結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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第2部

2-42

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オレの近くでも王様たちを呼ぶ人たちの声がたくさん上がった。
若い女子たちについては、アイドルに声援を送るかのようにイチゴくんたちの名を呼んでいる。
そんな光景をぼんやり眺めていると肩を叩かれる。
振り返ると目をキラキラさせたコウシさんと目が合った。

「アユム様も是非アワユキ王子の名を呼んでやってください」
「えっ⁉︎」

オレは見てみたいとは言ったが、声援を送りたいとは一言も言ってませんけど。
そんなことはお構いなしに期待に満ちた目で見られる。
たぶん、この眼差しはオレがイチゴくんの名を呼ぶまで止めない気がする。
渋々、大きく息を吸い口の横に手を添え……。

「アワユキおーじー」

半ばやけくそ気味に叫ぶ……が、周りの声の方が大きくてオレの声はかき消されてしまった。
無駄吠えだったと恥ずかしくなって項垂れると。

「キャー!」

すぐ近くで悲鳴が上がり驚いて見上げる。
その先にはこちらを向いているイチゴくんが見えた。
かなり距離があるのに目が合ったように感じた瞬間、イチゴくんがフワッと微笑みながらこちらに手を振ってくれた。

「アユム様のお声がアワユキ王子に届きましたねっ」

コウシさんが嬉しそうに言ってオレの手首を掴んでイチゴくんに向けブンブン振った。

「そ、そうですね。……でも、ちょぉっと悪目立ちしてる気がするんですけど……」

オレは顔を引き攣らせたが、コウシさんはお構いなしに掴んでいるオレの手を振る。
視線の先ではイチゴくんの視線を追ってオレを見つけた全員が満面の笑みを浮かべ手を振っていた。
キラピカくんなんて「あーゆくーん」て絶対オレの名を呼んでた。

「皆様がこちらにお手をお振りになってますよ!私、このような光景は初めて見ました。お噂通りアユム様は素晴らしい方なのですね」

コウシさんら興奮して益々声が大きくなり、終いにはオレの手を離してイチゴくんたちに手を振った。
そのせいもあって、チラチラとこちらを見る周りの視線がオレたちに刺さって居た堪れない。
つか、噂って誰に何を言われたんだ?
痛すぎる視線に人目を避けるようにその場に頭を抱えてしゃがみ込む。


「おっ、やっぱりアユムじゃん」

頭上からオレを呼ぶ声に肩がビクッと跳ねた。
こんな人混みの中に異世界人のオレを知る人なんていないはずなのに。

「っ⁉︎……ぁ」
「よっ、久しぶり!」

恐る恐る見上げた先にはニィッと白い歯を見せながら笑う男ーアウルーがいた。
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