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勘違いを続ける彼女と彼女が気になる彼。
各自の自由に任せて干渉しない教育方針でございます。
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腐乱死体の夢に魘された勉強合宿が終わってから2週間後、1学期中間試験が行われ、悲喜こもごもの声があちこちから聞こえてきた。ちなみに私はいつもどおり普通科トップだ。
「悠木せんぱぁい、私赤点とっちゃいましたぁ」
階段を降りて下駄箱前の廊下を歩いていると、悠木君が例の1年生に絡まれていた。彼女の本性をドア越しに目撃(聞いただけだけど)したため、今の甘えたような声には違和感しかない。
「俺の周りうろつくんじゃなくて勉強しろよ」
ごもっともなご意見である。悠木君は勉強に真面目に取り組んでるもんね。今回も特進科の中でも上位にランクインしているのを知っている。
「えぇーそんな事言わないでぇせんぱぁい、勉強教えてくださぁい」
雨宮さんは悠木君の腕に抱きついて甘えていた。すごいなぁ、父親でも彼氏でもない男子の腕に抱きつくとか上級スキルじゃないか。自分に自信があるから出来ることだな。
私が観察しているのに気づいたのか、雨宮さんと目が合う。彼女は私を見てニヤリとなにやらあくどい笑みを浮かべていた。まるで少女漫画のライバル役みたいだ……私が真似してニヤリと笑い返すと気分を害したようです睨みつけられてしまった。
どうにも彼女は誤解しているみたいなんだよなぁ。私は別に悠木君の彼女ってわけでもないのに。
「違う! 違うからな!」
私が雨宮さんを見て考え事をしていると、視界の端で悠木君が慌てて雨宮さんの腕を振り払っているのが見えた。何故か彼は私を見て違うと必死に弁解している。何が違うんだろう。彼女と付き合ってないってことをアピールしたいのだろうか。
「あん、夏生せんぱぁい!」
振りほどかれた雨宮さんは甘えた声を漏らしつつ、悠木君の視界外に入ると、ぶすくれた表情を浮かべていた。さっきまで悠木先輩って呼んでたくせに名前呼びに変わった…。積極的にもほどがある。
「これからバイト?」
悠木君は気まずそうに首の後ろをさすりながら私に声をかけてきた。その問いに私は首を横に振る。
「今日から三者面談でしょ。親待ってんの」
三者面談終わったらバイトに行くけども。
今日から三者面談始まったのは特進科もである。だから面談じゃない人は早く帰れるんだ。
「そうなんだ、そっちお袋さんが来るの?」
「うぅん、お母さんは休みが取りにくいから──」
「美玖」
名前を呼ばれたので横を見ると、職場から直行でやってきたらしいお父さんの姿があった。…耳にボールペンが乗っているのには何も突っ込まないぞ。お父さんは私と会話していた悠木君の姿を目に映すと、軽く目を見張り、上から下まで吟味するように観察していた。
「私のお父さん」
悠木君に我が父を紹介する。ごめんね、イケメンに見慣れていないから物珍しいのだと思う。
「あ。えっと、こんにちは…」
悠木君が緊張の面持ちで挨拶すると、お父さんがハッとした顔をしていた。
「えーなにぃこのイケメェン。お父さんたまげちゃったなぁ。君モデルか俳優目指してる?」
「いえ、それはないです」
「スカウトとか受けてるんじゃない? いやぁいい男だねぇ」
悠木君を前にして女子みたいにはしゃぐお父さん。悠木君はたじたじになっている。急に知らないおっさんに絡まれたんだ、そりゃびっくりするよね。
「ちょっと美玖ー、彼氏できたならお父さんに紹介してよー」
「ただの友達。特進科の悠木君だよ」
お父さんがあらぬ誤解をしていたので即座に否定すると、目の前の悠木君の肩がピクリと動いていた。怪訝に思ったので彼を見上げると悠木君はとても悲しそうな顔をしていた。
