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僕の異世界居候生活
しおりを挟む「申し訳ありませんでした!」
ソーマはガバリと頭を下げた。
それを合図によみがえる先程の記憶に、僕の顔は瞬間的に赤くなる。
ここは浴室ではない。ベッドに戻ってきている。
ただその前と違うのは、お互いが肌触りの良いバスローブに身を包んでいる点だろう。
「はぁ~……」
僕は、目の前のソーマに自分の体質や神に説明された内容を話し、逆にソーマからも、この世界や自分自身についての説明を受ける。
まずこの国、ジュマール王国について。
神の話した呪術を得て生まれてくるという話の他に、呪術の影響でこの国に女やらメスと呼ばれる人間が極端に少ないことを知らされた。
そのため、現在この国のメスの自給率は日本で言う小麦ととんとんで、国産のメスの殆どを王家と神殿とで消費しているそうだ。
神殿の女神の神託で選ばれた男のみが神殿でメスを孕ませられる。
ちなみに、メスを孕ませることが解呪に繋がるのだそうな。
他にも、解呪済みの男同士で番ったメス役に《孕ませの種》を授ける(飲めば男でも孕める)というのも神殿の仕事らしいが、解呪に手間取れば孕める年齢には限界もあるため、年々出生率が下がっているらしい。なるほど国の滅亡の危機だ。
ソーマは、代々魔法関係の仕事を生業とする公爵家の第二子で、わりと強めの呪術持ちだった。
現在わかっているだけでも、泣くこと、笑うこと、味わうこと、愛慾含め様々な欲求、生殖機能もろもろ、素手で素肌に触れること、それから魔力を動力源に魔法を使うことを、呪術により封じられていたらしいとのこと。
それが、まだ魔力や魔法については試していないけれど、概ね解呪されているそうだ。
……って僕! どんだけイかされたんだよ。
ソーマの実家は現在兄が継ぎ、隣国から嫁を貰って後継も得て何の心配もないそうなので、ソーマは兄の婚姻以降、開業医のようなことをしていた亡くなった祖父の使っていた別邸に住み始めたそうだ。
立地としては、裏口近くの塀に来客用の出入口が向いていて、その反対側が使用人棟を挟んで母屋である公爵家本邸へと続いている。
そこで日中は、気が向いた時だけ薬師のような薬草師のような調香師のような育種家のようなことを職業にしているらしい。
そのため、一般的な人間の活動時間とは少しズレた生活をしているそうで、昨夜も人に会うことのない深夜に庭を散歩していたそうな。
普段は自ら世話をする薔薇園へ向かうはずが、昨晩はどういう訳だか足が僕の出現場所に向いてしまったらしい。
そして霧の中に僕を認識し、《どうしても身体を重ねたい》と感じた途端、理性が飛んだのだと言う。
一度イかせた以降は、僕からとても良い匂いがするらしい。
その匂いを感じ取ると、ソーマの場合はムラムラして理性が飛び、その度、僕に突っ込んでいるのだそう。
──マジか!
僕は苦笑いののち、疑いの半眼を向ける。
だって、僕には自分では特に何も感じないのだ。ただ、求められると力が抜けてしまうだけで…
いくら、番うカップルの殆どが男同士だから男相手に違和感ないとは言え、そのままアオカンなんてご遠慮したかったのだが…
僕のイキ声を聞いて理性の欠片を取り戻したソーマも、それで慌てて自宅へ運び、僕の匂いに理性を飛ばしてはイキ声で理性を取り戻ししながら、気を失った僕を相手にまたベッドで朝までシて…。
「ケイをもう離したくない。
とりあえず、この世界に慣れるまででも良い。一緒に暮らそう。」
ソーマの申し出は正直嬉しい。
けれど、僕には心配事があった。
「あの…やっぱり毎晩朝まで致さないと、満足できないのか?」
ソーマに問えば、ソーマは少しだけ上目遣いにして僕を見てくる。
──ダメですか?って顔してる…
無芸大食で居ることは避けたい。
けれど先立つものは何もない。
となれば…やはり恩返しの一環として、毎晩くらいは身体を許すべきだろうかという気になってくる。
「わかった。付き合うよ。」
「ケイ、ありがとう!!」
こうして、僕の異世界居候生活が始まった。
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