美しすぎる引きこもりYouTuberは視聴者と謎解きを~訳あり物件で霊の未練を晴らします~

じゅん

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一章 初めての事故物件

一章 初めての事故物件 その16

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「やだ、まだ回さないでよ」
 央都也がスマートフォンのレンズを手で塞ごうとするのを、雄誠は避けた。

「おまえの勇姿を映しておこうと思ってな。生放送ではないんだから、いいじゃないか。動画で流したくなければ編集でカットすればいいだろ」
「そうなんだけどさ」

(ああもう、緊張して頭がまわらないよ)

「大丈夫だ、俺がいる」
 硬直している背中を、雄誠にぽんと叩かれた。
「……うん」
 少しだけ、心臓の鼓動が大人しくなってくれた。

 そして央都也はギリリと玄関を睨んだ。いつまでも突っ立っているわけにはいかない。半分自棄気味に、震える指で呼び鈴を押した。

 間をおいて、奥から足音と廊下が軋むような音が聞こえてきた。ドアが開くと、五十代後半の女性が現れる。一人暮らしをしていると言っていたので、彼女が洋平の母親だろう。
 洋平の母親は長身の二人を見上げると、目を丸くした。

「まあ、モデルさんみたい。やっぱり東京の人はあか抜けてるのね」
 温厚そうな洋平の母の雰囲気に、央都也は少し警戒を解いた。

 央都也たちは花とお土産を渡してあいさつし、家に上げてもらう。そして洋平の仏壇に手を合わせた。
 遺影に写っている男性は、央都也の部屋にいる霊と同じ顔だ。不思議な気分になる。
 央都也が持ってきた花とは別に、花瓶に新鮮な生花が供えられていた。

「この手紙を読んでください。洋平さん自身が書いたものです」

 電話でもいきさつを説明していたが、央都也は改めて母親に昨日のことを話した。

 本人が書いたと証拠になるかはわからないが、洋平が手紙を書く姿を撮影した動画をスマートフォンに表示させて母親に見せた。洋平の姿は映らないので、ペンが勝手に動いて筆記している。「これが洋平?」と母親は不思議そうに動画を眺めていた。

「この手紙の字は、あの子の字に似ているわね。にわかに信じがたいけれど、信じるしかなさそうね。この手紙の内容は美佐子さんの話と同じだもの」
 手紙を読み終えた母親の口から、思わぬ名前が飛び出した。

「美佐子さんって……」
 央都也は驚いた。洋平の話に出てきた、公園で会っていた女性の名前のはずだ。

「美佐子さんがうちに謝罪に来たの。洋平が死んだのは、自分のせいかもしれないって」
 どういうことだ。なぜ美佐子がこの家の場所を知っているのか。
「あら、そのことはご存じないのね」

 洋平の母親は、ちゃぶ台に置かれた温かいお茶に視線を落とした。ふくよかな体つきで、瞳は洋平と同じ黒目がちで優しそうだ。パーマをかけている髪は白髪が混じっている。

「四十九日が過ぎたころ、美佐子さんが一人でここにやってきたのよ」

 申し訳ございません。洋平さんが亡くなったのは、私のせいかもしれません。
 そう言って美佐子は頭を下げたという。

 洋平が美佐子と最後に会った日。二人が別れた後に美佐子は交通事故にあっていた。二週間ほど入院したのだが、初めの三日ほどは薬で意識が朦朧としていたらしい。

「また明日、と声をかけたことを美佐子さんは覚えていて、もしかして洋平が待っているかもしれないと思いがよぎったそうよ。だけど、もう三日も経っているし、洋平の連絡先も知らない。退院してから謝ればいいと考えたのね」

 しかし、洋平は振られたと勘違いをして自殺してしまった。

「いつもの場所に洋平が現れないこと、そして近所の若い男性が自殺したらしいという噂を聞いて、美佐子さんはまさかと思った。興信所に頼んで自殺した男性を調べたら、洋平だと判明した――。ショックだったそうよ。美佐子さんは、洋平との未来を前向きに考えていたそうだから。あの子は昔からそそっかしくて、すぐに思い詰めて……、バカなんだから」

 母親が目を潤ませた。

(振られたわけじゃなかったんだ……)

 二人は愛し合っていた。
 あの日、洋平が中途半端な告白をしていなければ。
 告白しても、逃げ出していなければ。
 美佐子が事故にあわず、翌日に会えていたら。
 二人は今頃、結ばれていたのだろう。
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