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しおりを挟む──うわぁ完全に腰が引けてる…
そらそうだよな。まさかこんなに狭い部屋に、母ちゃんと俺、弟3人に妹4人、暮らしているとは思わないだろ?
「「「「「「「兄ちゃん、おかえり!!」」」」」」」
合計7人の大合唱を受けたジャンは、足を止めた。
1番上の弟が学園入学直前の14歳で、その下の弟が12、11と続き、妹は1番上が10歳で年子で4人。
女子は、本当にかしましいやね。
1番下が7歳だけど、よく喋る。
だから最近では、貴族の独居老人のサロンに女子4人で行っては、内職の縫い物しながらお茶飲んで、お菓子食べて、たまに小遣い貰って帰ってくる。
弟のうち12歳と11歳は、その時間は図書館と、教会でお昼を食べながら孤児院で文字を教えて小遣い稼いでる。
学園入学直前の14歳は、家で集中して自習か、母ちゃんがうるさい時は図書館に行ってる。
母ちゃんは朝帰ってきて、夕方俺が帰ってくるまで寝てる。で、入れ替わりに出勤っつーパターンが多い。
あ、話が逸れたのは、ジャンが未だにフリーズしてるからだ。
「ジャン?」
──反応ねぇなぁ。
もちっとかかりそうなんで、もうちょっと回想。
ちなみに俺は転生者だ。
よく、転生したヤツとかが、貴族に生まれ変わって…とか言ってるけどさ。
俺だって思ったわ。こんな貧乏あるか!って。
外出着は2枚をローテーションだし、食べるものも住むところも、こんなん初めての体験だわ。
男が好きなのも初めてで……
っつーか、『好きだ!』があっての『男?!』だから、驚いた。
けど、こんな股のゆるい母と暮らしてれば、反面教師っつーの? どんどん女への嫌悪感は増してった。
だから、仕方ねぇよな?
ジャンのことは、顔が好みだ。
俺より小さいのもかわいい。
でも、隣のクラスのお貴族様だから、あんまり見られない。
だから、今日は本当に驚いた。
ジャンが近くを歩いてる!
ジャンが名前を呼んでくれた!
ジャンを背負った!
服越しだけど太腿に触れた!
ジャンと会話した!
今日は、妄想も捗りそうだ。
「ん? 父の匂いがする。」
ジャンとの妄想でアレやコレをしてたら、ジャンが解凍されたようだ。
「は?」
俺は、窓や玄関、裏口を開いてジャンに確認させてやるけれど、親父さんは居なかった。
首を傾げるジャンもかわいいなんて考えていると、ジャンが匂いを嗅ぎながら俺の方へ来る。
少し身構えると、
「やっぱり。父と同じ匂いです。」
「それは、俺からだけが?」
すると、ジャンは弟妹たちの頭を次々嗅いで行く。
メシ前でちゃぶ台に勢揃いだから、嗅ぎやすそうだ。
「はい。やっぱりティルからだけ。やっぱり父と関係が……?」
「ハァまぁいいや。あ、ジャン、お前、門限とかって?」
「それなら、手紙を飛ばしました。『夜になります』って。」
「え…お前んち……」
「はい。我が家は下位ですから、商業地区のすぐ内側ですよ。東側の。」
「ハァ? おまっココ西地区だぜ!!」
俺は、我が家・我が家族で唯一の時計を見る。
「わーった。送ってやるからその辺座っとけ。」
俺は、食事の準備に風呂代わりの湯浴びの準備、寝床作りを超特急で終わらせると、ジャンのところへ向かった。
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