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お義兄様

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『ぃやあああぁぁぁーーーーーー!!!』


本邸の廊下を、ソーマと二人で歩く。
義兄様の寝室へ向かう道すがら、何人もの侍従達が、それに何人もの下男達が、ルフネさん達のような状態で情事の真っ最中だった。

中には、揃いの指輪の指を絡めながらシている者もいて、正式に夫婦になっている者達も多数居ることが見て取れる。

その者達全てに魔法を掛けて眠らせながら歩くソーマの左腕にしがみつき、時折ソーマの左肩に額をつけながら、義兄様の寝室を目指している。


『ひああぁぁぁーーーんっ!!! もう許してぇ!!』


別邸に居ても聞こえていた嬌声は僕らの進む先から聞こえているようで、声を上げさせている人間と声を上げている人間が、僕らの予想通りじゃなければいいのにと思いながら、足を進めていた。


『ぁん! やぁあ! あンっ! ぁああーー!!』


またあの声だ。
けれど、ここはもう、最上階の一番奥の部屋であり、もうココ以外に部屋はない。

つまり、僕らの予想通りだ。

この声を出させているのはお義兄様。
この声を出しているのは、隣国から嫁いだその嫁(♀)だった。

扉の向こうからは、近いせいか普通(?)の会話も聞こえて来る。


『キャス、また飛んでしまったの? 私はまだまだ足りないよ。さぁ、起きてくれ。』
『…………………………んが! ぁんっ…イッてるの。イッてるのに! もう、壊れちゃう!』
『心配しないで、キャス。治癒や魔力・体力増強の魔法を一緒に使ってるから、何も心配することはないよ。』
『ぃや。でも、ぃやぁ…の! もう、離縁してくださ……』
『何て言ったのかな?』
『ぁんっ、深い! 絶倫過ぎるぅ……』


僕は、ソーマの腕を掴む手に力が入りすぎてしまう。

ソーマに愛されるのは、男の僕だって辛くなることもある。
それが女であり、気を飛ばした後なのに魔法でもろもろ増強されて無理矢理起こされるなんて、酷すぎると思ったから。

ソーマは僕のそんな気持ちを察して、僕の顔を覗き込み、頭を撫でてくれる。

「ケイ。この先の部屋へは、私が一人で行こうと思います。
ケイは別邸で待っていませんか?」

僕はソーマの気持ちが嬉しかった。
けれど、ソーマと離れたくない気持ちもあった。

「別邸には結界を張ったままです。何も心配はありませんよ。ただ、私の帰りを待てば良いのです。」

僕はソーマの言葉を信じ、転移して送って貰った。


『ひああぁぁぁーーーんっ!!! もう許してぇ!!』


別邸の寝室の窓を締めていても、お義兄上様の奥さんの声は聞こえてきていた。

僕は寝室の扉の向こうの廊下へ逃げ、扉を背に耳を塞いで座り込む。

どれだけそうしていたのか、僕は気付くと眠ってしまっていたようだった。


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