイル侯爵家。
本日のお客様中でクリスティーナがチェックしておきたい相手でもある。何故なら


「ローズアイル侯爵、見事な祝いの品感謝する。詳しく話を聞きたいものだ」
「お喜びいただき恐悦至極でございます。あれの開発には息子ロマーノが」
「そうか、ロマーノ後で詳しく話を。……次期侯爵婦人も息災そうで何よりだ」

「お久しぶりでございますわ。ご結婚、心よりお喜び申し上げます」


ローズアイル侯爵家嫡男ロマーノと結婚した女性、エリザベスは元サンザイト公爵令嬢であり、話し合いの末に解消された元祖アシェリードの婚約者エリザベートであるからだ。


「私も後ほど、次期侯爵夫人とお話ししたいですわ」


クリスティーナは王妃の立場から、サンザイト公爵家とローズアイル侯爵家の気持ちを探っていきたいところである。表情には出さずにやや緊張しながら答えを待つと、彼女はにっこりと微笑みクリスティーナを真っ直ぐに見て了承の返事を返す。一瞬キラリと目が光った気がしたのは気のせいかしら?と内心で首を傾げはしたが。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】堕ちた令嬢

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:335

呪われた伯爵と令嬢の秘密

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:244

目が覚めました 〜奪われた婚約者はきっぱりと捨てました〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:610pt お気に入り:5,360

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,307pt お気に入り:1,552

処理中です...