15 / 50
闇堕ちのダヴィ
しおりを挟む「じゃあ、ケイ。明日の朝、迎えに来るよ。」
ソーマはそう言い残すと、煙のように消えた。
正確には、キラキラとした光の粒を纏った煙だ。
ソーマの転移魔法は、発動するとこんな光の粒を纏うらしい。
「…………」
「…………」
とりあえず、僕とダヴィさんは共通の知人であるソーマを失い、沈黙した。
窓の外はもうとっぷりと日が暮れて陽光は望めない薄暗い部屋の中、それでも目立つダヴィさんの目の下の隈に、僕の視線は釘付けだ。
「あの…神子?」
「はい。ケイと申します。」
「………………」
再び沈黙。
「なぜ……交わりとは? 」
「実は……」
僕は、僕が神から得た解呪の力について話した。
ダヴィさんはそれを、ただ頷くだけで静かに聞いていた。
「……という訳で、僕に挿入して貴方が果てると、貴方の呪が解呪されるのです。」
「挿入? 果てる?」
僕が頷けば、
「挿入…? とは?」
「え…そこから?」
僕はどう説明したものかと想像してはソーマとのあれこれを思い出してしまい、顔に熱が集まってしまった。
「どうした、神子殿。体調が優れないのか?」
「…………ダイ……」
「何と?」
ダヴィさんは僕に向かって数歩足を進めると、僕の肩に手を触れ、顔を覗き込むようにした。
薄暗いのもあって、ダヴィさんの顔は思いの外近くまで来た。
ダヴィさんの手が僕の額に触れ…僕は気付く。
この手は、あの時の手だと。
噴水のところでウトウトした時の……
ダヴィさんは心配そうな表情で、反対側の手を自分の額に当てていたのだが、
「ふむ。熱がある訳では無さそうだな。」
ダヴィさんの手が離れるその瞬間、僕は思わず彼の手を掴んだ。
「神子殿?」
戸惑うダヴィさんの蒼の瞳が僕を見る。
僕は何も言えなくなって一瞬俯き、でも何か言わなければと顔を上げると口を開いた。
「あの……一緒にお風呂に入りませんか?」
それからどこをどうなったのか、僕は気付くとダヴィさんに手を引かれて薄暗い廊下をランタンの小さな灯りだけを頼りに歩いていた。
ダヴィさんが右の扉を入ると、中は湿気でじめっとしている。
ダヴィさんは手早く履き物や服を脱ぐ。
目の下の隈と相まって勝手に痩せた体を想像していたけれど、ダヴィさんはソーマよりもガッシリとした筋肉を身に纏っていた。
僕がボーッと彼の裸を見ていた視線に気付いたようで、振り返る。
「あぁ、幼い頃から好きだった剣術だけは、今でも鍛錬を欠かさないのです。
ただ、師も敵さえも眠りにつく時間に体を動かすから、自己流なのですが。」
ダヴィさんはニヤッと笑って……
「では、お先に。」
長い髪をくるくると頭の上でまとめると、廊下とは反対側の扉を開いてそちらへ消えた。
僕も慌てて服などを脱いでダヴィさんを追う。
扉の向こうは星空の下、源泉かけ流しの岩風呂だった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる