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本編
11 あいつら、付き合ったらしいぞ
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コンサートツアーの翌日。
Star Novaのメンバーが集まる、寮の共有スペースは、いつもより少しだけ騒がしかった。
「本郷さんは?」
「さぁ」
「まだ寝てんじゃね?」
「あ、帰ってきた」
ちょうどそのタイミングで、扉が開いた。入ってきたのは、本郷ルカと櫻井来夢だった。
櫻井はどこか晴れやかで、肩の力が抜けたような表情をしている。一方の本郷は、なぜか誰とも視線を合わせようとせず、落ち着かない様子だった。
「本郷さん、どこ行ってたの」
「えっ。あ、いや……ちょっと、仕事で……」
歯切れの悪い返事に、共有スペースの空気が、一瞬だけ静まった。その沈黙を破るように、櫻井が一歩、本郷との距離を詰めた。
「じゃあ、また後で。本郷さん」
そう言って、櫻井はごく自然に、本郷の髪に軽く口付けた。
「待っ、やめろ、櫻井……!」
慌てて制止する本郷とは対照的に、櫻井はにこりと満足気に笑ったまま、何事もなかったかのように自分の部屋へ向かっていく。
顔を真っ赤にした本郷は、その場にしばらく立ち尽くしたあと、観念したように自分の部屋へと消えていった。
その後ろ姿を見送りながら、Star Novaの五人は自然と顔を見合せた。
「あー……これ、付き合ったな」
「だな」
「長かったもんねぇ」
「本郷さん、あんな顔するんだ」
「僕らも、そろそろ本郷さん離れしないとですね」
冗談めかした声の中に、どこか温かい納得と、少しの寂しさが混じっていた。
L-Novaは、今日も三人での仕事だった。
寮の前に停まった送迎車に乗り込み、そのまま並んで腰を下ろす。事務所を移籍してから、すっかり慣れてきた日課だ。
エンジン音に紛れて、水島が隣の櫻井を横目で見る。そして、わざとらしく大きなため息をついた。
「櫻井、浮かれてんな」
「え、わかる?」
「わかるに決まってんだろ」
「なになに? なんか良いことあったの?」
月城まで興味津々に身を乗り出してくる。
昨日、途中から姿を消したこともあって、二人の視線はやけに鋭い。
「昨日さ、途中から居なかったけど。何してたんだ?」
「良い質問だ。あのな──」
櫻井は、問いかけに答えようとして、にっこりと笑った。
その瞬間だった。
ポケットの中でスマホが震える。画面に表示された名前を見て、櫻井の口元は更に緩む。歌い出しそうな表情を浮かべ、メッセージを開いた。
『俺らの関係、絶対誰にも話すなよ。もちろん、Novaのみんなにも、だ』
「……は?」
思わず声が漏れる。さっそく今から、水島と月城に全部話すつもりだったのに。
なんで隠す必要があるんだ。櫻井はむっと唇を尖らせ、そのままシートに背中を預けた。
「ん? なんだよ櫻井」
「教えてくれねぇのかよ」
「また今度な」
「ちぇー。……でもさ」
月城が、意味ありげに笑う。
「本郷さんとのことだろ?」
「……内緒」
短くそう返すと、水島が「はいはい」と肩をすくめた。
どうせ、Star NovaもL-Novaも、みんな察している。言わなくても、もうバレているに決まっている。
今さら必死に隠したって、どこかでボロが出る。
……でも、愛しい恋人の言うことだ。無下にはできない。
(帰ったら、ちゃんと話そう)
そう決めて、櫻井は文句の代わりに、スタンプをひとつ送った。
仕事を終え、ようやく二人きりになれたのは、本郷の部屋だった。
「……なぁ、櫻井」
ソファに並んで腰を下ろし、本郷はどこか落ち着かない様子で切り出す。視線は宙を彷徨い、無意識に指先を組んでいる。
「メッセージでも送ったけどさ。俺たちのこと、当分……いや、しばらくは内緒にしたい」
櫻井は一瞬だけ瞬きをして、それから静かに頷いた。
「……理由、聞いてもいいですか」
「決まってるだろ」
本郷は、少し困ったように苦笑する。
「仕事に影響させたくない。ファンにも、メンバーにも……余計な心配は、させたくない」
その言葉は、ずっと変わらない本郷ルカの生き方そのものだった。自分を後回しにして、誰かのために最善を選ぶ癖。
櫻井は、その横顔を見つめてから、ゆっくりと言った。
「Novaのみんなには、もうバレてると思いますけど」
「……そうか? バレてないと思うけど」
本気か? と、櫻井が本郷を見る。
「……大丈夫、だと思うけど……」
「…………分かりました」
少し間を置いてから、櫻井は頷いた。
「内緒にします」
その言葉に、本郷の肩からふっと力が抜ける。
「助かる。……変な誤解も、噂も、絶対に避けたいからな」
「安心してください」
櫻井は、静かに微笑んだ。
「俺からは、言いません」
L-Novaの三人。楽屋にて。
「……で?」
腕を組んだ水島が、低い声で切り出す。
「櫻井、結局どうなんだよ」
「どうって?」
櫻井は涼しい顔で、お茶を一口飲む。
「いやもう、顔が全部言ってんだよ」
月城が呆れたように笑った。
「付き合ったんでしょ。本郷さんと」
櫻井は、一拍置いてから、素直に答える。
「……うん」
「うわ、即認めた」
「隠す気ゼロじゃん」
軽口が飛ぶ中で、櫻井は少しだけ声を落とした。