「えーそこはもっと青春ぽくさぁ、なんかないの? 美玖も莉子も恋愛のレの字もないじゃない。花のJK、JDなのにー」
普通、父親なら「彼氏なんか早い」と怒るものだと思うのだが、うちの父はそうはならないらしい。むしろ娘に恋バナをねだる始末。なんで父親に赤裸々話をしなきゃいけないのか。恥ずかしい通り越して嫌なんですけど。
「勉強とバイトでそれどころじゃないよ。ごめんね、家のお父さんが。私が悠木君と付き合ってるとかとんでもない誤解して」
いい加減にして、とお父さんをあしらうと、「とんでもない…?」と呆然とする悠木君の震えた声が耳に入ってきた。
「だって悠木君の隣に並ぶとか恐れ多すぎるよ。有り得ないよね」
悠木君には桐生礼奈がいるんだ。ここで私との誤解がうまれたら大変なことになる。そもそも男女が親しくしているからってすぐに恋愛方面に結びつけるのは単純すぎると思う。そんなんなら世の中少子化になっていないと思うのだ。
「有り得ない…」
私がフォローすると、悠木君は青ざめた顔でうなだれていた。
どうしたんだろう、そんなに私との仲を疑われたのがショックだったのだろうか。さすがに嫌がられるとショックなんだけどな。
「…美玖、やめてあげなさい、男の心は脆いものなんだよ」
「はぁ? お父さんが女子みたいにはしゃぐから悠木君が引いてるんでしょ」
お父さんが急に男はセンシティブなんだと言い始めて、私は呆れ返る。いや、私もここまでショック受けられると凹むんだけど。あれ、私達友達だよね? 私との仲を誤解されることすら嫌なんですかそうですか、って。
「ごめんね、うちの美玖が」
「いえ…」
お父さんは悠木君に何かを謝罪していた。
なんで私が悪いみたいな言い方をするのかなこの父は。
■□■
追いかけてくる雨宮さんを無視してフラフラ帰宅していく悠木君の背中を見送った私は、三者面談が行われる2年のクラスに父を案内する。お父さんはお姉ちゃんの三者面談のときも高校に行ったので、慣れたものだ。
「美玖は普通科だからこっちの方なんだな。日当たり良さそうじゃないか」
「お陰で5時間目は眠いよ」
別に狙ってはないだろうけど、普通科の位置は日当たりがとてもいい。
「えぇと、森宮さん、こんにちはお嬢さんの担任を務めております河合と申します…」
タブレット操作しながら先生が頭を下げてきたので、お父さんも挨拶を返していた。先生は持っていたタブレットをくるりとこちらに見やすいようにして提示すると、何かのグラフを見せてきた。
「こちら、普通科の生徒の平均点、そして美玖さんの全教科の点数の比較となっております…」
納得しやすいようにデータ化して、私の親から説得する作戦に出たらしい。1年以上断り続けているのにまだ私を特進科に移動させようと目論んでいるのか教師陣は…
私が呆れているのにも気づいていないのか、担任は特進科に入るメリットを熱く語る。三者面談の持ち時間て15分くらいだと思うけど、私の進路の話はまだ…? 特進科も進路っちゃ進路だけど、私は大学とかそういう話をするもんだと思っていた。
担任のプレゼンを黙って聞き入れていたお父さんは先生の話が一段落つくとようやく口を開いた。
「先生が娘の将来を考えてくれているのはよくわかりました。ですが私は自由に学ばせたいので、本人が嫌がるなら押し付けたくないのです」
うちは自由な家風で、勉強でガチガチに縛るような教育方針ではない。むしろ子どもに色んな経験をさせたいという考えなので、昔からいろんなことをさせてもらった。その中で夢中になれるものがあればそれに向かって努力せよ、ってのが両親の方針だ。
そんな父なので、私の進路を捻じ曲げるのはしたくないとやんわり拒絶した。
「で、ですが」
「成績が下がるなら私も娘に注意しますけど、今のところはいい成績を維持していますし、先生方もどうか見守っていてほしい」
