【完】悪役令嬢の復讐(改)全6話

325号室の住人

文字の大きさ
6 / 6

  旅立ち

しおりを挟む

目が覚めたらお陽様は既に高いところに居た。

屋根裏にある使用人部屋は既にお陽様からの熱で暑いほどだ。

僕の隣にフィッテは既に居ない。

階下から音がするので、僕は1度僕の部屋隣室で身形を整えると、階下へ下りてみた。

2階にある当主夫婦の寝室と1階から、何やら騒々しい音がする。

階段を更に下りようとして、上がってきたフィッテに止められた。

3階と2階の間から下を窺うと、王族の夜会用の盛装姿の王太子様が、夜会用の煌びやかなドレスを纏った赤みがかった金髪のご令嬢を軽々と横抱きにして階段を下りて行くところが見えた。

──あの色…僕の小道具だった

ご令嬢は未だお休み中なのか、瞼は下りている。
けれど、どこかで見た顔だと思っていたら、

「アレは第2王子に化けていた娼婦と平民の間に生まれた子だよ。
ただ、既に雌だから……体は男にしか…いや、王太子殿下にしか反応しないのだが………」

フィッテが教えてくれた。

昨日は、お嬢様のご友人方の代理人の方々によって雌化の魔法を施されていたのだそうな。

あの魔植物は、快楽を与えながら胎内を作り変えるものだそうだ。

雌化では妊娠はできない。
だから王太子の愛妾として城の塔の一室に幽閉されて余生を過ごすらしい。

浮気ばかりでお嬢様を蔑ろにしていた罰が雌化………

生きて暮らせるだけ幸せとも言えるのかもしれないけれど、少し複雑だ。


僕とフィッテは王太子殿下がエントランスを抜けてから、この別館の正面玄関の扉の前に出て、頭を下げてお見送りさせて頂いた。






お嬢様からは、別館のモノはご友人方に差し上げ、残りの荷物は売り払って、
『シュカル達がこちらに来る時の旅の資金にしなさい。』
そう言われている。

僕達はその処理が終わると、そのまた翌日にはお嬢様を追って隣国へ出発した。

現在の王太子様よりも本来のこの国の王族の血が濃く流れているフィッテは、昨晩の王族達の歪んだ愛を目の当たりにして、現王族への復讐よりも早々に見捨てて隣国へ渡る方が得策だと、隣国行きを決めたそうだ。

僕としても双子の姉がこの度犯罪者になったので、同じ顔で出歩くのは危険だろうと、実家にも帰れなくなった。

何よりも、最愛の人と離れるのは嫌だった。



「シュカル、愛しています。」
「僕も愛してる…フィッテ。」

今日も道中の宿屋で、最愛の人からの愛を受ける。

馬も馬車もなく徒歩で移動している僕らは、隣国へ到着するまでにあと何回宿屋に泊まるのか………

「僕、こんな生活してたら淫乱になっちゃう。」
「どんどんなってください。ただし、相手は私だけですよ。」

今から隣国での新生活が楽しみで仕方ない。


      おしまい
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

王太子が護衛に組み敷かれるのは日常

ミクリ21 (新)
BL
王太子が護衛に抱かれる話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。 しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。 殿下には何か思いがあるようで。 《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。 登場人物、設定は全く違います。

処理中です...