ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第50話

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 僕はタンクの後を追いかけました。まだそれほど離れていないので気配関知でタンクの居場所は分かっています。


さすがはあんな奴でもSランク冒険者…凄い速度です!!


僕はスピードアップを掛け、全力で追いかけました。10分ほど追いかけたところでタンクの方が立ち止まりました。


「やっぱりお前だけのようだな!ドラゴンバスターの奴等がこなかったのなら俺にもまだツキが残っていたようだ!!

俺はお前のせいでこれからの人生犯罪者だ!もうこの国にはいられねー!!俺はこれまで全てうまくやってきたんだ!それをお前ごときガキの為に全てを失うことになるとはな!!!くそっ!」


「それは違いますよ!それは僕のせいではなく、せっかく名声を得たというのに、強盗なんて馬鹿な選択をしたあなた自身の責任です。それすら分からないから、逃げ出したんでしょうが…」


「言わせておけば、死ね!!彗星剣!」


僕に巨大な剣気が襲いかかってきますが、今の僕ならば避けるのはそんなに難しくはありません。曲がりなりにも74レベルまでレベルも上がっていますし、速度上昇のスキルも8レベル、さらに見切りのスキルも6レベルあります。


「何故俺の攻撃を簡単に避けられる!俺はAランク以上の冒険者は全て把握している!お前はBランクの筈だ!!!」


「僕はこの前Cランクに上がったばかりですよ!」


「Cランクだと!?そんな雑魚に俺は…許せん!」


「冒険者の実力はランクのみで判断してはならない!冒険者教本その1ー死なない為の心構えの一節です!

あなたは防御には優れていますが、攻撃に関してはSランク冒険者にしては大したことありません!

そして、あなたの得意とする絶対防御のスキルは効果時間は1分、一度使うと10分のクールタイムが必要となるようですね。ついでに言うと発動中は攻撃行動は取れないようです。2回も見せてもらいましたし、おおよそは当たっているのではないですか?」


「それがどうした?それが分かったからといって、そのあいだは俺にはダメージを与えることは不可能だぞ!!」


「それはどうでしょう?あなたの絶対防御も完璧ではありません。攻撃手段が皆無というわけではありませんよ。」


「そんな訳があるかー!!」


「なら試してみましょう!まずは絶対防御を使わせないといけないですね。ファイアストーム!!」


 僕がファイアストームを使うとタンクの周りは燃え盛る炎の嵐になりました。


「俺はこれくらいの魔法なら自力で耐えられる!」


そう言い、そのまま炎の嵐を駆け抜けようとしています。


「知っています。でもこの魔法との組み合わせだと結構辛いと思いますよ!アイスストーム!」


僕が先ほどの戦いで合成魔法のスキルが2レベルになり、新しく覚えたアイスストームを使うと、タンクの周りは先ほどとはうって変わって凍てつく冷気の嵐を引き起こしました。


「冷気になっても同じだ!俺には大して通じん!!」


「それはどうでしょう?少なくともその鎧には効いてるようですよ!」


 僕は先日の魔法の特訓の時に知った知識を使いました。何故かは分かりませんが石や金属でも熱々に温めた直後に急激に冷やされると脆くなるのです。

これは物質が熱々に熱されると膨張し、冷やされると急激に収縮することにより物体に歪みが生じ、破壊される化学的現象なのですが、そんなことをロンが知る筈もありません。

しかし、偶然知った知識をうまく利用し、今回は実戦で使ったのです。


結果…タンクの着ていた立派な鎧や剣は急激に耐久力を失い、脆くなり崩れ始めたのです。


この鎧には魔法耐性を大幅に上げる効果が付いていました。それを破壊されたタンクはアイスストームのダメージを受けることになりました。


「今度はファイアストームです!」


これも実験したのですが、熱くしたり冷やしたりを繰り返すことで物質へのダメージをさらに大きくすることができたのです。


「ぐあーーー!馬鹿な!こんな馬鹿な!くそっ!絶対防御!!」


「やっと使いましたね!その技の弱点は攻撃手段が失われることです。つまりはこういう攻撃には弱いんです!!ソイルバインド!」


ソイルバインドは土の魔法で、砂や土が手の形になり対象を縛りあげる魔法で、本来ならばタンクくらいの強さを持つ人間であれば、剣で軽く払ったりすれば防げるようなものです。


