こちら冒険者支援ギルド ダンジョン課

瀧音静

文字の大きさ
37 / 75

お土産

しおりを挟む
あー、つっかれたー。

飯食って体拭いたらとっとと寝とけ。疲れ残すと日に日に辛いぞ。

そうするよ。でも、本当に戦士と僧侶が居てくれて助かったよ。僕たち何にも知らなかったって実感したよ。

お前ぐらいの年ならそんなもんだろ。学校なんざ言ってしまえばおままごとだ。実際とは天地の差がある。って、寝てるし。はあ、何にそんなに急かされてんのかね。こいつらは。
お前ぐらいの年齢なら、まだ学校に通うべきだっつうの。



 少しばかりいやらしい手の動きをしていた麒麟のマッサージを終え、今は錦鯉のドリンクをまた飲みながら姉御がマッサージを終えるのを待っていた。

「心地良いマッサージに、美味しいドリンク、頑張った甲斐がありましたわ」
「僕のお灸は人気ないねぇ。効くよ?」
「マッサージだけでかなり楽になりましたもの。必要ありませんわ」
「僕の扱いって水のや陸のに比べて雑過ぎないかい?」

 そもそも外科と言っていましたし、疲労回復等は専門外では?

「はー。ほんま極楽やったわ。飲み物おくれ」

 下駄を鳴らし、錦鯉からドリンクを受け取って、そのまま一気に飲み干す姉御。

 ぷはぁ。と声を上げ口元をぬぐう。

「それじゃ、こっちの用は終わったし、帰るんでしょ?乗ってきなよ」

 龍に姿を変えた錦鯉が、乗れ。と言わんばかりに背中を見せてくる。

「あ~まてまて、土産がある」

 錦鯉の背中に乗ろうとするときに麒麟から一人一瓶ずつ渡されたそれは、
中身は……かなり色の薄いポーションですね。一体何でしょうか。

「お前らも熱中症なんかになられたら困るからな。その耐性付けるポーションだ。無理矢理ポーション一本に納めたから少し副作用があるが、……まぁお前らなら大丈夫だろ」

 聞きながら飲もうとしましたが副作用と聞いて手が止まる。
どうやら他の方々も同じだったようで。

「副作用てなんや?」
「ふっふっふ。秘密☆」
「そのうち本気でぶん殴りますわよ!? というか私の服、元に戻してください!」
「チッ。はいはいっと」

 ようやく普段通りの露出の高い服に戻るパパラ。
本当にそちらの服の方が恥ずかしくないのですか。……私には到底真似できません。

「まぁ気が向いたら飲んどけや。お前らが患者としてここに来ない事を祈っとくぞ~」
「暇だったら手伝いに来てよぉ。いつでも歓迎だからねぇ」

 神獣2体に手を振られ、私達を乗せた錦鯉は高度を上げる。

「どこに送ればいい?」
「うちのダンジョンの上空でええわ。そこから各自降りるやろ」
「は~い。んじゃいくよ~」

 自分で飛ばなくていいというのは楽ですね。なんて考えは、錦鯉が姉御のダンジョンへ向けて速度を上げ始めると同時に、周りの音と共に吹き飛んだ。

*

「着いたよ~。……て大丈夫?」
「あんた、……乗っとる身にもなりぃや。……意識ごと吹き飛ぶような速度出すんちゃうで」
「いえ、パパラとリリスは意識飛んでます。危ない所でした」

 二人をそれぞれ両手で支える身になって欲しいものですよ。
パパラだけ幸せそうな顔してますけど、気絶してますよね?

「ごめんごめん、疲れてるだろうと思ってついつい飛ばしちゃった」
「本音は?」
「誰か落ちないかと期待して速度の限界に挑戦した」

 本当に神獣は質の悪い連中ばかりなようで。

「ま、無事に着いたしええわ。ほなな。もう会わへん事を祈っとるで」
「そう言わずに手伝いに来てよ~」

 却下や、と錦鯉を一瞥し、その背から飛び降りる姉御。
同じく続きますが、両手の二人がすこぶる邪魔です。

 姉御は番傘を出してひらひらと、私も羽を出して――っ!?
眼下に勇者パーティを発見してしまい一瞬躊躇ためらってしまう。

 勇者達とも目が合ってしまいましたし、どうしましょうか。

 不意に、ガクンッ―と体に衝撃が真後ろから加わり、というか何かに引っ張られるような感覚が。

「ドラちゃん、何やってるノ?リリスとサキュバスの子ハ気絶してルみたいだシ」

 私の服だけに、器用に鉤爪をひっかけて私の急降下を止めてくれているハーピィ。
助かりました。ええ、本当に。

「神獣の錦鯉のせいでこうなりました。ともあれ、ありがとうございます」
「へー。とりあえず落ろすネ、重イ」

 ポイっと、一度勢いを失って無事に着陸できる高度にまで運ばれて、無造作に放り投げられる。
無事に着地し、ゆっくりリリスとパパラを降ろす。
そこに駆け寄って来る勇者パーティ。

「マデラさん!?今上から落ちて来ませんでした!?」
「ええ、少し。用事があったもので」
「そちらのお二方や先ほどのハーピィ種の方は……」
「Sランクダンジョンの方々ですよ。街で見かけた時は大丈夫ですが、ダンジョン内で見かけたら逃げてください」

 逃げられない方々しか居ませんけど。

「何なニー。ドr」
危うくドラちゃんといつも通り呼ばれそうになり、口を押さえつける。

 ドラちゃん、といつも通り呼ばれるのもまずいですがモンスター語を話しているのを聞かれるのもマズイです。
明らかに人間では無理な発音しますので。

「勇者様方に紹介しておきましょう。こちら、Sランクダンジョンのハーピィの塔のダンジョンマスターです。そうですね、他のSランクよりは難易度は下がるかと思います」

 何か言いたげにハーピィがじたばたしていますが、放して余計なこと口走られたら困りますので無視です。

「こちらで気を失っているリリスは誘惑の館と呼ばれるSランクダンジョンのマスターです。こちらのダンジョンは現在クリア不能も同然なのでオススメいたしません」
「クリア不能って、それダンジョンとしてどうなんだよ」
「クリア不能とは言っておりません。不能同然なのです。彼女は魅了魔法を得意としておりますが、その魅了魔法を破れた者がまずいません。そして範囲はダンジョン内全域に及びます」
「てことは……」
「魅了耐性が彼女の魅了魔法を上回っている場合のみクリア可能です。が、前例がありません」
「やっぱりおかしいでしょ!」
「Sランクダンジョンの説明に、デタラメです。と記載してあるはずです。こういう意味です」

 絶句する勇者達。
ええ、気持ちは凄くわかります。

「でもなんで僕たちに紹介を?」
「ふと、貴方方ならば挑戦するかもしれないと思ったからです。今すぐにとは言わずとも、将来的に」

 少し照れながら、頭を掻く勇者に戦士は、社交辞令だばーか。と頭を小突く。
そこに、ふわふわと降りてくる姉御。

「おや?またチビッ子らか。どうしたんや?」
「あ、神楽さん。ありがとうございました!いつか必ずダンジョンに挑戦しに来ます!」

 姿を見るなり勇者は深々と頭を下げる。

「ま、頑張りや」

 僅かに微笑みひらひらと手を振って、勇者パーティの背中を見送る。
さて、彼らが挑むのは一体どれくらい先の話ですかね。

途中からすっかり動かなくなったハーピィを見れば、
白目をになっていたため慌てて手を放す。ごめんなさい。呼吸止めてました。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...