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第2部
2-26
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バイト明け。
いつも通り並んで歩く。
「寒い日に食べる肉まんって美味しいですね」
「ん、そうだな」
寒さと空腹のため、オレとイチゴくんは帰りがけに中華まんを買った。
熱々の中華まん食べてるから、吐く息が真っ白だ。
「歩夢先輩のカレーまん、美味しいですか?」
「美味いよ。食べる?」
「えっ?えっ?」
食べかけのカレーまんを差し出すと、イチゴくんが慌てた。
その隙に、イチゴくんの肉まんに齧り付く。
「肉まんも美味い。毎回悩むんだよなー。何個も食えないし」
「……」
イチゴくんはまだパクパクしてる。
だから、その口にカレーまんを押し込むと、イチゴくんは驚きつつカレーまんを齧った。
「どうだ?美味いだろ?」
「っっ、美味しいです……が、間接ーー」
「だぁー。前にアイス、オレのスプーンで食ったことだろ。今更騒ぐなよ」
ちゃんと人の目がないタイミングでやったのに。
改めて言われると恥ずかしい。
「そういえば、歩夢先輩聞きました?立川さんのこと」
「ん、ああ。早かったな」
今月入ったばかりの立川さんは、今月いっぱいで辞めるらしい。
日勤メンバーに勤務態度を注意されて「そんなこと言われるならもう辞める」と言ったらしい。
で、その場に偶然店長が現れて「いいよー」とアッサリ了承したらしい。
交代メンバーが話すには、「冗談です」とすぐ立川さんが謝罪したけど「うん。君の勤務態度に、僕の我慢はもう限界なんだよね」と笑顔でバッサリ切り捨てたそうだ。
察するに立川さんは店長を怒らせるほど勤務態度が悪かったみたいだ。
「……歩夢先輩、立川さんに僕の連絡先教えなかったんですね」
「いつの話だよ。……って先週か。まあ、いくら淡雪くんがいいと言ってたとしてもさ、オレは直接聞いてなかったし。……それに、そもそもこれはオレと淡雪くんの問題だから……オレは淡雪くんと解決したかった……というか……」
上手く説明できない。
でも、理由はそれだけじゃない。
たぶんーー
「ふふっ。すごく嬉しい」
イチゴくんは嬉しそうに笑うと残りひと口分の肉まんをパクリと食べた。
そんな横顔を見ながら、オレも最後のひと口分を口の中に放り込んだ。
たぶんーー
オレが嫌だったんだ。
いつも通り並んで歩く。
「寒い日に食べる肉まんって美味しいですね」
「ん、そうだな」
寒さと空腹のため、オレとイチゴくんは帰りがけに中華まんを買った。
熱々の中華まん食べてるから、吐く息が真っ白だ。
「歩夢先輩のカレーまん、美味しいですか?」
「美味いよ。食べる?」
「えっ?えっ?」
食べかけのカレーまんを差し出すと、イチゴくんが慌てた。
その隙に、イチゴくんの肉まんに齧り付く。
「肉まんも美味い。毎回悩むんだよなー。何個も食えないし」
「……」
イチゴくんはまだパクパクしてる。
だから、その口にカレーまんを押し込むと、イチゴくんは驚きつつカレーまんを齧った。
「どうだ?美味いだろ?」
「っっ、美味しいです……が、間接ーー」
「だぁー。前にアイス、オレのスプーンで食ったことだろ。今更騒ぐなよ」
ちゃんと人の目がないタイミングでやったのに。
改めて言われると恥ずかしい。
「そういえば、歩夢先輩聞きました?立川さんのこと」
「ん、ああ。早かったな」
今月入ったばかりの立川さんは、今月いっぱいで辞めるらしい。
日勤メンバーに勤務態度を注意されて「そんなこと言われるならもう辞める」と言ったらしい。
で、その場に偶然店長が現れて「いいよー」とアッサリ了承したらしい。
交代メンバーが話すには、「冗談です」とすぐ立川さんが謝罪したけど「うん。君の勤務態度に、僕の我慢はもう限界なんだよね」と笑顔でバッサリ切り捨てたそうだ。
察するに立川さんは店長を怒らせるほど勤務態度が悪かったみたいだ。
「……歩夢先輩、立川さんに僕の連絡先教えなかったんですね」
「いつの話だよ。……って先週か。まあ、いくら淡雪くんがいいと言ってたとしてもさ、オレは直接聞いてなかったし。……それに、そもそもこれはオレと淡雪くんの問題だから……オレは淡雪くんと解決したかった……というか……」
上手く説明できない。
でも、理由はそれだけじゃない。
たぶんーー
「ふふっ。すごく嬉しい」
イチゴくんは嬉しそうに笑うと残りひと口分の肉まんをパクリと食べた。
そんな横顔を見ながら、オレも最後のひと口分を口の中に放り込んだ。
たぶんーー
オレが嫌だったんだ。
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