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番外編 瑠可/楓
番外編 kaede-10
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「もう、楓くん、ちーこーくー」
門扉のインターフォンを鳴らすと「遅い」と言われ、玄関でもこんな理不尽な扱いを受けた。
これでもかなり頑張って来たんだけど。
「つか、俺、デート中だったんですけど」
「そうなの?それはごめんなさい。で、今回はどんな子?この匂いからして可愛い子ね」
「おば……百合さん、勘弁して」
言い間違えそうになってギロリと睨まれて、冷や汗が出た。
「ところで、百合さん、大きすぎない?まだ7ヶ月だよね」
「やっぱり、気づいちゃった?……生まれるまで内緒にしようと思ったんだけど……実は双子だったのよー!」
「双子…」
「サプラーィズ」とキャピキャピしているが、どうやって出産まで誤魔化す気だったんだ、この人は。
「まあ、いいや。今日は何?何で俺呼び出されたの?」
「あ、そうね、もう来てるから入って」
来てるって……?
「き、貴美さん……と、副社長?」
「貴美と百合ちゃんは名前呼びなのに、俺だけ副社長なのは寂しいな…」
「あああああ、すみません。透さん」
リビングに通されると、そこには百合さんの幼なじみでNANA-tsukiの社長の七月貴美さんと副社長で貴美さんの旦那さんの透さんがいた。
「百合ちゃん、呼んでくれてありがとうね」
「お礼なんていいのよ。私と貴美ちゃんの仲でしょ」
「もう百合ちゃんったら、大好きー」
「貴美ちゃん、私もー」
相変わらず、この2人は仲良しだ。
「あれ、貴美さん…?」
「あっ、やっぱり分かっちゃった?4ヶ月よ」
「また同級生になるといいわね」
「そうね」
貴美さんは、うっすら膨らんだお腹をさすりながら、百合さんと嬉しそうにお喋りに花を咲かせようとした時、コホンと透さんが咳払いをした。
「あ、そうそう。今日、楓くん呼んだのは話があったの」
「俺にですか?」
「最終面接ブッチした理由と結果を教えてもらいたくてね」
「ぶっっ」
「私も聞きたーい」
出された麦茶を吹いた。
この2人を目の前にしてなんとなく予想はしていたが、透さんまでとは…。
透さんの眼鏡の奥の優しい目と合った。
「温厚な楓くんが、人前であれだけ必死になっていたのが気になったのは本当だよ。……あと、君が何故うちの会社を応募したのか、ちゃんと聞きたくてね。急にごめんね」
「いえ」
俺は軽く深呼吸をして、何から話すべきか考え口を開いた。
「先に応募理由から話していいですか?」
貴美さんと透さんは頷いた。
百合さんは側にあった小さな椅子に座った。
「元々、医薬品研究開発には興味があったんです。最初は研究は何でも良くて、兎に角研究ができる会社ならどこでも良かったんです。……でも、ある人と関わって、その人を深く知ってやりたいことが明確になったんです。それがNANA-tsuki……正確には透さんの研究でした」
「それは」
「はい。オメガ研究です。如月は誰もが知るオメガの名家です。それは、本家の香りに関わる事業や百合さんが手掛けているnatsumeブランドなど、如月の女性が努力したからです。それもあって、以前より世間のオメガに対する偏見はなくなりましたが、ゼロではありません。未だに一部で差別はなくならないし、希望の職種に就ける人も少ないと聞きます。俺は…オメガだからという理由だけで可能性を潰される人を減らしたい。それを実現するためにはまずオメガをもっと知らなければならない。如月のアルファとして、同じ人間として彼らの可能性の助けになるための近道としてNANA-tsukiを応募しました」