私との攻防に慣れてきた先生は引かずにまだ言い募ろうとしていたが、お父さんも負けてはいなかった。
「美玖は将来やりたいことの為にバイトをしてるんです。特進科は時間に縛られがちなので、普通科に在籍している方が都合がいいのだそうです。私どもは本人の自主性を尊重したいのです」
きっぱりと私に任せていると言ってくれたお父さん。私はとても心強くなった。
多分私の両親は放任主義のスタンスを貫いても、実際に子どもが窮地に陥った時は手を差し伸べてくれるはずだから安心して私は前へ進める。…未だに耳にペンをさしたままだけど、頼もしい父である。なんで耳にペン差してるの。何をしたら差すシチュエーションになるのか。
担任が頭を抱えてため息を吐いていたけど、知ったこっちゃない。どうせ学年主任か教頭先生にお父さんを味方につけろって言われたんでしょ。
「悠木せんぱぁい、私赤点とっちゃいましたぁ」
階段を降りて下駄箱前の廊下を歩いていると、悠木君が例の1年生に絡まれていた。彼女の本性をドア越しに目撃(聞いただけだけど)したため、今の甘えたような声には違和感しかない。
「俺の周りうろつくんじゃなくて勉強しろよ」
ごもっともなご意見である。悠木君は勉強に真面目に取り組んでるもんね。今回も特進科の中でも上位にランクインしているのを知っている。
「えぇーそんな事言わないでぇせんぱぁい、勉強教えてくださぁい」
雨宮さんは悠木君の腕に抱きついて甘えていた。すごいなぁ、父親でも彼氏でもない男子の腕に抱きつくとか上級スキルじゃないか。自分に自信があるから出来ることだな。
私が観察しているのに気づいたのか、雨宮さんと目が合う。彼女は私を見てニヤリとなにやらあくどい笑みを浮かべていた。まるで少女漫画のライバル役みたいだ……私が真似してニヤリと笑い返すと気分を害したようです睨みつけられてしまった。
どうにも彼女は誤解しているみたいなんだよなぁ。私は別に悠木君の彼女ってわけでもないのに。
「違う! 違うからな!」
私が雨宮さんを見て考え事をしていると、視界の端で悠木君が慌てて雨宮さんの腕を振り払っているのが見えた。何故か彼は私を見て違うと必死に弁解している。何が違うんだろう。彼女と付き合ってないってことをアピールしたいのだろうか。
「あん、夏生せんぱぁい!」
振りほどかれた雨宮さんは甘えた声を漏らしつつ、悠木君の視界外に入ると、ぶすくれた表情を浮かべていた。さっきまで悠木先輩って呼んでたくせに名前呼びに変わった…。積極的にもほどがある。
「これからバイト?」
悠木君は気まずそうに首の後ろをさすりながら私に声をかけてきた。その問いに私は首を横に振る。
「今日から三者面談でしょ。親待ってんの」
三者面談終わったらバイトに行くけども。
今日から三者面談始まったのは特進科もである。だから面談じゃない人は早く帰れるんだ。
「そうなんだ、そっちお袋さんが来るの?」
「うぅん、お母さんは休みが取りにくいから──」
「美玖」
名前を呼ばれたので横を見ると、職場から直行でやってきたらしいお父さんの姿があった。…耳にボールペンが乗っているのには何も突っ込まないぞ。お父さんは私と会話していた悠木君の姿を目に映すと、軽く目を見張り、上から下まで吟味するように観察していた。
「私のお父さん」
悠木君に我が父を紹介する。ごめんね、イケメンに見慣れていないから物珍しいのだと思う。
「あ。えっと、こんにちは…」
悠木君が緊張の面持ちで挨拶すると、お父さんがハッとした顔をしていた。
「えーなにぃこのイケメェン。お父さんたまげちゃったなぁ。君モデルか俳優目指してる?」
「いえ、それはないです」
「スカウトとか受けてるんじゃない? いやぁいい男だねぇ」
