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閑話
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ここは、街から数里離れた辺境の森。
相当な物好きですら近寄らないその場所を、白銀の甲冑を纏った者たちが木々を掻き分けながら進んでいた。
その中で一際目立つ金髪の男が、やる気なさそうに周囲を見渡しながらため息をつく。
「なんで俺がこんな場所を調査せにゃならんのだ。部下だけで十分だろ。俺にだって溜まった仕事があるってのに……」
ぼやきながらも、視線だけはしっかりと周囲を走らせている。
そこへ、別の甲冑姿が駆け寄ってきた。
「──オルカ団長。あちらにそれらしき痕跡が」
「あぁ、ご苦労さん」
団長と呼ばれた金髪の男――オルカは、早速報告のあった方角へ向かった。
(謎の爆発音……そしてその痕跡、か。多忙を極める団長がなぜ駆り出されたのか謎だったが……なるほどな)
その場所に辿り着いた彼は、思わず呟いた。
「これは……酷い」
荒々しく倒された木々の数は、数える気にもならないほど。
地面は歩けないほど抉られ、その距離はおおよそ三十メートルにも及んでいる。
先ほどまで調査していた部下の一人が、団長に気づくと駆け寄ってきた。
「お疲れ様です、オルカ団長。まだ全ては確認できていませんが、状況から見て魔物の仕業の可能性が高いかと」
「魔物……か。本当にそう思うか?」
「状況からして、ほぼ間違いないでしょう。もし仮にこれが人間によるものだとすれば――魔力すら使わず、素の力だけでこの惨状を引き起こしたことになります」
「うーん……まぁ、やっぱそうだよなぁ……」
「これほどの災害級の力を持つ魔物は脅威です。街から離れているとはいえ、迅速に討伐すべきかと」
「討伐か。俺らだけで勝てると思うか?」
「申し訳ございません……不確定要素が多く、なんとも……」
「ま、そうだよな。わかった。引き続き調査を進めてくれ」
部下はその場を離れ、再び調査へと戻っていく。
悪夢のような光景全体を見渡しながら、オルカは考える。
(確かに、魔力が感じられない……。これほどの規模なら、魔力の残滓も一週間程度では消えないはずだ。だから魔物の仕業と考えるのが普通だが――これだけの力を持つ魔物にしては、被害が小規模すぎる。明らかに、知性がある行動だ)
これほどの魔物はそうそういない。
知性のない魔物であれば、もっと至る所に同じような痕跡があってもおかしくないはずだ。
だが約半日かけて探索して見つかったのは、ここだけ。
つまり、無闇に暴れる魔物ではなく――知性を持つ存在。
「はぁ……でも、魔力が薄いこの森にこんな馬鹿みたいに強い魔物って生まれるか? 別の場所から来たって言っても、こんなことができる魔物は、この周辺どころか国全体を探してもいないだろうな」
ぼそぼそと呟きながら歩いていたオルカは、ふと疑問がよぎった。
これが魔物の仕業なら、足跡は?
確かに時間が経てば消えるものだが、この規模である。
ある程度の大きさがある魔物と見るのが普通だろう。
であれば、その体重によって足跡は強く残る。
特にこの抉られた地面であれば、それは顕著に出るはずだ。
しかし――そんな痕跡はパッと見では見当たらない。
(いや……わかりにくいが、あるな)
抉れた地面にかすかに残った足跡のようなもの。
時間が経ったせいで土が被り、一般の目には見えないが――オルカの目には、見えていた。
「靴でもない……これは裸足だ。ゴブリンにしては小さい。人間の大人でもない。となると――人間の子どもによる足跡。不規則な間隔から見ても、相当な手負いかそれに等しい疲労。点状の跡から、杖をついていることが予想できる」
それはオルカだからこそ気づけた、ほんのわずかな証拠。
足跡は途中で途絶えており、人間の子どもがこの惨劇から逃げ切れたとは思えない。
オルカは辺りを見渡し、手が空いていそうな者を探す。
ちょうど目が合った青髪の青年のもとへ、足を進めた。
「おい、そこの君。名前は……えぇ……ごめん、忘れた。なんだっけ」
「テムです、団長」
「あー、そうだそうだ。そのぶっきらぼうな感じ、お前はハムだな。今、手が空いてるか?」
「ハムではなくテムです。ちょうど今、手が空いたところですが……どうされましたか?」
「ちょっと聞きたいんだが、この森には確か小規模な集落があるんだよな?」
「はい。場所に関しては詳しく把握できていませんが……あるのは間違いありません」
「そうか。ありがとう、ペム」
「テムです」
オルカは顎に手を当て、しばらく考え込む。
顔を上げると、先ほどまでのおどけた表情を引き締め、真剣な眼差しで森の奥を見つめた。
その後、団員全員を招集したオルカは、顔を引き締めて声を張る。
「集落を見つけることが最優先事項だ。もし集落が無事であれば、住民全員を一時的に保護し、街へと避難させる。集落を見つけるまでは絶対に単独行動するな。最低でも四人で動け。些細なことでもいいから、何かあれば必ず共有しろ。以上」
厳格な面持ちで話を終えたオルカは、森の奥へと足を進めた。
