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しおりを挟むアンリは、自分が投げ飛ばして気を失った、自分の婚約者の寝顔を見ながら、先程までの会話を思い出していた。
「婚約者…ポーライルがですか?」
「そうだ。」
好きな人の父親の返答に、アンリは頬が緩む。
元々好きあっていた2人であったが、お互いに婚約者候補が居るとして、進展しないままになっていたのだ。
「嬉しい! 父上、私はポーライル…さんと、正式に婚約…いいえ。婚姻したいです!!」
アンリは、多少ふらつきながらもソファから立ち上がると、父に詰め寄るかのように言った。
「わかった。わかったから! 認める! 認めてやるから!」
「やったわ! お父様ありがとう!!」
アンリは思わず父に抱き着いてしまった。
すると、それを見て目を細めていた将来の義父である《セイド国の悪魔》も、
「わかった。それではポーライルが目覚めたら、正式に書類が交わせるよう準備をするか。コリンよ、行くぞ。」
父は渋々といった表情で頷く。
「あぁ、アンリさん。ポーライルは本邸の自室に運ばせた。
ウチの者に案内させるから。」
父と将来の義父は、連れ立って行ってしまった。
将来の義父は満面と言える笑み、父は苦笑いと対象的だった。
アンリは、自分の婚約者の寝顔を寝台の傍らに掛けて眺める。
「ポーラ…ごめん………」
アンリはボソリと呟き、ポーライルの右手を両手で掴む。
その手を自分の額に当てると……
アンリの両手の中、ポーラの指先がピクッと動いたような気がした。
「ポー…」
顔を上げたアンリが全てを言い終わらないうちに、急に伸ばされたポーライルの手が首の後ろに回ると、あっという間に組み敷かれてしまった。
ポーライルがすぐ上から見つめている。
アンリはとても恥ずかしく、頬が朱に染まる。
「アンリ…良かった。」
ポーライルはゆっくりと瞼を下ろしながら、アンリに覆い被さると、アンリの額に触れるだけのキスを落とした。
アンリは目を閉じるタイミングを外してしまい、ポーライルの顔が離れてゆっくりと瞼が上がるその時までを見てしまった。
ポーライルはとても色っぽかった。
しばらく見つめ合うと、ポーライルはアンリの隣へと寝転ぶと、アンリの方を体ごと見た。
「アンリ……私は決めたよ。
婚約者候補の女性にはきちんと断りの手紙を書くことにする。」
「は?」
「私にはアンリだけだ。
先程、君の鼓動が聞こえないと、君がこの世界から旅立ってしまったと思った時、私は実感したのだ。
アンリの居ない世界なんて、虚無だと。
だから!
アンリ……誰が反対したとしても、君と添い遂げたい。
頼む、アンリ。私と婚姻を結んでくれ。」
「宜しくお願いします。」
アンリはすぐに返答をした。
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