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しおりを挟む「女になりたい!」
それが俺のただ一つの願いだったのに…
実家が太い常連のキャバ嬢に、初めてシャンパンタワーを入れてもらった誕生日(仮)、そのキャバ嬢とホテルで一戦交えた俺は、駅の階段の1番上から足を踏み外して落ちた。
そりゃあもう派手に、『蒲田行進曲』みたいに、上から下までダダダダダと落ちた。
ただ芝居と違ったのは、頭から落ちたってことと、初めての階段落ちだったってこと、俺が運動オンチだったってこと、サバ読んでて実は三十路だったこと、酔ってたってこと、恨みを買ってたこと…まぁいろいろあるだろう。
気付いたらどこを見ても白い場所にいた。
で、目の前には何故かさっきまで致してた親が太いキャバ嬢。
「は?」
「リュート、貴方ホントに顔だけよね。エッチは下手だし、余興のダンスも全然足が上がってないし…そりゃオーディションも落ちるわよ。あはは…」
「どうして」
「はぁ?もしかしてまだ事態が把握できてないの?貴方あれだけ派手に落ちといて?」
「そんな…なんで…?」
「貴方はね、見限られたの。地球の神からね。で、ハイコンになるかどうかのオーディションだった訳。」
「オーディション?」
「そう。他の世界の神は、上から覗いた時点で…いいえ。最初の書類選考でアウトだったわ。」
「書類選考?」
「ほらね。そういうおバカで物を知らないところ、年齢も誕生日もお客を欺いてるところ、客とシてるなんてルールを守らないところ、夢に立ち向かわずにすぐ諦めるところ…」
「……」
「でさ、アタシが最後の砦だった訳よ。貴方の顔は…顔だけは好みだったの。」
「顔…」
「でもダメね。ハイコンにすら反応しないし…」
「あの、ハイコンって?」
「ねぇ、わかってる? 最近は小学生だって知ってるわよ? こんな白い部屋見ただけで《異世界転生》でしょ?って。おバカね…」
「だからハイコンって…」
「ハイコン…《輪廻の輪に乗せずに、廃棄すべきしょーもない魂》の略。アタシが作った言葉だけど、だいたい生を終えてここに戻ってきた時には他の人は思い出すのよ。アタシの顔や《廃魂》の言葉を。貴方以外はね。」
「廃…魂……」
「でさ、ある意味合格よ。アタシの世界で引き取ってあげる。その顔のままでね。記憶も、残してあげてもいっか。貴方の知恵や知識なんてゴミ以下だもん。あっても世界の滅亡には繋がらないもんね、あはは。
でも赤ん坊からやり直させてあげる。それと…んー…さすがにフェアじゃないか。いいわ。生まれ変わるにあたって、1つだけ願いを叶えてあげる。何がいい?」
「女! 俺は、女になりたい! で、養われたい!」
「んー? まぁ良いわ。それじゃ、いってらっしゃあ~い!」
頭の中に響く声と会話する俺は、気付くと見知らぬ男女に見下ろされていた。
抱き上げられたり声を掛けられたり…
──そうか、コレが転生ってヤツか。
でも、次の瞬間には絶望する。
見知らぬ男女が部屋を出て行って俺が一人になったあと、尿意を催した俺が我慢できずにすると、噴水のようになって腹を濡らしたんだ。
「●♂☆\△¥□↑↑~!!!」
訳:男の体じゃねえか!!!
──俺は、たった一つの願いですら聞き届けてもらえなかったんだな…
俺は、あのキャバ嬢な神を恨んだ。
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