団員たちもそれに続く。
(胸騒ぎがする……)
先頭を歩くオルカは、育ちつつある焦燥感を抑えながらため息をついた。
ここは、街から数里離れた辺境の森。
相当な物好きですら近寄らないその場所を、白銀の甲冑を纏った者たちが木々を掻き分けながら進んでいた。
その中で一際目立つ金髪の男が、やる気なさそうに周囲を見渡しながらため息をつく。
「なんで俺がこんな場所を調査せにゃならんのだ。部下だけで十分だろ。俺にだって溜まった仕事があるってのに……」
ぼやきながらも、視線だけはしっかりと周囲を走らせている。
そこへ、別の甲冑姿が駆け寄ってきた。
「──オルカ団長。あちらにそれらしき痕跡が」
「あぁ、ご苦労さん」
団長と呼ばれた金髪の男――オルカは、早速報告のあった方角へ向かった。
(謎の爆発音……そしてその痕跡、か。多忙を極める団長がなぜ駆り出されたのか謎だったが……なるほどな)
その場所に辿り着いた彼は、思わず呟いた。
「これは……酷い」
荒々しく倒された木々の数は、数える気にもならないほど。
地面は歩けないほど抉られ、その距離はおおよそ三十メートルにも及んでいる。
先ほどまで調査していた部下の一人が、団長に気づくと駆け寄ってきた。
「お疲れ様です、オルカ団長。まだ全ては確認できていませんが、状況から見て魔物の仕業の可能性が高いかと」
「魔物……か。本当にそう思うか?」
「状況からして、ほぼ間違いないでしょう。もし仮にこれが人間によるものだとすれば――魔力すら使わず、素の力だけでこの惨状を引き起こしたことになります」
「うーん……まぁ、やっぱそうだよなぁ……」
「これほどの災害級の力を持つ魔物は脅威です。街から離れているとはいえ、迅速に討伐すべきかと」
「討伐か。俺らだけで勝てると思うか?」
「申し訳ございません……不確定要素が多く、なんとも……」
「ま、そうだよな。わかった。引き続き調査を進めてくれ」
部下はその場を離れ、再び調査へと戻っていく。
悪夢のような光景全体を見渡しながら、オルカは考える。
(確かに、魔力が感じられない……。これほどの規模なら、魔力の残滓も一週間程度では消えないはずだ。だから魔物の仕業と考えるのが普通だが――これだけの力を持つ魔物にしては、被害が小規模すぎる。明らかに、知性がある行動だ)
これほどの魔物はそうそういない。
知性のない魔物であれば、もっと至る所に同じような痕跡があってもおかしくないはずだ。
だが約半日かけて探索して見つかったのは、ここだけ。
つまり、無闇に暴れる魔物ではなく――知性を持つ存在。
「はぁ……でも、魔力が薄いこの森にこんな馬鹿みたいに強い魔物って生まれるか? 別の場所から来たって言っても、こんなことができる魔物は、この周辺どころか国全体を探してもいないだろうな」
ぼそぼそと呟きながら歩いていたオルカは、ふと疑問がよぎった。
これが魔物の仕業なら、足跡は?
確かに時間が経てば消えるものだが、この規模である。
ある程度の大きさがある魔物と見るのが普通だろう。
であれば、その体重によって足跡は強く残る。
特にこの抉られた地面であれば、それは顕著に出るはずだ。
しかし――そんな痕跡はパッと見では見当たらない。
(いや……わかりにくいが、あるな)
抉れた地面にかすかに残った足跡のようなもの。
時間が経ったせいで土が被り、一般の目には見えないが――オルカの目には、見えていた。
「靴でもない……これは裸足だ。ゴブリンにしては小さい。人間の大人でもない。となると――人間の子どもによる足跡。不規則な間隔から見ても、相当な手負いかそれに等しい疲労。点状の跡から、杖をついていることが予想できる」
それはオルカだからこそ気づけた、ほんのわずかな証拠。
足跡は途中で途絶えており、人間の子どもがこの惨劇から逃げ切れたとは思えない。
オルカは辺りを見渡し、手が空いていそうな者を探す。
ちょうど目が合った青髪の青年のもとへ、足を進めた。
「おい、そこの君。名前は……えぇ……ごめん、忘れた。なんだっけ」
「テムです、団長」
「あー、そうだそうだ。そのぶっきらぼうな感じ、お前はハムだな。今、手が空いてるか?」
「ハムではなくテムです。ちょうど今、手が空いたところですが……どうされましたか?」
「ちょっと聞きたいんだが、この森には確か小規模な集落があるんだよな?」
「はい。場所に関しては詳しく把握できていませんが……あるのは間違いありません」
「そうか。ありがとう、ペム」
「テムです」
オルカは顎に手を当て、しばらく考え込む。
顔を上げると、先ほどまでのおどけた表情を引き締め、真剣な眼差しで森の奥を見つめた。
その後、団員全員を招集したオルカは、顔を引き締めて声を張る。
「集落を見つけることが最優先事項だ。もし集落が無事であれば、住民全員を一時的に保護し、街へと避難させる。集落を見つけるまでは絶対に単独行動するな。最低でも四人で動け。些細なことでもいいから、何かあれば必ず共有しろ。以上」
厳格な面持ちで話を終えたオルカは、森の奥へと足を進めた。
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