生まれ変わるなら、女になりたい 《終》

325号室の住人

文字の大きさ
1 / 7

しおりを挟む

「女になりたい!」

それが俺のただ一つの願いだったのに…



実家が太い常連のキャバ嬢に、初めてシャンパンタワーを入れてもらった誕生日(仮)、そのキャバ嬢とホテルで一戦交えた俺は、駅の階段の1番上から足を踏み外して落ちた。
そりゃあもう派手に、『蒲田行進曲』みたいに、上から下までダダダダダと落ちた。
ただ芝居と違ったのは、頭から落ちたってことと、初めての階段落ちだったってこと、俺が運動オンチだったってこと、サバ読んでて実は三十路だったこと、酔ってたってこと、恨みを買ってたこと…まぁいろいろあるだろう。

気付いたらどこを見ても白い場所にいた。

で、目の前には何故かさっきまで致してた親が太いキャバ嬢。

「は?」
「リュート、貴方ホントに顔だけよね。エッチは下手だし、余興のダンスも全然足が上がってないし…そりゃオーディションも落ちるわよ。あはは…」
「どうして」
「はぁ?もしかしてまだ事態が把握できてないの?貴方あれだけ派手に落ちといて?」
「そんな…なんで…?」
「貴方はね、見限られたの。地球の神からね。で、ハイコンになるかどうかのオーディションだった訳。」
「オーディション?」
「そう。他の世界の神は、上から覗いた時点で…いいえ。最初の書類選考でアウトだったわ。」
「書類選考?」
「ほらね。そういうおバカで物を知らないところ、年齢も誕生日もお客を欺いてるところ、客とシてるなんてルールを守らないところ、夢に立ち向かわずにすぐ諦めるところ…」
「……」
「でさ、アタシが最後の砦だった訳よ。貴方の顔は…顔だけは好みだったの。」
「顔…」
「でもダメね。ハイコンにすら反応しないし…」
「あの、ハイコンって?」
「ねぇ、わかってる? 最近は小学生だって知ってるわよ? こんな白い部屋見ただけで《異世界転生》でしょ?って。おバカね…」
「だからハイコンって…」
「ハイコン…《輪廻の輪に乗せずに、棄すべきしょーもない》の略。アタシが作った言葉だけど、だいたい生を終えてここに戻ってきた時には他の人は思い出すのよ。アタシの顔や《廃魂》の言葉を。貴方以外はね。」
「廃…魂……」
「でさ、ある意味合格よ。アタシの世界で引き取ってあげる。その顔のままでね。記憶も、残してあげてもいっか。貴方の知恵や知識なんてゴミ以下だもん。あっても世界の滅亡には繋がらないもんね、あはは。
でも赤ん坊からやり直させてあげる。それと…んー…さすがにフェアじゃないか。いいわ。生まれ変わるにあたって、1つだけ願いを叶えてあげる。何がいい?」
「女! 俺は、女になりたい! で、養われたい!」
「んー? まぁ良いわ。それじゃ、いってらっしゃあ~い!」

頭の中に響く声と会話する俺は、気付くと見知らぬ男女に見下ろされていた。

抱き上げられたり声を掛けられたり…

──そうか、コレが転生ってヤツか。

でも、次の瞬間には絶望する。
見知らぬ男女が部屋を出て行って俺が一人になったあと、尿意を催した俺が我慢できずにすると、噴水のようになって腹を濡らしたんだ。

「●♂☆\△¥□↑↑~!!!」
訳:男の体じゃねえか!!!

──俺は、たった一つの願いですら聞き届けてもらえなかったんだな…

俺は、あのキャバ嬢な神を恨んだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

兄弟フラストレーション

石月煤子
BL
■おおらか兄×意地っ張り弟=近親BL■ 「やだ。なんで遠く行っちゃうの、お兄ちゃん」 「ごめんな。でもゴールデンウィークには帰ってくるから」 「やだっ」 小さい頃は兄にべったりだった弟だが。 「広海、夏休みはどこも遊びに行かないのか?」 「おれ、受験あるし。勉強しないと」 「高校最後の夏休み、楽しまないともったいないぞ」 「……課題やらないと」 高校三年生になった弟は八歳年上の兄に対してすっかり塩対応に。 でも、本当は。 (……向こうで、三人目の彼女、できた?) 聞きたいことはたくさんあった。 答えを永遠に知りたくない気もした。 ■表紙イラストは[ジュエルセイバーFREE]様のフリーコンテンツを利用しています http://www.jewel-s.jp/

大きい男

恩陀ドラック
BL
 転移した異世界は大きい男ばかりだった。  この作品はフィクションです。登場する人物・団体・出来事等はすべて架空のものであり、現実とは一切関係ありません。©恩陀ドラック

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

処理中です...