「こんにちは、パペットさん」

むー

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木曜日のパペットさん

元演劇部のパペットさん 1

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市立椿原高校は自由な校風の学校だ。

"学生生活は楽しい方がいい"がモットーのオレは、楽しいことを求めてこの学校へ入学した。

そこで、オレー倉田クラタ ハジメは不思議な部を知った。


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入学2日目。

午後、部活動説明会が体育館であった。
床に直座りで好きな場所に座って良かったから、オレは入学式で仲良くなった近藤と矢野と並んで少し離れた場所から見学することにした。

部活動説明会も最後の一つになったが、特にコレといった部活は見つからなかった。

「次は『ボランティア部』の紹介です」

最後に呼ばれて出てきたのは5人の男子部員。
チャラそうな奴から根暗そうな奴まで見事にキャラはバラバラで、普通に考えたら交わらない面子だった。
ただし、その手に持つパペットを除けば。

「ボランティア部の活動は、校外のゴミ拾いから、学童の子供たちの学習のお手伝いなど、活動は多岐に渡っています。今回はその活動のひとつでもあるパペットを使った人形劇をします」

部長の男子が説明して、その間に他の部員が紙芝居の箱のようなものを舞台袖から運び込んできた。
劇は【赤ずきん】だった。
その劇をオレは夢中で観てしまった。


「なあなあ、さっき先輩に聞いたんだけど、右から2番目の先輩、『パペットさん』って呼ばれてるらしいぜ」

劇が終わると近藤が話しかけてきた。
近藤には同中の先輩がいて、この説明会の直前にその先輩に捕まって教えてもらったらしい。

「なんで?」
「なんかあの人、パペットないと授業でも全然喋んないらしい。理由は分からんけど」

確かに、右から2番目にいた先輩は大きめのマスクで目から下を隠していて、声を発するときは必ず左手のリスのパペットがパクパク動いていた。

「なんか面白そうな人じゃん」
「そうか?」
「お前、変わってんなー」

オレは、リスのパペットさんが気になるようになった。


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