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意識し始めた彼女と積極的に動く彼。
ワッフルにはブリュッセル風とリエージュ風がございます。
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昨日から私が考えていることは、社会科準備室での出来事だ。
悠木君の顔が近づいてきて、最接近した瞬間ふんにゃりとぶつかった唇。……確かにくっついたよな、ほっぺとかじゃなくて唇だよね。
あの柔らかい感触を思い出すとブワッと顔が熱くなる。悠木君は何も言わなかったけど、気のせいじゃない。私は彼にキスされた。しかも横抱きされたまま膝の上でとか……
どんな顔して会えばいいんだろ…うろたえる自信しかない。
「美玖ー! 来たよー!!」
私が頭を抱えている間に文化祭2日目がスタートしていたらしい。教室で開店前の最終チェックをしていた私は出入り口から飛び込んできたその声にパッと顔を上げた。
「お姉ちゃん」
今年も文化祭に遊びに来た我が姉は、にぱーと笑顔を浮かべてこちらに手を振ってきた。周りからジロジロと視線が集まってきて、なんだか授業参観的な気分にさせられるのはなぜだろう。
「時間はあっという間だよ、早く行こう行こう!」
文化祭2日目は友人たちがシフト入りもしくは先約があるため、単独行動で自由時間を過ごすんだと話したところ、姉が「それなら遊びに行くから、自由時間一緒に回ろう」と言ったのだ。
そんなわけで本日遅番な私はお姉ちゃんと自由時間を過ごすため、文化祭で賑わう校内を練り歩くことにしたのである。
「悠木君のクラスって何してるのかな?」
「……わ、ワッフル屋」
お姉ちゃんの問いかけに私の返事は少しばかり遅れた。昨日の今日である。気まずいというか気恥ずかしいというか。彼の名を出されただけで動揺してしまうってもんである。
「悠木君ってA組だったよね?」
「ちょっとお姉ちゃん」
勝手知ったる母校と言わんばかりにお姉ちゃんはぐいぐいと先導していく。まさかワッフル屋に直行するのか…!?
姉の足は甘い香りが充満する特進科エリアに向かい、ためらいなくA組の教室に踏み込んだ。私はまだ心の準備ができていないってのにこの姉は…!
お姉ちゃんに腕を引っ張られていたため、私は強制的にワッフル屋に入店してしまった。悠木君とどういう顔をして会えばいいのかわからなかったので、視線をさまよわせていたのだが……私の視界にとある光景が映ると、今までの緊張はフッと消えて逆に冷静になった。
「私と夏生先輩ならベストカップルになれますよぉ」
エプロン姿の悠木君は──雨宮さんを腕にくっつけていたのだ。
周りから視線が集まってるっていうのに、彼らは教室で一体何をしているんだろうか…
「ならねぇし、用が済んだらさっさと帰れよ」
「なんでそんな冷たいこと言うんですかぁ? あ、じゃあ後夜祭では私とコンテストに出てくださいね!」
いやいや、悠木君に限ってそんなまさかと思いつつ、彼らの話を聞いてみると、後夜祭とかコンテストとかそんな話をしていた。ミスコンか何かが開催されるからそっちの話かな……と考えつつも、くっついている2人を見ていてとても不快になった。
「やぁやぁ悠木君!」
そこに声をかけたのは我が姉である。
恐らく、わざと声をかけたのである。
「! あ…森宮の…」
「久しぶりだね!」
悠木君はお姉ちゃんの存在に気がつくとハッとした顔をしていた。私とお姉ちゃんは姉妹とだけあって顔立ちが似ているので、一瞬見間違えたのかもしれないけど。
お姉ちゃんは悠木君の前に立つと、にっこり笑顔で彼を見上げた。
「うちの美玖とはどうなんだね? ん? まさか浮気とかそういうんじゃなかろうね? 事と次第によっては莉子さんは許さんぞ?」
「ちょ、お姉ちゃん!?」
悠木君の浮気を疑ってお姉ちゃんが尋問しているが、私達はまだ付き合っているわけじゃない。流石に浮気とは言えないだろう。
それに人目のある場所でそれはちょっとやめてほしい。
「違います。こいつは赤の他人です。拒絶しても付き纏ってくるんです」
「ひどっ! なんでそんな事言うんですかぁ!?」
悠木君は雨宮さんを引き剥がして否定していた。
それに目を光らせたのはお姉ちゃんだ。その瞳はまだ疑惑の色を残しており、悠木君が嘘偽りを言っていないかを探ろうとしているのが見て取れた。
「ほほう? ほんとにぃ?」
「本当です。俺は迷惑してるだけです」
「ちょっと! 夏生先輩!」
雨宮さんを教室の外に追い出しながら悠木君は弁解していた。廊下に押し出された雨宮さんがギャンギャン文句を吐き出していたが、扉を締めてシャットアウトすることで彼女は諦めてどこかに消えた。
「さや香ちゃんに聞いていたけど、君は本当に強引なタイプの女に付き纏われやすいんだねぇ」
悠木君の体質をさや香さんから聞いていたというお姉ちゃんがヤレヤレと言わんばかりに首を横に振っていた。
「好きでこうなってるわけじゃありませんからね」