「近道って、ははっ、ぶっちゃけるね」
「正直、一から始めたら生きている内に間に合わないので」
「確かに、なんだかんだで20年近く研究してるからなぁ、俺も」
俺の「近道」発言に、透さんは特に怒る様子もなく、顎に手をかけながら自分の研究の年月を振り返っていた。
「ねぇ、楓くんがそこまで入りたいと思っていた会社の面接蹴るほど大事な人が今の恋人?」
「なっ…んで…」
「ドア開いたままだったことにすら気付かなかったとは、驚いたな」
俺は、面接直前に来た電話から篠崎のこと、瑠可を助けるまでのことを掻い摘んで説明した。
「何その最低な男!」
「アルファの風上にも置けないな」
「うちの社員だったら速攻クビね」
掻い摘んでも篠崎の下衆っぷりに怒り浸透の3人の迫力に、俺ですら震え上がりそうだ。
「あれ……篠崎って……ねぇ?」
「ん、ああ、アレ?」
「アレって?」
貴美さんと透さんは篠崎に心当たりがあるようで目を合わせてると、百合さんが尋ねた。
「ああ、5年くらい前だったかな。中途入社の募集に篠崎という名の男が応募してきたんだ。数年、海外で活躍していたらしく、みんな期待していたんだけどね…」
「そいつ、コーヒーを持ってきたオメガ性の社員を鼻で笑って『こんなオメガより私の方がこの会社に利益を与えますよ』とか言ったから、その場で不採用にして追い出してやったわ」
「やん、貴美ちゃん素敵!」
鼻息荒く言った貴美さんの話からして同一人物に間違いないな。
「同一人物だとしたら、たぶん、その腹いせで楓くんを動揺させて面接を失敗させようとしたんじゃないかな」
「クソが付くほどねちっこいですね」
「たぶん、ほっといても自滅するわよ。うちの本家と取引きのあるなら、こっちから言わなくてもそんな男のいる会社なんて切るわよ」
うんうん、と全員が頷いた。
「話は逸れてしまったけど、楓くん」
「はい」
「君をNANA-tsukiに採用してもいいと思ってる」
「えっ…」
「楓くんの希望は透の部門だから、透が採用すると言うなら私は構わないわよ」
意外な申し出に俺の頭がまともに働かない。
社長である貴美さんも反対しない。
「ただし、2年。…いや、最低2年かな。君には営業に行ってもらう。そこで俺たちを納得させるだけの結果を出せたら、俺の研究開発に君を入れる」
「縁故入社になる訳だから、1年目から結果出さないと周りの風当たりは厳しいわよ。まあ、結果出しても僻む社員はいるでしょうけどね」
「決めるのは君だ。来年、再チャレンジしてもいいけど、希望の部門に配属されるとは限らないし、一年無駄にするよりは良いと思うけど、どうかな?」
「は、はいっ。絶対、全社員を納得させます。よっ、よろしくお願いします」
俺は二つ返事でその提案に乗った。
本日、俺は無事NANA-tsukiの内定をもらうことになった。
門扉のインターフォンを鳴らすと「遅い」と言われ、玄関でもこんな理不尽な扱いを受けた。
これでもかなり頑張って来たんだけど。
「つか、俺、デート中だったんですけど」
「そうなの?それはごめんなさい。で、今回はどんな子?この匂いからして可愛い子ね」
「おば……百合さん、勘弁して」
言い間違えそうになってギロリと睨まれて、冷や汗が出た。
「ところで、百合さん、大きすぎない?まだ7ヶ月だよね」
「やっぱり、気づいちゃった?……生まれるまで内緒にしようと思ったんだけど……実は双子だったのよー!」
「双子…」
「サプラーィズ」とキャピキャピしているが、どうやって出産まで誤魔化す気だったんだ、この人は。
「まあ、いいや。今日は何?何で俺呼び出されたの?」
「あ、そうね、もう来てるから入って」
来てるって……?