「くっ!だが、動けないだけだ!」


「そして手の動きさえ防げれば、これだけでいいんです。フリーズ!」


 僕の使った魔法によりタンクの口と鼻は凍りつきました。本来は動きを制限する為の魔法なのですが、今回は口と鼻の動きを制限する為に使いました。つまりは息ができないのです。


絶対防御が切れる前に僕はさらにダークバインドも追加し、タンクの体の自由を奪いました。


タンクは終始「ウーウーウーッ!」と真っ赤な顔で唸っていましたが、最後には力尽き、真っ青な顔で死にました。



《レベルが上がりました》


そこへアナウンスが虚しく響き渡りました。



 僕はタンクの死体を異空間収納に入れると、ドラゴンバスターの方たちのところへ戻りました。到着の直前に死体を取り出すと、それを抱えて戻りました。


「無事に倒したみたいだな!」


僕が抱えるものを見て、それだけ言いました。


レナ、ルナ、ユナの3人はタンクの死体を見ると「ひいっ!!」と恐怖の表情に変わりました。タンクの表情があまりにも苦しそうな表情で死んでいたことが恐怖心を煽ったのでしょう。


「凄い表情で死んでるな?こいつらは本当に殺さなくていいのか?」


「いや!」
「殺さないで!」
「あなたの性奴隷にされてもいいから許して!」


「窒息死させましたので、こんな苦しそうな顔で最後を迎えたんです。僕は彼女たちを殺す気はありません。奴隷にする気もありません。普通に罪を償ってもらえればいいと思います。」


「罪が強盗だからな…普通に罪を償うってのが下手をすりゃ死罪だぞ?まあ、こいつらはSランク冒険者の実力があるから、一生国の奴隷として魔物を間引きする戦闘員にされるくらいで済むか!!」


「それもいやー!!」
「助けてー!」
「それなら性奴隷の方がずっといいわ!」


「彼女たち何故そんなに嫌がるんですか?冒険者とそれほど変わらない生活な気がするのですが…?」


「あー。それはな、犯罪者奴隷の首輪を一生付けられ、相手の強さに関係なく挑まされ、こいつらの場合魔術師なのに、たとえ魔力切れを起こしても撤退も許されないんだ!もっと酷いのはゴブリンやオークに捕まった場合だ!死ぬまで繁殖の相手をさせられるのに、自害をすることも首輪に許されることがない!」


「あー。それはまさに地獄ですね…でもだからといって許す訳にもいきませんし…そこは国に任せるしかありません。」


「「「そんな…」」」


彼女たちは僕の言葉に絶望し、力を失いました。



タンクの死体はドラゴンバスターの方たちにも協力してもらい、地面に埋めました。


「ほら、これはお前のもんだ!」


「えっ?これって鳳凰のしらべの持ち物では?」


「あいつらは強盗して、返り討ちにあった!盗賊の持ち物は討伐者の戦利品だ!」


「そうでしたね…」


「それとこれも返しておく!疑って悪かったな!!」


それは死竜草の花びらでした。あの時どちらの所有物か分からなかったので、ドラゴンバスターが預かってくれていたのです。


「ん?どうした?」


「鳳凰のしらべとは違い、ドラゴンバスターさんたちは僕の思っていた通りの憧れのSランク冒険者だなと思っていたんです!」


「そうか?でもそう言ってもらえるのは悪くない!改めて自己紹介するのもなんだが、俺はドラゴンバスターのリーダーを務めるフィヨルドだ!」


「俺はドラゴンバスターの盾のドワーフのダンだ!」


「俺はドラゴンバスターの弓使いエルフのアルミスだ!」


「私はドラゴンバスターの魔術師のカーニャよ!」


「私はドラゴンバスターの回復術士のラマダよ!さっきの回復魔法は見事だったわ!同じ回復術士として仲良くしましょう!!」


「僕はロンです。あの…僕は回復術士ではないのです。」


「そりゃそうよね?回復魔法だけでは、あの男を1人で撃退できないものね!それでも凄かったわ♪」


「あ、ありがとうございます。」


「ところでロン、お前にお願いがあるんだがちょっといいか?」


フィヨルドさんが申し訳なさそうに僕に言ってきました。



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