お嬢様の身代わり役

325号室の住人

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本編

  33


「…んっ」
目が覚めた。
遠く…隣の部屋?から話し声が聞こえる。

『……から言ったじゃないの! イー………は、病み上がりなのよ!』
『……ったく、どんだけ盛ってんだよ!』
『……返す言葉もない。面目ない。』

──ハイド様が怒られてる?

僕はハイド様の方へ向かおうとして、少しだけ体を起こそうとした。

その時になって、やっと周囲が視界に入たのだけど…

──ここは、どこだ?

見たこともない、広いベッド。
天蓋は染み一つない純白で、天蓋の天井で幾人もの天使が楽しげに遊んでいる。

公爵邸ではあちこちのベッドメイクをしてきたけれど、全く見た記憶のない調度品ばかり。

──ここはどこなんだ?

僕は不安にかられ、声のする方へ行ってみようと考える。

何故かわからないけれど、体があちこち痛む。
仕方ないので、這うようにして、ベッドを進む。

「…ふっ……クッ…」

ふと顔を上げると、天蓋の向こうに人影を見つけた。

そちらへ手を伸ばせば、薄布が開き…

「ごめんなさい、イードちゃん。急いで準備するわよ!!」

その手を取ったのは、熟女侍女ーズのみなさん。

そして僕は…………






「「「国王陛下、万歳! 王妃殿下、万歳!」」」

大観衆に見上げられて、こう、声を掛けられた。

──なぜ?

ハイド様は、僕の腰を抱くのと反対側の手を上げて大観衆に応えている。

それから、僕を抱き上げると、見せつけるように顔中にキスを落とす。

「え? な…ちょ、は?」

僕は、酸欠気味の真っ赤な顔でハイド様を見上げる。

「ほら、民衆に応えてやってくれ。」

床へ下ろしてもらい、ハイド様の真似をして片手を上げると、

「「「わあぁぁぁぁぁーーー!!!」」」

「え? 何で?」

「「「王妃様、万歳!!」」」

僕は何故か、民衆に《王妃様》と呼ばれていた。



僕があの時着せられたのは、真っ白のウェディングドレスだった。
胸まで覆うヴェールを被っているのだけれど、ハイド様が度々持ち上げてはキスをするので、顔バレ必至だろう。

僕とハイド様は今、王城の2階のバルコニーに立っているんだ。



「それでは皆、そろそろ花嫁との初夜に向かう時間となった。」

「「「国王陛下、万歳!! 王妃殿下、万歳!!」」」

そうしてハイド様は僕を抱き上げると、民衆に背を向けて室内へ戻って来た。

「え? どうして? は?」

戸惑う僕に甘い笑みを向けるハイド様は…

「イードを抱き潰してしまって、何の説明もなく婚姻お披露目の儀式を迎えてしまったことは詫びる。」

そう言って、僕を抱き上げたまま少しだけ申し訳無さそうな表情と共に頭を下げた。

「え? でも、何で僕が王妃様?」

「うん。もろもろ、全て説明するよ。ベッドの中で……」

「は?」

そうして僕は、ウェディングドレス姿のまま再びあの広すぎるベッドへとハイド様と一緒に戻って来た。




……………………のだが、




「今日は婚姻初夜です。花嫁は、それなりに整えなければなりませんので!」
「ハイド様はあちらへ。精力の元になるお食事でもなさってください。」

そうして、僕とハイド様は離れ離れになり…

僕は裸に剥かれ、髪や肌を擦られ磨かれ、花の香りのオイルを擦り込まれ…
煽情的な女性用の夜着を着せられて、天蓋の中へと送り届けられた。

それからそこまで待たずにハイド様が現れる。
民族衣装のような、豪奢な腰巻き姿で、とても凛々しく立派だ。

それより、腰巻きの前側の裾を持ち上げつつある膨らみに、つい目が行ってしまう。

膝をついてベッドに上がってきたハイド様から軽くキスを受け、瞬時に体が期待で熱くなるも、

「まずは話をしよう。イードの疑問に答えねばな。」

ヘッドボードに枕を積んで凭れるハイド様にすっぽりと収まるように後ろから抱き締められながら、ハイド様は僕の知らなかった全てを話し始めた。


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