「き、貴美さん……と、副社長?」
「貴美と百合ちゃんは名前呼びなのに、俺だけ副社長なのは寂しいな…」
「あああああ、すみません。透さん」
リビングに通されると、そこには百合さんの幼なじみでNANA-tsukiの社長の七月貴美さんと副社長で貴美さんの旦那さんの透さんがいた。
「百合ちゃん、呼んでくれてありがとうね」
「お礼なんていいのよ。私と貴美ちゃんの仲でしょ」
「もう百合ちゃんったら、大好きー」
「貴美ちゃん、私もー」
相変わらず、この2人は仲良しだ。
「あれ、貴美さん…?」
「あっ、やっぱり分かっちゃった?4ヶ月よ」
「また同級生になるといいわね」
「そうね」
貴美さんは、うっすら膨らんだお腹をさすりながら、百合さんと嬉しそうにお喋りに花を咲かせようとした時、コホンと透さんが咳払いをした。
「あ、そうそう。今日、楓くん呼んだのは話があったの」
「俺にですか?」
「最終面接ブッチした理由と結果を教えてもらいたくてね」
「ぶっっ」
「私も聞きたーい」
出された麦茶を吹いた。
この2人を目の前にしてなんとなく予想はしていたが、透さんまでとは…。
透さんの眼鏡の奥の優しい目と合った。
「温厚な楓くんが、人前であれだけ必死になっていたのが気になったのは本当だよ。……あと、君が何故うちの会社を応募したのか、ちゃんと聞きたくてね。急にごめんね」
「いえ」
俺は軽く深呼吸をして、何から話すべきか考え口を開いた。
「先に応募理由から話していいですか?」
貴美さんと透さんは頷いた。
百合さんは側にあった小さな椅子に座った。
「元々、医薬品研究開発には興味があったんです。最初は研究は何でも良くて、兎に角研究ができる会社ならどこでも良かったんです。……でも、ある人と関わって、その人を深く知ってやりたいことが明確になったんです。それがNANA-tsuki……正確には透さんの研究でした」
「それは」
「はい。オメガ研究です。如月は誰もが知るオメガの名家です。それは、本家の香りに関わる事業や百合さんが手掛けているnatsumeブランドなど、如月の女性が努力したからです。それもあって、以前より世間のオメガに対する偏見はなくなりましたが、ゼロではありません。未だに一部で差別はなくならないし、希望の職種に就ける人も少ないと聞きます。俺は…オメガだからという理由だけで可能性を潰される人を減らしたい。それを実現するためにはまずオメガをもっと知らなければならない。如月のアルファとして、同じ人間として彼らの可能性の助けになるための近道としてNANA-tsukiを応募しました」
「近道って、ははっ、ぶっちゃけるね」
「正直、一から始めたら生きている内に間に合わないので」
「確かに、なんだかんだで20年近く研究してるからなぁ、俺も」
俺の「近道」発言に、透さんは特に怒る様子もなく、顎に手をかけながら自分の研究の年月を振り返っていた。
「ねぇ、楓くんがそこまで入りたいと思っていた会社の面接蹴るほど大事な人が今の恋人?」
「なっ…んで…」
「ドア開いたままだったことにすら気付かなかったとは、驚いたな」
俺は、面接直前に来た電話から篠崎のこと、瑠可を助けるまでのことを掻い摘んで説明した。
「何その最低な男!」
「アルファの風上にも置けないな」
「うちの社員だったら速攻クビね」
掻い摘んでも篠崎の下衆っぷりに怒り浸透の3人の迫力に、俺ですら震え上がりそうだ。
「あれ……篠崎って……ねぇ?」
「ん、ああ、アレ?」
「アレって?」
貴美さんと透さんは篠崎に心当たりがあるようで目を合わせてると、百合さんが尋ねた。
「ああ、5年くらい前だったかな。中途入社の募集に篠崎という名の男が応募してきたんだ。数年、海外で活躍していたらしく、みんな期待していたんだけどね…」
「そいつ、コーヒーを持ってきたオメガ性の社員を鼻で笑って『こんなオメガより私の方がこの会社に利益を与えますよ』とか言ったから、その場で不採用にして追い出してやったわ」
「やん、貴美ちゃん素敵!」
鼻息荒く言った貴美さんの話からして同一人物に間違いないな。
「同一人物だとしたら、たぶん、その腹いせで楓くんを動揺させて面接を失敗させようとしたんじゃないかな」
「クソが付くほどねちっこいですね」
「たぶん、ほっといても自滅するわよ。うちの本家と取引きのあるなら、こっちから言わなくてもそんな男のいる会社なんて切るわよ」
うんうん、と全員が頷いた。
「話は逸れてしまったけど、楓くん」
「はい」
「君をNANA-tsukiに採用してもいいと思ってる」
「えっ…」
「楓くんの希望は透の部門だから、透が採用すると言うなら私は構わないわよ」
意外な申し出に俺の頭がまともに働かない。
社長である貴美さんも反対しない。
「ただし、2年。…いや、最低2年かな。君には営業に行ってもらう。そこで俺たちを納得させるだけの結果を出せたら、俺の研究開発に君を入れる」
「縁故入社になる訳だから、1年目から結果出さないと周りの風当たりは厳しいわよ。まあ、結果出しても僻む社員はいるでしょうけどね」
「決めるのは君だ。来年、再チャレンジしてもいいけど、希望の部門に配属されるとは限らないし、一年無駄にするよりは良いと思うけど、どうかな?」
「は、はいっ。絶対、全社員を納得させます。よっ、よろしくお願いします」
俺は二つ返事でその提案に乗った。
本日、俺は無事NANA-tsukiの内定をもらうことになった。
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