悠木君はもうすでに疲労困憊状態のようだ。まだ文化祭は始まったばかりなのに、こんな状態で夜まで保つのだろうか。
「いらっしゃいませ、お姉さん、森宮さん!」
「お席用意しましたぁ」
「ご注文どうぞ!」
変な空気になった私達の間に割って入ってきて空気を変えたのは、特進科3人娘だった。お姉ちゃんの作った対策ノートのおかげでスランプ脱出できた彼女たちはお姉ちゃんを慕っており、姉の来店を大歓迎していた。
このワッフル屋にはイートインスペースはなく、完全持ち帰り形式のはずなのに、3人娘はどこからか椅子と机を引っ張り出し、それとなく布をかけておもてなし席を用意する始末だ。
いいのか、特別待遇なんかしても。
すすめられるがまま席について、ぐるりと教室内を見渡せば、そこそこお客さんが入っている。昨日は教室内に入らなかったし、途中でお化け屋敷に拉致されたので結局ワッフル食べられなかったんだよなぁ。
「森宮、ほら」
悠木君が紙袋に入ったワッフルを手渡してきた。昨日私が食べたいと言ったチョコ味。ワッフルの表面にチョコがかけられている。
ありがとうとお礼を言って受け取る際に指がぶつかり、私はギクッとした。昨日キスされたことを思い出して急に恥ずかしくなったのだ。
顔が……熱い。
「…? どうした?」
「いただきます!」
怪訝な顔をした悠木君に動揺を知られたくなくて、ワッフルを思いっきり頬張った。
外がさっくり、バターが香ばしい。学生が作ったにしては上手である。上に掛けられたチョコレートはビターチョコだろうか。悪くない組み合わせだ。
「あ…口の端にチョコついてる」
「え、ほんと?」
指摘されたので、備え付けの紙ナプキンで口元をゴシゴシ拭う。
「そっちじゃない、こっち」
悠木君の手が伸びてきて指先で口端を拭われた。ナチュラルに世話を焼かれて恥ずかしいやらむず痒いやらで私はプルプル震える。
私達のやり取りに、3人娘とお話していたお姉ちゃんが反応して「さや香ちゃんに報告しなきゃ」とスマホを取り出していた。
やめろ、何を報告するつもりだ…!
「そこーイチャイチャしないで仕事してくださーい」
にやにやと笑ってからかって来たのは通常運転の眼鏡である。生徒会の腕章をつけた彼はクラスの仕事は免除されているはずなのだが……文化祭の見回りか?
ていうか別にイチャイチャしてないし……
そこの姉、「アオハルかよ…ふふふ」って笑ってるの聞こえてるからな? 3人娘たちまで微笑ましそうに見てくるし、みんなしてからかうんじゃないよ。
「大輔、生徒会のほうはいいのか? 礼奈は…」
悠木君が少し遠慮気味に問いかけると眼鏡は自嘲した。
いつもヘラヘラしてる眼鏡がやさぐれたような笑い方をするもんだから私は少し驚いてしまった。
「あっちが無視するからいいの」
あっちというのは、桐生さんサイドってことだろう。
そういえば眼鏡と桐生さんは文化祭前によくわからない小競り合いをしていたんだったな。なんか私が喧嘩の原因みたいになってるけど、私は何もしていないぞ。
「それにこれから里梨花ちゃんとデートだから!」
「……そうか」
ヘッと腐るように笑っていたくせに急にガラリと元の眼鏡に戻った。
はいはい、彼女出来たてですもんね。浮かれてるんですよね。
そんな眼鏡を見ていた悠木君が微妙な表情をしているのが気になったが……彼らの仲には私は入れないし、彼らの関係性に口出す資格もないので、黙って残りのワッフルを頬張るのであった。
悠木君の顔が近づいてきて、最接近した瞬間ふんにゃりとぶつかった唇。……確かにくっついたよな、ほっぺとかじゃなくて唇だよね。
あの柔らかい感触を思い出すとブワッと顔が熱くなる。悠木君は何も言わなかったけど、気のせいじゃない。私は彼にキスされた。しかも横抱きされたまま膝の上でとか……
どんな顔して会えばいいんだろ…うろたえる自信しかない。
「美玖ー! 来たよー!!」
私が頭を抱えている間に文化祭2日目がスタートしていたらしい。教室で開店前の最終チェックをしていた私は出入り口から飛び込んできたその声にパッと顔を上げた。
「お姉ちゃん」
今年も文化祭に遊びに来た我が姉は、にぱーと笑顔を浮かべてこちらに手を振ってきた。周りからジロジロと視線が集まってきて、なんだか授業参観的な気分にさせられるのはなぜだろう。
「時間はあっという間だよ、早く行こう行こう!」
文化祭2日目は友人たちがシフト入りもしくは先約があるため、単独行動で自由時間を過ごすんだと話したところ、姉が「それなら遊びに行くから、自由時間一緒に回ろう」と言ったのだ。
そんなわけで本日遅番な私はお姉ちゃんと自由時間を過ごすため、文化祭で賑わう校内を練り歩くことにしたのである。
「悠木君のクラスって何してるのかな?」
「……わ、ワッフル屋」
お姉ちゃんの問いかけに私の返事は少しばかり遅れた。昨日の今日である。気まずいというか気恥ずかしいというか。彼の名を出されただけで動揺してしまうってもんである。
「悠木君ってA組だったよね?」
「ちょっとお姉ちゃん」
勝手知ったる母校と言わんばかりにお姉ちゃんはぐいぐいと先導していく。まさかワッフル屋に直行するのか…!?
