魔法使いと眠れるオメガ

むー

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同居終了:19日目 1/9(日)

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電車で乗り換え含め7駅先で降りて改札を出る。
はじめて降りた地は、都心では比較的治安の良いところだ。
駅前のカフェの窓際席でコーヒーを飲んでいると、程なく待ち人は姿を現した。
アプリにメッセージを送ると俺を見つけて駆けてきた。
手を振ると振り返して店内に入り、少しするとカップを持って俺の隣に来た。

「ごめん、待たせちゃった?」
「いえ、乗り継ぎうまくいって予定より早く着いただけですよ。てか、荷物多くないですか?」
「あーうん、ちょっとね…」

肩に担いでいるトートバッグを預かろうと掴むとずっしりとして、中からふわりと美味しそうな匂いがした。

「まさか、あれ作ったんですか?」
「あ…、やっぱり全部は無理で、何品かだけど…」

何品かという重さではない。
たぶん二桁は確実に作ってる気がする。
真琴さん、意外に力持ち?
つか、全部作る気だった?

「すみません。材料費だけでなく光熱費も払わせるんで、ちゃんと請求してください」
「だ、大丈夫だよ。うちで食べる分も一緒に作ったし。あと、ほとんど冷凍保存できるものだから」
「とりあえず、これは俺が持ちます」
「……うん」

真琴さんがカフェオレ飲み終わるのを待って、俺たちは駅に向かった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「ただいーー」
「真琴さん、いらっしゃーい!」
「あの…お邪魔します…」

玄関で、妹の勢いに押され気味の真琴さんを庇うように行くてを塞いて妹の頭を押さえようとするが、スルリと回避され真琴さんを連れていかれた。
ため息をついてリビングに行くと、真琴さんは母親と妹に挟まれてソファーに座っていた。

「おかえり」
「ああ、これ真琴さんが作ってきてくれたやつ」
「こんなに?今日の晩ご飯は豪華だねぇ」

トートバッグの中身を広げて、親父は感心しながらその一つを開ける。

「おっ、これは私がリクエストしたやつだね。とても美味しそうだ」
「あっ」

そう言った親父は、いつの間にか手に持った箸で鰯の梅煮をつまみ食いをした。

「うーん。美味い!」
「あー!お父さん、ズルーい」
「一番はお母さんでしょ!」

リビングからブーイングが上がった。


「お、美味しいぃー」
「お店みたいに美味しいね」

慣れない我が家のキッチンにも拘らず、調味料の場所を教えるとテキパキと4人分のエッグベネディクトを作り上げた。

「紫陽くんも温かいうちに食べて」

そう言うと、使った道具を洗って次の料理の準備を始めた。

「真琴さんの分ないですけど?」
「ああ、家でたくさん味見したからまだちょっとお腹いっぱいなんだ」
「なら、一口だけ食べて下さい」

その場で小さめの一口分を切り分け、フォークで刺し真琴さんの口元に「はい」と差し出すと目をまん丸にして固まった。

「えっ?あのっ、そのっ……いただきます…」

アワアワした後、顔を赤くしてパクっと口に入れた。

「やっだぁ、新婚さんみたいね」

母さんの声に振り返ると、ダイニングテーブルに頬杖ついてニヤニヤする3人の顔があった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

俺たちが食べている間に真琴さんが下拵えした餃子の具をみんなで包んだ。
真琴さんと親父は綺麗に包めたけど、俺含む残りの3人の出来は酷いものだった。

「焼いてしまえばみんな一緒だから大丈夫だよ」とありがたいフォローを頂いたけど、自分で作ったものは責任持って食べよう。

餃子の具も包み終わってからも、真琴さんは母と妹に挟まれて離してもらえずにいた。
その向かいにはニコニコメモを取る親父もいた。
その話は専ら料理についてで、料理のできない母と妹はコツとか隠し味ばかり聞く。
我が家で唯一料理が出来る親父がそれをメモしてる。
一応、右から左に流れていないようでよかったと言うべきか。

そのまま、夕飯の餃子パーティーに雪崩れ込み、真琴さんは料理のため解放された。
持ってきた料理も並べるようで手伝おうと腰を上げたのだが、そのポジションは親父に取られた。
2人で話しながら支度をしていて、ちょっと羨ましい。
ホットプレートに餃子を並べて、お湯を注いで蒸し焼きにした。
数分後、蓋を開けるとブワッと蒸気が上がりうちの家族全員歓声を上げた。
そこから高温で焼き上げ完成した餃子を我先に箸で摘んで、特製のタレで食べる。
細かく刻まれた薬味とタレもめちゃくちゃ美味かった。
しかも、水餃子も作ってくれていて、こちらも鶏ガラのスープと相まって美味かった。
遠慮なしでバクバク食いまくる俺と家族によって、あっという間に用意していた餃子は無くなった。


後片付けを何もしていなかった女子2人が引き受けてくれたので、俺は真琴さんを部屋に連れて行った。

「ここが紫陽くんの部屋……綺麗だね」

キョロキョロと見渡す真琴さんの手を引いてベッドに座らせる。
昨日、必死こいて掃除したときに見られてヤバいものは全て隠したから大丈夫なはず。
俺はデスクチェアに向かい合うように座った。

「あの、今日はありがとうございます。うちの家族の我儘聞いてもらって……」
「ううん、僕も楽しかったよ。何というか……」
「勢い凄かったでしょ?」
「あーうん。ふふっ、なんかびっくりしちゃった」
「ですよね…」

うちの家族の大歓迎っぷりには俺も驚いたけど、それに付き合ってくれた真琴さんにも驚いた。
チラッと真琴さんを見ると、興味津々にまだ俺の部屋を見渡している。

「そんなに珍しいですか、俺の部屋?」
「あ、うん。ほら、1ヶ月一緒に住んでいたのに紫陽くんの部屋入ったことなかったなぁ、って思い出して、あの部屋もこんな感じだったのかなって……」
「全然違いますよ。寧ろ、あっちの方が広くて綺麗でしたよ」
「そっかぁ……ふふっ」

家族に見せていた笑顔とは違ったリラックスした笑顔に俺も笑ってしまう。

「真琴さん。あの……」
「?」
「俺、あの時ちゃんと言ってなかったんですが……」
「ぁ……」

『あの時』のことを思い出したのか、頬がピンクになった真琴さんの前に立ち、手を取る。
驚いて見上げる目を真っ直ぐ見つめ返す。

「俺、真琴さんが好きです。あの時、家族になりたいって言ったのも嘘じゃない。でも…」
「……」
「その前に、俺の恋人になってくれませんか?」

頬を染め、潤んだ瞳を大きく見開いて俺を見上げる顔がすごく可愛くて、もっとよく見たくて顔を寄せると「あっ…」と掠れた声を上げた。
互いの顔が視界いっぱいになっても構わず更に寄る。

「嫌だったら言って」

唇まであと数センチ。
ここで「嫌だ」と言われたら立ち直れる気がしない。
祈りを込めて近づく。
触れーー。

ドンドンドン
「お兄ちゃーん!」

お約束ってあるんだな……。

「あ、ごめっ…」

俺は肩は思いっきり押されてひっくり返った。

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