【完結】手紙

325号室の住人

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「エレーナ! 君とは婚約を解消したい。そして君の友人のマリーと婚約を結び直したいんだ!!」

その日、俺はとうとう婚約者に伝えた。


俺は子爵家の3男。
ありがたいことに成績優秀で、婿にと伯爵家であるエレーナとの婚約することができた。

が、幸せに過ごしていたのも数ヶ月だった。

エレーナは手を繋ぐだけでも真っ赤になってしまい、頬のキスやハグでさえ拒絶→失神してしまうのだ。
俺たちの仲は進展しないまま、婚約して半年が経過、婚姻までもあと半年となった王家の夜会にて、俺は、運命の出会いをしてしまった。

相手は、エレーナの友人でもある男爵家のマリーだ。

その夜会ではエレーナが急病で欠席してしまったため、俺は1人だった。
そこへ、エレーナとお喋りしようとやってきたマリーに声を掛けられ、その日は夜会が散会となるまでずっと楽しくお喋りをして過ごした。

翌日にも会う約束をして、そのまた翌日にも会った。
そしてその1週間後には頬にキスを、翌週にはハグを、そのまた翌週には膝枕をしてもらい、その翌月にはお泊まりデートをした。

あの夜の女神の如きマリーのことは、忘れることはできない。






「承知いたしました。でしたら、諸々の手続きも早い方が宜しいですわよね?
当主を呼んでまいりますわ。」

エレーナはそう言い残し、俺を客間に置いたまま退室し、そろそろ半刻となる。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。






「それで、エレーナとの婚約を解消したいと、君は言うのだね?」
「はい。」

俺は今、エレーナの兄である当主と対面で話していた。

「わかった。では、婚約の解消を認めよう。」
「ありがとうございます!
それから、こんなことになって、申し訳ありませんでした。」
「では、この手紙をお父上に渡してくれるだろうか。
婚約は、解消の場合は言い出した方が慰謝料を支払うことになっている。
その契約を元に計算した金額や、『確かに私が当主として2人の婚約の解消をみとめる』と、したためた。
君に託して構わないだろうか。」
「はい! わかりました。必ず父に渡します!!」

そうして俺は、伯爵家を後にした。

帰りの馬車にはマリーを待たせていて、馬車に乗るなりマリーを抱き締め、マリーの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

この大好きなマリーと2人、幸せな未来を歩んで行こう。

俺は、まだ見ぬ未来が順風満帆であると疑うことなどなく、実家への馬車の旅を愉しんだのだった。


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