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一章 初めての事故物件
一章 初めての事故物件 その6
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(配信が終わったら連絡してあげようっと)
央都也は無視を決め込むことにした。もう配信時間だ。
「こんばんは、美しすぎるユーチューバー、ミスターXです」
二十一時ジャストに、央都也はお決まりのちょっと痛い決めポーズと共に名乗り、配信をスタートさせた。
《こんばんはペケくん》
《髪結んでるのもカッコいい!》
一気にコメントが流れ出した。
《えっ、なにこの人。CG?》
《ありえないくらいイケメンなんだけど!》
「ありがとう。今日は事故物件目当てのご新規さんも多いんじゃないかな。早速、一緒に部屋を見てみようよ。ぼくも今日引っ越してきたばっかりなんだ」
央都也はカメラ代わりのスマートフォンに、営業スマイルを向ける。
玄関の正面には八畳ほどのダイニングキッチン。風呂やトイレがあって、ダイニングキッチンの隣りに六畳のフローリングの部屋がある。
央都也はあえて電気を暗めにして、スマートフォンを手持ちにしていた。あまり画面を揺らすのはよくないが、臨場感が演出できると考えた。
「寝室に使うしかないこのフローリングの部屋で、半年前に二十代後半の男性が首つり自殺をしたんだって」
今日で一番というほど、コメントが一気に流れた。
(ふふ、ウケてる)
央都也はコメントを見ながらほくそ笑んだ。
撮影用のスマートフォンとは別に、配信した画面が見えるように、もう一台スマートフォンを用意している。ちなみに、さらにサブのスマートフォンもある。商売道具なので、故障して動画をアップできないと困るのだ。
「首吊りをしたのは、このクローゼット」
央都也は外開きのドアを開けた。クローゼットには何も入っていない。
「ハンガーをかけるこのバーがあるでしょ。白くペンキが塗られているけど、ほら、ここ。ちょっと窪んでるよね。それにバーも、よく見たらここを中心に歪んでる。紐をかけた場所だよ」
これは大家にメールで聞いた情報なので、間違いない。
「バーに紐を結んで、ドアの上を通して、無理矢理ドアを閉めたみたい。だからドアの上の部分も傷があるんだ。今見せるね」
央都也は椅子にのって、ドアの上の部分を映す。擦ったような傷が残っていた。
「そしてドアから出した紐で首をくくったんだね。遺体は比較的早く見つかったみたいで、痛んでいなかったみたい」
《どうして死んじゃったんだろうね》
「さあ、遺書はなかったようだよ」
ガンッ。
その音に驚いて、央都也は振り返った。
《今のなに?》
《なんの音?》
《ラップ音?》
《誰かいるの?》
コメントが一気に流れる。
「ああ、ごめん。テーブルに置いていたスマホが床に落ちたみたい。ぼく以外、誰もいないよ」
《なんだぁ、脅かさないでよ》
《ペケくん、わざと?》
央都也は笑いながら椅子から降りてスマートフォンを拾った。幸い画面は割れていなかった。
(おかしいな、落ちるようなところに置いてたっけ)
首をかしげていると、ガチャガチャと大きな音がした。またチャットが高速で流れていく。
央都也は無視を決め込むことにした。もう配信時間だ。
「こんばんは、美しすぎるユーチューバー、ミスターXです」
二十一時ジャストに、央都也はお決まりのちょっと痛い決めポーズと共に名乗り、配信をスタートさせた。
《こんばんはペケくん》
《髪結んでるのもカッコいい!》
一気にコメントが流れ出した。
《えっ、なにこの人。CG?》
《ありえないくらいイケメンなんだけど!》
「ありがとう。今日は事故物件目当てのご新規さんも多いんじゃないかな。早速、一緒に部屋を見てみようよ。ぼくも今日引っ越してきたばっかりなんだ」
央都也はカメラ代わりのスマートフォンに、営業スマイルを向ける。
玄関の正面には八畳ほどのダイニングキッチン。風呂やトイレがあって、ダイニングキッチンの隣りに六畳のフローリングの部屋がある。
央都也はあえて電気を暗めにして、スマートフォンを手持ちにしていた。あまり画面を揺らすのはよくないが、臨場感が演出できると考えた。
「寝室に使うしかないこのフローリングの部屋で、半年前に二十代後半の男性が首つり自殺をしたんだって」
今日で一番というほど、コメントが一気に流れた。
(ふふ、ウケてる)
央都也はコメントを見ながらほくそ笑んだ。
撮影用のスマートフォンとは別に、配信した画面が見えるように、もう一台スマートフォンを用意している。ちなみに、さらにサブのスマートフォンもある。商売道具なので、故障して動画をアップできないと困るのだ。
「首吊りをしたのは、このクローゼット」
央都也は外開きのドアを開けた。クローゼットには何も入っていない。
「ハンガーをかけるこのバーがあるでしょ。白くペンキが塗られているけど、ほら、ここ。ちょっと窪んでるよね。それにバーも、よく見たらここを中心に歪んでる。紐をかけた場所だよ」
これは大家にメールで聞いた情報なので、間違いない。
「バーに紐を結んで、ドアの上を通して、無理矢理ドアを閉めたみたい。だからドアの上の部分も傷があるんだ。今見せるね」
央都也は椅子にのって、ドアの上の部分を映す。擦ったような傷が残っていた。
「そしてドアから出した紐で首をくくったんだね。遺体は比較的早く見つかったみたいで、痛んでいなかったみたい」
《どうして死んじゃったんだろうね》
「さあ、遺書はなかったようだよ」
ガンッ。
その音に驚いて、央都也は振り返った。
《今のなに?》
《なんの音?》
《ラップ音?》
《誰かいるの?》
コメントが一気に流れる。
「ああ、ごめん。テーブルに置いていたスマホが床に落ちたみたい。ぼく以外、誰もいないよ」
《なんだぁ、脅かさないでよ》
《ペケくん、わざと?》
央都也は笑いながら椅子から降りてスマートフォンを拾った。幸い画面は割れていなかった。
(おかしいな、落ちるようなところに置いてたっけ)
首をかしげていると、ガチャガチャと大きな音がした。またチャットが高速で流れていく。
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