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昨日の未来
一日目
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「秋衣ちゃん。秋衣ちゃん、起きてる? おーい、秋衣ちゃ…」
「寝てたわよっ、今度は何?!」
まさかまた、ワニなんて拾ってきてないでしょうね。
心の中で半ば自棄気味に呟きながら、秋衣は戸を開けた。そして次の瞬間、絶句する。
闇の中に、天使がいた。
昼から降り出した雨は霧雨に変わっているが、霧夜はそれに濡れながら帰ってきたのか、ただでさえ艶のある髪が、絹のようなつやめきを見せている。
そろそろ二十になろうかという年齢の霧夜は、少々童顔ではあるが恵まれた容姿だ。それにも関わらず、身なりには全くと言っていいほどに頓着しない。髪は邪魔になってきたら切るだけで、服も、あるものを気温に合わせて着込むだけ。
今も、助手として働く医院で、ぼろぼろになって使わなくなった白衣を上着として羽織っている。
秋衣はいつも、それでいいのかと言いたくなる。言ったところで、返事はわかりきっているのだが。
それはいつものことで、とりあえずそこまではいい。
注目すべきは、霧夜の背中で、金髪の少女が眠っているところだろう。十に届くかどうかという年齢が、余計に天使めいて見える。
霧夜のみすぼらしい格好も気にならないほどに絵にでもなりそうな二人に、秋衣は言葉を失っていた。
美少女と美少年の組み合わせに、妬むよりも呆れる。
容姿にそう劣等感のあるわけではない秋衣だが、霧夜と比較するのは間違っていると思うし、この少女とも、比べようなどと思わない。
しかし、今問題になるのはそんなことではない。正直なところ、少女が美女であっても、ふたと見られないような不美人でも、嬰児でも、問題は同じだ。
「…………まさか。その子まで、拾ったなんて、言わないわよね?」
曖昧な笑顔で佇む霧夜に、秋衣は、盛大に溜息をついて見せた。
「寝てたわよっ、今度は何?!」
まさかまた、ワニなんて拾ってきてないでしょうね。
心の中で半ば自棄気味に呟きながら、秋衣は戸を開けた。そして次の瞬間、絶句する。
闇の中に、天使がいた。
昼から降り出した雨は霧雨に変わっているが、霧夜はそれに濡れながら帰ってきたのか、ただでさえ艶のある髪が、絹のようなつやめきを見せている。
そろそろ二十になろうかという年齢の霧夜は、少々童顔ではあるが恵まれた容姿だ。それにも関わらず、身なりには全くと言っていいほどに頓着しない。髪は邪魔になってきたら切るだけで、服も、あるものを気温に合わせて着込むだけ。
今も、助手として働く医院で、ぼろぼろになって使わなくなった白衣を上着として羽織っている。
秋衣はいつも、それでいいのかと言いたくなる。言ったところで、返事はわかりきっているのだが。
それはいつものことで、とりあえずそこまではいい。
注目すべきは、霧夜の背中で、金髪の少女が眠っているところだろう。十に届くかどうかという年齢が、余計に天使めいて見える。
霧夜のみすぼらしい格好も気にならないほどに絵にでもなりそうな二人に、秋衣は言葉を失っていた。
美少女と美少年の組み合わせに、妬むよりも呆れる。
容姿にそう劣等感のあるわけではない秋衣だが、霧夜と比較するのは間違っていると思うし、この少女とも、比べようなどと思わない。
しかし、今問題になるのはそんなことではない。正直なところ、少女が美女であっても、ふたと見られないような不美人でも、嬰児でも、問題は同じだ。
「…………まさか。その子まで、拾ったなんて、言わないわよね?」
曖昧な笑顔で佇む霧夜に、秋衣は、盛大に溜息をついて見せた。
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