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番外編 瑠可/楓
番外編 kaede-3
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それからの俺は、自分でも思うくらい俺らしくなかった。
カフェで瑠可がセフレと一緒にいるとを必ず声を掛けた。
それを見たバイトの奴らに「牽制してる」と指摘され、店長の伊吹くんからは「いいんじゃね」と言われた。
そうしているうちにあることに気づいた。
瑠可のフェロモンから他の男の匂いはしなくなった。
その気にならないのか、相手がグイグイきている時に声を掛けるとあからさまにホッとした表情を見せることもあった。
そんな日も悪くないと思った。
瑠可と連絡を取り合うようになって、少しずつ瑠可のことを知る日々は楽しかった。
他のオメガの発情に影響されやすい体質には本気で悩んでいるようで、話を聞くうちに、何とかしてやれないかと考えるようになった。
瑠可と少しずつ距離を詰めてきていた時、結季が神凪清暙に実家に連れ戻された。
その場に居合わせた瑠可も清暙に蹴り飛ばされて、頬は腫れ、体には打撲とすり傷ができていた。
目覚めて事件のことを思い出しパニックになる瑠可を落ち着かせた。
瑠可は結季が連れ去られた時の話をして少し泣いた後、また眠った。
それから数日入院した瑠可のお見舞いに行った。
退院後、結季を救出するまでは、毎日、電話で話した。
神凪家に向かう前日、瑠可は涙声で「結季くんをお願い」と何度も言った。
結季が戻ってくると、瑠可は涙を流して喜んだ。
結季の番が瑠可の初恋の相手だと知ったのはその時だったが、瑠可は手放しで喜んでいた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「楓兄はなんでボクを助けてくれるの?」
あれからすぐ、瑠可がセフレにしつこくされていた所を助けた時、瑠可が聞いてきた。
「んー、瑠可のことが好き…だからって言ったらどうする?」
言ってみたら意外にしっくりした。
あれから2ヶ月でそんな風に考える様になったのに自分でも驚いたが、悪くないとも思った。
だが、瑠可は冗談と思って本気と受け留めなかった。
俺も自覚したばかりだから、今はそれでいいと思った。
ゴールデンウィーク前から、俺は就活で忙しくなった。
毎日のように資料室で求人情報を漁り、会社説明会があれば休日でも赴いた。
つい最近になってやっとやりたいことを見つけた俺には時間が足りなかった。
第一志望の会社を見つけ、同時進行でいくつかの会社もピックアップした。
その頃にはどの会社も申し込みがギリギリだった。
そんな慌ただしい日々のため瑠可になかなか会えないせいで、疲れがなかなか取れないと感じた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
第一志望の二次面接が終わり、従兄弟のカフェに立ち寄るとそこに瑠可がいた。
今まで見たセフレとは違うアルファの男とお茶をして店の前で別れた。
「瑠可、アイツ誰?」
「わっ、楓兄!びっくりした」
背後から声を掛けると、瑠可は飛び上がるほど驚いた。
瑠可と会っていた男は篠崎春樹という奴で、道で絡まれたところを助けてもらったそうだ。
その篠崎とはお礼で映画とかに付き合ってるらしい。
つか、絡まれたって…。
ノーテンキな瑠可にイライラしてしまい、それに気づいた瑠可が焦って話題を変えてきたけど俺の機嫌は治らない。
「前に俺が瑠可に言ったこと覚えてる?」
「えっ、言ったって…?」
「瑠可が好きだって話」
「ふわっ、そ、それって冗談じゃ…」
「割と本気だった」
「………」
やっぱり冗談にしか思ってなくて、面白くない。
瑠可を前にすると子供っぽいヤキモチを妬く自分にも、面白くなかった。
「か、考える。今からちゃんと考えるから、ちょっと待って!」
瑠可は前向きなことを言ってくれた。
それだけで、俺の機嫌は治った。
内定貰うまでは俺も余裕がないから、それまでは待つことにした。
そうして瑠可の頭を撫でると気持ち良さそうな顔をされて、思わず瑠可を抱きしめた。
「瑠可充電」
そう言って背中をポンポン叩くと、俺の疲れは飛んでいった気がした。
だが。
