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この日、事あるごとに「可愛い(僕の)先輩」呼びをされたオレは、バイトが終わる頃には色んな意味でヘトヘトになった。
「歩夢先輩。帰りましょ♪」
イチゴくんはオレの手を引いて立たせると、そのまま手を繋いで外に出た。
振り解く気力もなくなったオレは、陽気に鼻歌を歌うイチゴくんに引っ張られながら駅に向かう。
「あの、イチゴくん」
「何ですか?可愛い先輩」
「ぎゃあ」
また「可愛い」呼びされてヒットポイントを削られる。
今のは「淡雪くん」と呼ばないオレが悪いんだけど。
なんか、今日のイチゴくん、意地悪だ。
「あ、あのさ。あ、あわ、淡雪くん」
「はいっ」
わー、嬉しそうに笑ってるー。
「仕事中は……その……オレのことは、下の名前で呼んでくれないかな」
「うーん。どうしようかなぁ」
「仕事、以外では、ちゃ、ちゃんと、あわ……淡雪くんって呼ぶからさ」
オレは必死に言葉を紡ぐ。
これ以上「可愛い」呼びされたら耳が死ぬぅ。
「わかりました。歩夢先輩」
その一言にオレは膝から崩れ落ちた。
イチゴくんはそんなオレの姿にふっと笑うと、繋いでいた手を勢いよく引き上げると膝裏に両腕を回しそのまま抱き上げた。
「ぅわっ」
慌ててイチゴくんの両肩に手を乗せバランスを取る。
すると、いつも見上げていたイチゴくんの顔を見下ろす形になる。
髪で隠れていた耳があらわになり、右耳にオレの左耳とお揃いの赤いピアスがキラリと見えた。
「ふふっ」
突然笑い出すイチゴくんに思わず怪訝な顔をしてしまう。
「何?どうしたんだよ」
「いえ……。やっぱり好きだなぁって思って」
嬉しそうに笑うイチゴくんに意味がわからず首を傾げる。
「好きだなっ……て?」
「歩夢先輩のことですよ」
間髪入れずに答えられて、ボンっと音がしそうなくらい一気に顔が熱くなる。
赤くなった顔が恥ずかしくて隠したいのにイチゴくんの肩に乗せた手が離せない。
そんなオレにイチゴくんはまたふふっと笑うと眩しそうにオレを見た。
「だから、歩夢先輩。僕と結婚を前提にお付き合いしてください」
「…………」
こっちに戻ってきてから久しぶりに聞いた耳タコ告白に、オレはすぐに声を発することができない。
むしろ、益々顔が熱くなった気がする。
のも束の間。
視線に気づき見渡すと、数人の通行人がいた。
その視線はイチゴくんへのオレの返事を今か今かと待ち侘びているように見える。
「歩夢先輩?」
不思議そうに見上げるイチゴくんにーー
「こ、断るーーー」
ジタバタと無駄な足掻きをした。
つか、こんな往来で告白すんなぁーー!
【結婚を前提に異世界にきてくれませんか?】終わり
「歩夢先輩。帰りましょ♪」
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「好きだなっ……て?」
「歩夢先輩のことですよ」
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そんなオレにイチゴくんはまたふふっと笑うと眩しそうにオレを見た。
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「歩夢先輩?」
不思議そうに見上げるイチゴくんにーー
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