姉の足は甘い香りが充満する特進科エリアに向かい、ためらいなくA組の教室に踏み込んだ。私はまだ心の準備ができていないってのにこの姉は…!
お姉ちゃんに腕を引っ張られていたため、私は強制的にワッフル屋に入店してしまった。悠木君とどういう顔をして会えばいいのかわからなかったので、視線をさまよわせていたのだが……私の視界にとある光景が映ると、今までの緊張はフッと消えて逆に冷静になった。
「私と夏生先輩ならベストカップルになれますよぉ」
エプロン姿の悠木君は──雨宮さんを腕にくっつけていたのだ。
周りから視線が集まってるっていうのに、彼らは教室で一体何をしているんだろうか…
「ならねぇし、用が済んだらさっさと帰れよ」
「なんでそんな冷たいこと言うんですかぁ? あ、じゃあ後夜祭では私とコンテストに出てくださいね!」
いやいや、悠木君に限ってそんなまさかと思いつつ、彼らの話を聞いてみると、後夜祭とかコンテストとかそんな話をしていた。ミスコンか何かが開催されるからそっちの話かな……と考えつつも、くっついている2人を見ていてとても不快になった。
「やぁやぁ悠木君!」
そこに声をかけたのは我が姉である。
恐らく、わざと声をかけたのである。
「! あ…森宮の…」
「久しぶりだね!」
悠木君はお姉ちゃんの存在に気がつくとハッとした顔をしていた。私とお姉ちゃんは姉妹とだけあって顔立ちが似ているので、一瞬見間違えたのかもしれないけど。
お姉ちゃんは悠木君の前に立つと、にっこり笑顔で彼を見上げた。
「うちの美玖とはどうなんだね? ん? まさか浮気とかそういうんじゃなかろうね? 事と次第によっては莉子さんは許さんぞ?」
「ちょ、お姉ちゃん!?」
悠木君の浮気を疑ってお姉ちゃんが尋問しているが、私達はまだ付き合っているわけじゃない。流石に浮気とは言えないだろう。
それに人目のある場所でそれはちょっとやめてほしい。
「違います。こいつは赤の他人です。拒絶しても付き纏ってくるんです」
「ひどっ! なんでそんな事言うんですかぁ!?」
悠木君は雨宮さんを引き剥がして否定していた。
それに目を光らせたのはお姉ちゃんだ。その瞳はまだ疑惑の色を残しており、悠木君が嘘偽りを言っていないかを探ろうとしているのが見て取れた。
「ほほう? ほんとにぃ?」
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「ちょっと! 夏生先輩!」
雨宮さんを教室の外に追い出しながら悠木君は弁解していた。廊下に押し出された雨宮さんがギャンギャン文句を吐き出していたが、扉を締めてシャットアウトすることで彼女は諦めてどこかに消えた。
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悠木君の体質をさや香さんから聞いていたというお姉ちゃんがヤレヤレと言わんばかりに首を横に振っていた。
「好きでこうなってるわけじゃありませんからね」
悠木君はもうすでに疲労困憊状態のようだ。まだ文化祭は始まったばかりなのに、こんな状態で夜まで保つのだろうか。
「いらっしゃいませ、お姉さん、森宮さん!」
「お席用意しましたぁ」
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変な空気になった私達の間に割って入ってきて空気を変えたのは、特進科3人娘だった。お姉ちゃんの作った対策ノートのおかげでスランプ脱出できた彼女たちはお姉ちゃんを慕っており、姉の来店を大歓迎していた。
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「…? どうした?」
「いただきます!」
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悠木君が少し遠慮気味に問いかけると眼鏡は自嘲した。
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あっちというのは、桐生さんサイドってことだろう。
そういえば眼鏡と桐生さんは文化祭前によくわからない小競り合いをしていたんだったな。なんか私が喧嘩の原因みたいになってるけど、私は何もしていないぞ。
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「……そうか」
ヘッと腐るように笑っていたくせに急にガラリと元の眼鏡に戻った。
はいはい、彼女出来たてですもんね。浮かれてるんですよね。
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