瑠可との関係が進展していると思っていたのは俺だけだった。
俺は、瑠可にこれっぽっちも想われていなかった。
カフェで瑠可がセフレと一緒にいるとを必ず声を掛けた。
それを見たバイトの奴らに「牽制してる」と指摘され、店長の伊吹くんからは「いいんじゃね」と言われた。
そうしているうちにあることに気づいた。
瑠可のフェロモンから他の男の匂いはしなくなった。
その気にならないのか、相手がグイグイきている時に声を掛けるとあからさまにホッとした表情を見せることもあった。
そんな日も悪くないと思った。
瑠可と連絡を取り合うようになって、少しずつ瑠可のことを知る日々は楽しかった。
他のオメガの発情に影響されやすい体質には本気で悩んでいるようで、話を聞くうちに、何とかしてやれないかと考えるようになった。
瑠可と少しずつ距離を詰めてきていた時、結季が神凪清暙に実家に連れ戻された。
その場に居合わせた瑠可も清暙に蹴り飛ばされて、頬は腫れ、体には打撲とすり傷ができていた。
目覚めて事件のことを思い出しパニックになる瑠可を落ち着かせた。
瑠可は結季が連れ去られた時の話をして少し泣いた後、また眠った。
それから数日入院した瑠可のお見舞いに行った。
退院後、結季を救出するまでは、毎日、電話で話した。
神凪家に向かう前日、瑠可は涙声で「結季くんをお願い」と何度も言った。
結季が戻ってくると、瑠可は涙を流して喜んだ。
結季の番が瑠可の初恋の相手だと知ったのはその時だったが、瑠可は手放しで喜んでいた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「楓兄はなんでボクを助けてくれるの?」
あれからすぐ、瑠可がセフレにしつこくされていた所を助けた時、瑠可が聞いてきた。
「んー、瑠可のことが好き…だからって言ったらどうする?」
言ってみたら意外にしっくりした。
あれから2ヶ月でそんな風に考える様になったのに自分でも驚いたが、悪くないとも思った。
だが、瑠可は冗談と思って本気と受け留めなかった。
俺も自覚したばかりだから、今はそれでいいと思った。
ゴールデンウィーク前から、俺は就活で忙しくなった。
毎日のように資料室で求人情報を漁り、会社説明会があれば休日でも赴いた。
つい最近になってやっとやりたいことを見つけた俺には時間が足りなかった。
第一志望の会社を見つけ、同時進行でいくつかの会社もピックアップした。
その頃にはどの会社も申し込みがギリギリだった。
そんな慌ただしい日々のため瑠可になかなか会えないせいで、疲れがなかなか取れないと感じた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
第一志望の二次面接が終わり、従兄弟のカフェに立ち寄るとそこに瑠可がいた。
今まで見たセフレとは違うアルファの男とお茶をして店の前で別れた。
「瑠可、アイツ誰?」
「わっ、楓兄!びっくりした」
背後から声を掛けると、瑠可は飛び上がるほど驚いた。
瑠可と会っていた男は篠崎春樹という奴で、道で絡まれたところを助けてもらったそうだ。
その篠崎とはお礼で映画とかに付き合ってるらしい。
つか、絡まれたって…。
ノーテンキな瑠可にイライラしてしまい、それに気づいた瑠可が焦って話題を変えてきたけど俺の機嫌は治らない。
「前に俺が瑠可に言ったこと覚えてる?」
「えっ、言ったって…?」
「瑠可が好きだって話」
「ふわっ、そ、それって冗談じゃ…」
「割と本気だった」
「………」
やっぱり冗談にしか思ってなくて、面白くない。
瑠可を前にすると子供っぽいヤキモチを妬く自分にも、面白くなかった。
「か、考える。今からちゃんと考えるから、ちょっと待って!」
瑠可は前向きなことを言ってくれた。
それだけで、俺の機嫌は治った。
内定貰うまでは俺も余裕がないから、それまでは待つことにした。
そうして瑠可の頭を撫でると気持ち良さそうな顔をされて、思わず瑠可を抱きしめた。
「瑠可充電」
そう言って背中をポンポン叩くと、俺の疲れは飛んでいった気がした。
だが。
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俺は、瑠可にこれっぽっちも想われていなかった。
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