結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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第2部

2-2

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日付が変わる頃にはワチャワチャしていた店内もガランとして静かになった。

「あ゛ーー、やっと落ち着いたぁ」
「今日も大盛況でしたね」

去年はまったりしていたハロウィンウィークは、このイケメンのせいで大忙しな1週間になった。
なのに、疲れひとつ見せずオレに笑顔を向けるイチゴくんにちょっとイラッとしてしまうのは仕方がない。
だから、つい恨めしげな目で睨むのにーー。

「歩夢先輩の眼差しが熱くて照れちゃいます」
「……はぁ」

疲れた。

「あ、そういえば。来月……って日付変わったから今月か。新しいバイト入るって、聞いた?」
「はい。昨夜ゆうべ聞きました。どんな人か楽しみですね」
「女の子だったらいいなー……って、新しい子は夕方までだしオレたちは夜勤だから接点ないかぁ」

「お疲れ様でぇーす」って交代の時に可愛い女の子に言われたら頑張れる気がする。
あ……でも、たぶん、オレではなく隣のイチゴくん見ながら言うんだろうなぁ。

「歩夢先輩」

隣から聞こえた冷え冷えとした声に背筋がピンと伸びる。
忘れてた。

「僕という男がいるのに浮気ですか?」
「ぅっ……やっ、まだ付き合ってないしっ。つか、オレ、女の子好きだしっ」

って、オレ、なんでこんなに焦ってんだよ。
心の中でツッコミを入れて忙しいオレにイチゴくんは詰め寄る。

「そんな女の子より僕の方が絶対一途で愛が重いですよ」
「重いんかいっ」

バシッ

思わず手の甲でイチゴくんの肩を叩いてツッコミを入れてしまう。
結構いい音がしてしまったから、ちょっと痛かったかも。

「ぁ、ごめっ……え?」

下ろそうとした手を掴まれ、包み込むように両手で握られる。
その目はなんだかウットリしているのは気のせいだろうか?

「い、イチゴくん?」
「歩夢先輩の愛の鉄拳が僕の胸を打ちました。先輩、僕と結婚を前提に結婚してくださいっ」
「こ、断るーーっ!」

つか、『結婚を前提に結婚』って、結婚じゃねぇか。

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