美しすぎる引きこもりYouTuberは視聴者と謎解きを~訳あり物件で霊の未練を晴らします~

じゅん

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二章 思い出の景色を探せ

二章 思い出の景色を探せ その6

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 祝杯ムードの中、雄誠が口を開いた。
「立石重蔵という名を、どこかで見たか聞いたかした気がするんだ」

 ――えっ、重蔵さんを?
 喜代が濡れた瞳を雄誠に向けた。

《確かに、どっかで見たことがある気がする》
《はいはい! 話題が落ち着いたら投下しようと思ってたんだよ!》
 一人の視聴者が名乗りを上げた。

《連投失礼。まずね、喜代さんの話をどこかで聞いた気がしたんだ。幼なじみとか、女学校を卒業したら結婚しようとか、海岸でのデートとか》

 チャットには「昔はよくある話だからじゃね?」「あっ、私もわかった」などの書き込みもされたが、基本的には連投している視聴者のコメントが終わるまで、書き込みが控えられている。

《そしたら、私の持ってる小説の内容にそっくりなの。その登場人物の名前が、立石重蔵と田村喜代》
《ええっ、そのままじゃん!》
《どういうことなの?》
 チャットが一気に流れた。それが落ち着いてから、再び情報の書き込みが始まる。

《この作者は普段は社会派の話を書いていたんだけど、この本だけ純愛なの。この小説では、二人それぞれが恋心を胸に秘めながら時代の紆余曲折を乗り越えて、晩年に再会をはたしてハッピーエンドになるんだ。あとがきには、これは願望の物語だって書いてある》
《この作者の本名が、立石重蔵なんだよ》
《本人なんだ!》
《生きて、作家になってたんだな》
 チャットがまた高速で流れていく。

《写真ないの?》
《本人は顔出ししてないけど、交換したっていう田村喜代さんの写真は公開してる。これこれ》

 貼られた写真には、十代のチャーミングな女性が写っていた。
 ――これは、若いころのわたしです。
 喜代は目頭を押さえてうつむいた。
 ――重蔵さん……。
 喜代は感極まったように声を震わせた。さまざまな思いが胸に押し寄せているのだろう。

《この作家は何年か前に亡くなってるけど、生涯独身だった》
《それって、この作者もずっと喜代さんのことを思っていたってことかな》
《それ以外ないよね》
《すっごい純愛》
《現実でも、小説みたいに再会できたらよかったのにね》

 喜代は両手を強く握り締めている。
 ――あの人はわたしにメッセージを送ってくれていたのですね。生前に気づかなかった自分に憤りすら感じます……。
 うつむいて表情は見えないが、膝のワンピースにいくつも涙が滴った。
 ――身体を失って魂だけが残り、正直なところ、わたしはどうしていいのかわからずにいました。この日のために、わたしはここに残ったのだと思います。みなさん、本当にありがとうございました。
 喜代は深々と頭を下げた。

《この作者はずっと港区に住んでたんだって! きっと喜代さんを待ってたんだよ》
《品川区じゃなくて?》
《品川駅は港区にあるだろ。そのあたりに実家があったんじゃないかな》
《この人、喜代さんの写真を肌身離さず持っていたみたいだよ》

 ――もうこれ以上、泣かせないでくださいな。
 喜代は涙を拭いなら微笑んだ。

 ――ああ、とても気持ちがいい。身体がどんどん軽くなる。
 言葉のとおり、元々透けていた喜代の身体が更に薄くなっていく。

 ――最後に、あなたにお願いがあります。
 喜代は雄誠に向かって言った。
 
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