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旅立ち
しおりを挟む目が覚めたらお陽様は既に高いところに居た。
屋根裏にある使用人部屋は既にお陽様からの熱で暑いほどだ。
僕の隣にフィッテは既に居ない。
階下から音がするので、僕は1度僕の部屋で身形を整えると、階下へ下りてみた。
2階にある当主夫婦の寝室と1階から、何やら騒々しい音がする。
階段を更に下りようとして、上がってきたフィッテに止められた。
3階と2階の間から下を窺うと、王族の夜会用の盛装姿の王太子様が、夜会用の煌びやかなドレスを纏った赤みがかった金髪のご令嬢を軽々と横抱きにして階段を下りて行くところが見えた。
──あの色…僕の小道具だったかつら?
ご令嬢は未だお休み中なのか、瞼は下りている。
けれど、どこかで見た顔だと思っていたら、
「アレは第2王子に化けていた娼婦と平民の間に生まれた子だよ。
ただ、既に雌だから……体は男にしか…いや、王太子殿下にしか反応しないのだが………」
フィッテが教えてくれた。
昨日は、お嬢様のご友人方の代理人の方々によって雌化の魔法を施されていたのだそうな。
あの魔植物は、快楽を与えながら胎内を作り変えるものだそうだ。
雌化では妊娠はできない。
だから王太子の愛妾として城の塔の一室に幽閉されて余生を過ごすらしい。
浮気ばかりでお嬢様を蔑ろにしていた罰が雌化………
生きて暮らせるだけ幸せとも言えるのかもしれないけれど、少し複雑だ。
僕とフィッテは王太子殿下がエントランスを抜けてから、この別館の正面玄関の扉の前に出て、頭を下げてお見送りさせて頂いた。
お嬢様からは、別館のモノはご友人方に差し上げ、残りの荷物は売り払って、
『シュカル達がこちらに来る時の旅の資金にしなさい。』
そう言われている。
僕達はその処理が終わると、そのまた翌日にはお嬢様を追って隣国へ出発した。
現在の王太子様よりも本来のこの国の王族の血が濃く流れているフィッテは、昨晩の王族達の歪んだ愛を目の当たりにして、現王族への復讐よりも早々に見捨てて隣国へ渡る方が得策だと、隣国行きを決めたそうだ。
僕としても双子の姉がこの度犯罪者になったので、同じ顔で出歩くのは危険だろうと、実家にも帰れなくなった。
何よりも、最愛の人と離れるのは嫌だった。
「シュカル、愛しています。」
「僕も愛してる…フィッテ。」
今日も道中の宿屋で、最愛の人からの愛を受ける。
馬も馬車もなく徒歩で移動している僕らは、隣国へ到着するまでにあと何回宿屋に泊まるのか………
「僕、こんな生活してたら淫乱になっちゃう。」
「どんどんなってください。ただし、相手は私だけですよ。」
今から隣国での新生活が楽しみで仕方ない。
おしまい
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