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騎士団副団長✕料理当番の見習い騎士
登場人物紹介を兼ねた、はじまり
しおりを挟む「暑い…」
俺は顔の汗を袖で拭いながら、溜め息をついた。
俺は1番下っ端、見習い騎士のパルゥ。
この騎士団の詰め所の料理当番は、見習い騎士が交代で務めることになっている。
明日は見習い騎士が1人入隊することが決まっているため、俺の1年間の料理当番も今日が最終回なのだ。
俺は、コンロの右側にある大鍋をこれまた大きなお玉で混ぜる。
作っているのはシチュー。
ミルクが表面に薄い膜を張らないように、あまり放置してはいけないのだ。
コンロの左側では、ローストビーフ(もどき)を作っている。
この、牛に似た魔獣は毒素を内臓に持っており、仕留めたらすぐに取り出せば人体に影響は出ないのだ。
「あと少し火を入れれば仕上がるんだけどな。」
俺は、それから数分間だけもどきに火を入れると、蓋をしてコンロから下ろし、再び鍋を混ぜる。
「こちらのシチューもとろみがついてきた。これでパンが焼き上がれば、もう出来上がりだな。」
シチューの大鍋を火から下ろすと、右の壁沿いにある窯へ向かう。
鉄の扉から頬に感じる熱で中の温度を確認すると、ミトンを嵌めて扉を開く。
ボワァ…
薪の爆ぜる音と、パンの焼ける匂いがする。
長い竿のようなものを使って、パンを取り出すと、網の上に並べて冷ます。
あとは、冷めてからスライスして、パンにもどきや野菜を挟んだら出来上がりだ。
俺の、この1年の集大成だ。
1年前…俺に料理を教えてくれた、この騎士団の副団長の姿を思い出す。
すっかり傷んでしまった藁みたいな色の金髪に、空色の瞳。
金髪蒼眼のこの国の王族とは遠いながら親戚にあたる副団長のフェリオは、元貴族とは思えないほど生活能力の高い人だった。
芋の剥き方も、肉を美味しくする切り方も、ミルクの膜のことも…
教えてくれたのはフェリオだった。
いや、これでは料理のことしか教わっていないように思うな。
それだけじゃない。
副団長は、俺に…
匙の持ち方も、騎士団の1日のルーティンも、風呂の入り方も掃除の仕方も教えてくれた。
田舎では、山の上の方にある温泉に浸かる他は川で行水程度。その辺りに生えてる野菜や毟った木の実を口に入れる食事や、男衆が狩った巨大魚を焼いて食べていた。
そんな俺に、この王都の一般的な水準の平民の暮らしを教えてくれたのだ。
俺にとって副団長は、上司であり血の繋がらない兄貴であり師匠でもあった。
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