悠木君を前にして女子みたいにはしゃぐお父さん。悠木君はたじたじになっている。急に知らないおっさんに絡まれたんだ、そりゃびっくりするよね。
「ちょっと美玖ー、彼氏できたならお父さんに紹介してよー」
「ただの友達。特進科の悠木君だよ」
お父さんがあらぬ誤解をしていたので即座に否定すると、目の前の悠木君の肩がピクリと動いていた。怪訝に思ったので彼を見上げると悠木君はとても悲しそうな顔をしていた。
「えーそこはもっと青春ぽくさぁ、なんかないの? 美玖も莉子も恋愛のレの字もないじゃない。花のJK、JDなのにー」
普通、父親なら「彼氏なんか早い」と怒るものだと思うのだが、うちの父はそうはならないらしい。むしろ娘に恋バナをねだる始末。なんで父親に赤裸々話をしなきゃいけないのか。恥ずかしい通り越して嫌なんですけど。
「勉強とバイトでそれどころじゃないよ。ごめんね、家のお父さんが。私が悠木君と付き合ってるとかとんでもない誤解して」
いい加減にして、とお父さんをあしらうと、「とんでもない…?」と呆然とする悠木君の震えた声が耳に入ってきた。
「だって悠木君の隣に並ぶとか恐れ多すぎるよ。有り得ないよね」
悠木君には桐生礼奈がいるんだ。ここで私との誤解がうまれたら大変なことになる。そもそも男女が親しくしているからってすぐに恋愛方面に結びつけるのは単純すぎると思う。そんなんなら世の中少子化になっていないと思うのだ。
「有り得ない…」
私がフォローすると、悠木君は青ざめた顔でうなだれていた。
どうしたんだろう、そんなに私との仲を疑われたのがショックだったのだろうか。さすがに嫌がられるとショックなんだけどな。
「…美玖、やめてあげなさい、男の心は脆いものなんだよ」
「はぁ? お父さんが女子みたいにはしゃぐから悠木君が引いてるんでしょ」
お父さんが急に男はセンシティブなんだと言い始めて、私は呆れ返る。いや、私もここまでショック受けられると凹むんだけど。あれ、私達友達だよね? 私との仲を誤解されることすら嫌なんですかそうですか、って。
「ごめんね、うちの美玖が」
「いえ…」
お父さんは悠木君に何かを謝罪していた。
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担任のプレゼンを黙って聞き入れていたお父さんは先生の話が一段落つくとようやく口を開いた。
「先生が娘の将来を考えてくれているのはよくわかりました。ですが私は自由に学ばせたいので、本人が嫌がるなら押し付けたくないのです」
うちは自由な家風で、勉強でガチガチに縛るような教育方針ではない。むしろ子どもに色んな経験をさせたいという考えなので、昔からいろんなことをさせてもらった。その中で夢中になれるものがあればそれに向かって努力せよ、ってのが両親の方針だ。
そんな父なので、私の進路を捻じ曲げるのはしたくないとやんわり拒絶した。
「で、ですが」
「成績が下がるなら私も娘に注意しますけど、今のところはいい成績を維持していますし、先生方もどうか見守っていてほしい」
私との攻防に慣れてきた先生は引かずにまだ言い募ろうとしていたが、お父さんも負けてはいなかった。
「美玖は将来やりたいことの為にバイトをしてるんです。特進科は時間に縛られがちなので、普通科に在籍している方が都合がいいのだそうです。私どもは本人の自主性を尊重したいのです」
きっぱりと私に任せていると言ってくれたお父さん。私はとても心強くなった。
多分私の両親は放任主義のスタンスを貫いても、実際に子どもが窮地に陥った時は手を差し伸べてくれるはずだから安心して私は前へ進める。…未だに耳にペンをさしたままだけど、頼もしい父である。なんで耳にペン差してるの。何をしたら差すシチュエーションになるのか。
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