「でも」
二人の視線が集まる。
「公には内緒。絶対に、誰にも言わないで」
Star Novaのメンバーが集まる、寮の共有スペースは、いつもより少しだけ騒がしかった。
「本郷さんは?」
「さぁ」
「まだ寝てんじゃね?」
「あ、帰ってきた」
ちょうどそのタイミングで、扉が開いた。入ってきたのは、本郷ルカと櫻井来夢だった。
櫻井はどこか晴れやかで、肩の力が抜けたような表情をしている。一方の本郷は、なぜか誰とも視線を合わせようとせず、落ち着かない様子だった。
「本郷さん、どこ行ってたの」
「えっ。あ、いや……ちょっと、仕事で……」
歯切れの悪い返事に、共有スペースの空気が、一瞬だけ静まった。その沈黙を破るように、櫻井が一歩、本郷との距離を詰めた。
「じゃあ、また後で。本郷さん」
そう言って、櫻井はごく自然に、本郷の髪に軽く口付けた。
「待っ、やめろ、櫻井……!」
慌てて制止する本郷とは対照的に、櫻井はにこりと満足気に笑ったまま、何事もなかったかのように自分の部屋へ向かっていく。
顔を真っ赤にした本郷は、その場にしばらく立ち尽くしたあと、観念したように自分の部屋へと消えていった。
その後ろ姿を見送りながら、Star Novaの五人は自然と顔を見合せた。
「あー……これ、付き合ったな」
「だな」
「長かったもんねぇ」
「本郷さん、あんな顔するんだ」
「僕らも、そろそろ本郷さん離れしないとですね」
冗談めかした声の中に、どこか温かい納得と、少しの寂しさが混じっていた。
L-Novaは、今日も三人での仕事だった。
寮の前に停まった送迎車に乗り込み、そのまま並んで腰を下ろす。事務所を移籍してから、すっかり慣れてきた日課だ。
エンジン音に紛れて、水島が隣の櫻井を横目で見る。そして、わざとらしく大きなため息をついた。
「櫻井、浮かれてんな」
「え、わかる?」
「わかるに決まってんだろ」
「なになに? なんか良いことあったの?」
月城まで興味津々に身を乗り出してくる。
昨日、途中から姿を消したこともあって、二人の視線はやけに鋭い。
「昨日さ、途中から居なかったけど。何してたんだ?」
「良い質問だ。あのな──」
櫻井は、問いかけに答えようとして、にっこりと笑った。
その瞬間だった。
ポケットの中でスマホが震える。画面に表示された名前を見て、櫻井の口元は更に緩む。歌い出しそうな表情を浮かべ、メッセージを開いた。
『俺らの関係、絶対誰にも話すなよ。もちろん、Novaのみんなにも、だ』
「……は?」
思わず声が漏れる。さっそく今から、水島と月城に全部話すつもりだったのに。
なんで隠す必要があるんだ。櫻井はむっと唇を尖らせ、そのままシートに背中を預けた。
「ん? なんだよ櫻井」
「教えてくれねぇのかよ」
「また今度な」
「ちぇー。……でもさ」
月城が、意味ありげに笑う。
「本郷さんとのことだろ?」
「……内緒」
短くそう返すと、水島が「はいはい」と肩をすくめた。
どうせ、Star NovaもL-Novaも、みんな察している。言わなくても、もうバレているに決まっている。
今さら必死に隠したって、どこかでボロが出る。
……でも、愛しい恋人の言うことだ。無下にはできない。
(帰ったら、ちゃんと話そう)
そう決めて、櫻井は文句の代わりに、スタンプをひとつ送った。
仕事を終え、ようやく二人きりになれたのは、本郷の部屋だった。
「……なぁ、櫻井」
ソファに並んで腰を下ろし、本郷はどこか落ち着かない様子で切り出す。視線は宙を彷徨い、無意識に指先を組んでいる。
「メッセージでも送ったけどさ。俺たちのこと、当分……いや、しばらくは内緒にしたい」
櫻井は一瞬だけ瞬きをして、それから静かに頷いた。
「……理由、聞いてもいいですか」
「決まってるだろ」
本郷は、少し困ったように苦笑する。
「仕事に影響させたくない。ファンにも、メンバーにも……余計な心配は、させたくない」
その言葉は、ずっと変わらない本郷ルカの生き方そのものだった。自分を後回しにして、誰かのために最善を選ぶ癖。
櫻井は、その横顔を見つめてから、ゆっくりと言った。
「Novaのみんなには、もうバレてると思いますけど」
「……そうか? バレてないと思うけど」
本気か? と、櫻井が本郷を見る。
「……大丈夫、だと思うけど……」
「…………分かりました」
少し間を置いてから、櫻井は頷いた。
「内緒にします」
その言葉に、本郷の肩からふっと力が抜ける。
「助かる。……変な誤解も、噂も、絶対に避けたいからな」
「安心してください」
櫻井は、静かに微笑んだ。
「俺からは、言いません」
L-Novaの三人。楽屋にて。
「……で?」
腕を組んだ水島が、低い声で切り出す。
「櫻井、結局どうなんだよ」
「どうって?」
櫻井は涼しい顔で、お茶を一口飲む。
「いやもう、顔が全部言ってんだよ」
月城が呆れたように笑った。
「付き合ったんでしょ。本郷さんと」
櫻井は、一拍置いてから、素直に答える。
「……うん」
「うわ、即認めた」
「隠す気ゼロじゃん」
軽口が飛ぶ中で、櫻井は少しだけ声を落とした。
「でも」
二人の視線が集まる。
「公には内緒。絶対に、誰にも言わないで」
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